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VALORANT Champions Tour 2025を振り返る、キャスター・岸大河さんとyukishiroさんのロングインタビュー後編をお届けします。
Pacificリーグ全体の躍進や若手の台頭について語った前編に続き、トピックは我々が愛する「日本チームの現在地と未来」について。世界への壁に阻まれたZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeに足りなかったものは何なのか。そして、刷新された新ロスターに何を思うのか。白熱した「勝敗予想」の裏話や、2026年のメタゲーム予測まで、来シーズンが待ちきれなくなる濃密なトークの後半戦です。
▼前編はこちらから▼

――今年の最初、ZETA DIVISIONとDFM(DetonatioN FocusMe)にどんな印象を抱いていました?
岸大河:ZETAについては、シーズン中に成長の天井、いわゆる「頭打ち」が見えてくるメンバー構成かなという印象を持っていました。ベテランの域に入り、個人個人のスキルの伸びしろが緩やかになってくる時期です。個の爆発的な成長というよりは、チームとしてまとまった時の完成度や、「安定感」に期待できるチームだと思っていました。
反対にDFMは「未知数」な要素が多かったですね。gyen選手が加入し、そこで起きる化学反応が良い方向に進めば、間違いなく大きな爆発力になる。しかし、新たな選手を起用するにはリスクも伴いますから、噛み合わなければ低迷する恐れもありました。
「安定感のZETA DIVISION」と「爆発力のDetonatioN FocusMe」。それぞれの強みが鍛え上げられれば、どちらも世界へのチャンスは十分に出てくる、そう考えていました。
yukishiro:昨年のメンバーがお披露目されたRed Bull Home Groundの時期を振り返ると、両チームの違いが鮮明でした。
ZETAは、FENNELで活躍していたCLZ、Xdll、SyouTaの3選手を迎え入れた形。一方、DFMはAkame、Jinboong、そしてgyenとArt選手を獲得しました。より大きな刷新を行ったのはDFMの方でしたね。Red Bull Home Groundでの直接対決こそZETAがギリギリで勝利しましたが、個人的には、あの段階からすでにDFMのポテンシャルにはかなり期待していました。
理由としては、2024年のDFMを振り返った際に感じた課題が大きかったからです。当時のDFMは、IGLの傾向もあってマクロを丁寧に組み立て、時間をたっぷり使って攻めるのですが、最後の最後で「決めきれない」場面が非常に多かった。
そこで、勝てなかった現状を打破するために、かなり「フィジカル(撃ち合い)」を重視したメンバーチェンジを行いました。日本のChallengersを見ていたファンからすれば、あれだけ暴れ回っていたJinboong選手や、オフラインでの爆発力が凄まじいAkame選手が入って「弱いわけがない」と思ったはずです。私自身も撃ち合いの強さにはかなり期待していましたし、その狙いが上手くハマって、オフシーズンの「Radiant Asia Invitational」準優勝に繋がったのだと思います。
――ZETAはいかがですか。
yukishiro:ZETAに関してももちろん期待はしていました。これまでのZETAは、大会で流れが悪くなると足が止まってしまう場面が見受けられましたが、オフシーズン中の彼らはかなりイキイキとしていました。実際に選手と話してもチームの雰囲気はとても良かったです。 ベテランのLaz選手が抜けた後、Dep選手が「兄貴分」として若い選手をまとめ上げつつ、一緒に盛り上がっていく。そんな調和の取れた空気感があったと思います。
ただ、正直なところ不安だったのがメンタル面なんですよね。SyouTa選手は大会だと緊張しがちだったり、CLZ選手も負けが込んだ時にメンタルが揺らぎやすい傾向がありました。そうした精神的な部分での立て直しができるかどうかが、少し懸念点でしたね。

――日本チームが世界のトップに至るにはどんな要素が足りなかったと思いますか。
yukishiro:あえて掘り下げるなら、今年のZETAはコーチ体制に不安がありました。XQQが復帰したこと自体は良かったのですが、本人が強く望んでヘッドコーチになったわけではなかったように見えます。「誰がチームをまとめ上げ、どう責任を取って進めていくのか」という部分が、少し「ふんわり」していた。そこがZETAの問題点だったのではないでしょうか。
一方でDFMは、「テホメタ」で一切振るわなくなってしまった。あれだけ(オフシーズンで)勝っていたのに、まるでジェットコースターのように成績が急降下し、結果としてArt選手が抜けることになりました。判断の早さは評価できますが、反面、メンバーを維持して立て直せなかったのは反省点でしょう。
もちろんメタを完全に先読みするのは困難ですが、1年間を通してブレずにプレイできる体制さえ整えば、日本勢はもっとやれるはずです。本来はみんな、それを望んでいるはずですから。
岸大河:昔から言われていることではありますが、今年は特に「トライする精神」の重要性を痛感させられる一年でした。
今年は多くのチームがリスクを恐れず、戦い方に変化をつけてきました。例えば、リスクをかけて特定のエリアを潰しに行ったり、厳しい状況でもスキルを使って当たりに行ったり。そうした「即時の判断」を優先したチームが良い結果を残し、ファストリテイクのような思い切った戦術がメタとして定着していきました。
TenTen選手が加入したZETAも、そうした行動が取れるようになりました。もしかすると、加入直後で連携が未完成だったからこそ、個々の判断で動く「思い切った行動」に見えた側面もあるかもしれません。ですが、アグレッシブに動いてラウンドをもぎ取る経験が、結果としてZETAのスピード感を加速させるキッカケになったと思います。 DFMに関しても、勝てた試合やエコラウンドでの逆転劇は、自分たちから積極的に当たりに行った結果であり、それが自信に繋がっていたはずです。
失敗しても自分たちの作戦を押し通す。通らなければ仕方ない、通れば儲けもの。それを糧に次へ進むのが「試合」だと思います。その意味で、今年は「トライする力」が凄く養われた一年でした。
だからこそ来年は、単なる「トライ」で終わらせず、精度や確度を高めて「ラウンドを取り切る」意志でやっていく必要があります。世界に対抗するためには、自信に満ちた行動でぶつかり合うしかない。やはり、「トライ精神」こそが最も大事だと思います。
――発表された新しいZETA DIVISIONの印象はどうですか
yukishiro:今のメンバーは面白いと思っています。1年間パフォーマンスで悩みながらも、しっかりと自信をつけてきたXdllがいて、SyouTaが復帰し、さらにeKoとAbsolもいます。eKoは国内での活躍も周知の事実ですし、Absolはこの大きなチャンスでどれだけ成長するか非常に楽しみです。
何より、miniがコーチングアドバイザーに就任したのはめちゃくちゃ良いですよ。XQQもかなり気合を入れて臨んでくると思うんですね。今年のXQQからは、より明確なビジョンを持ってトライしようという姿勢が見られると思います。チームは間違いなく良い方向に向かっています。
岸大河:厳しめの意見になりますが、グローバル全体を見るキャスターとしては「厳しいかな」と思います。もちろん一個人としては「いける、頑張ってほしい」という想いもあります。ただ、世界を見てきた分、どうしても「大丈夫かな」と不安はあります。試行錯誤を重ねてきたZETAの決断は尊重しています。オフシーズンに誰を残し、誰を送り出すか、チーム内でも多くの議論と苦悩があったはずです。
それでも、我々が見てきた世界の頂点には、aspas、t3xture、BuZz、something、f0rsakeNといった怪物がいます。NRGにはEthanやmada、皆さんだいすきBenjyfishyやAlfajerがいる。彼らと対等に渡り合えるのかと問われた時、今の段階で「100%いける」とは言い切れない自分がいる。そこが一番の不安要素です。 だからこそ、Kickoffではその不安を払拭し、「いけるじゃん!」と思わせてくれるような大会にしてほしいと願っています。
――あえてそんなZETAに注目するとしたら、誰がカギになると思いますか?
岸大河:やはりAbsol選手という存在が面白いですよね。彼にとっては初めての挑戦なので心配な面もありますが、彼は『VALORANT』に全ての時間、生命を注ぎ込んでいると言えるほど集中している選手です。
私が一番危惧していたのは、ティア1の壁にぶつかった時、「これは無理かも」と彼の心がポキっと折れてしまうことでした。でも、そこを支えるためにminiコーチが入ったり、ベテランのコーチ陣がいる。努力が行き詰まった時に、広い視野を持ったコーチがサポートに入れる体制ができたのは、彼にとって非常に大きなプラスです。 苦しい道のりになるかもしれませんが、モチベーションの高いメンバーが揃っているので、本当にやり切ってほしいという気持ちでいっぱいです。

――では、ZETA成功のカギはAbsolですか。
岸大河:うーん……。
yukishiro:意外とSugarZ3roかSyouTaじゃない?
岸大河:SugarZ3ro選手に関しては、本当に「安心感」の一言で、あれほどのリーダーシップを発揮してくれているなら、あえて彼に期待を語る必要もない。もう、言うことは何もありません。
だからこそ、SyouTaかな。彼が消極的になった瞬間、ZETAは崩壊する……それくらいの影響力があると思っています。もちろんSugarZ3ro選手のコントロールにもよりますが、チームのスタイルが「戦い」に出るのか「引き」に回るのか、その判断次第で強みにも弱みにもなり得る。そこでSyouTa選手には踏ん張ってほしいですね。
彼は本当に素晴らしい選手ですから、SyouTaという才能を上手く使いこなせた時、ZETAは“ものすごい武器”を手に入れることになる。ぜひその武器を完全に自分たちのものにしてほしいと願っています。
yukishiro:正直なところ、SyouTa選手は今年のZETA DIVISIONが求めていた戦い方に、あまりマッチしていなかったのかもしれません。結果として、彼の持ち味であるアグレッシブなプレイがあまり出せなかった。
センチネルやコントローラーが前に出る動きはリスクに見えるかもしれませんが、実際にそれで結果を残している選手も世界にはいます。何より、SyouTa選手が日本に戻ってきてから見せた、スプリットでの素晴らしいACE。あれは本当に「とんでもないキル」でした。ああいうプレイこそが、SyouTaの強みの部分だと思うんですよ。
yukishiro:だからこそ、彼がどれだけ強みを発揮できるかが鍵になります。今のZETAのコーチ体制には期待していますし、今ならSyouTa選手を活かせるはずです。あとは岸くんも言う通り、SyouTa選手自身がどれだけ自信を持ってプレイできるか。世界のレベルも年々上がっていますから、それだけでは足りない。そこをリーダーシップのあるSugarZ3ro選手が上手くカバーしていく、そんな形になることを期待しています。
――DFMについてはいかがでしょうか。
yukishiro:どうだろう。メンバー発表がないと何とも言えないんですよね。なんとなく予想はつきますけど……。
岸大河:個人的に、今のDFMに最も必要なのは「IGL」だと思っています。 IGLを軸にどう戦うか、そしてコーチがどう導くか。選手個人の能力というよりは、戦術の土台となるIGLの存在、そして選手たちをどう「料理」して活かすかというコーチの手腕。ここがDFMの抱える最大の課題ではないでしょうか。
今年はArt選手からSSeeS選手へ引き継がれましたが、SSeeS選手も元々IGLに慣れていたわけではありませんでした。だからこそ、その役割を担える「ビッグブレイン」を持った本職のIGLが入ってきてくれると、チームは劇的に変わると思いますね。
yukishiro:チームのフィジカルだけで言えば本当に、むしろ安心できるメンバーが元々揃ってると思いますから、僕も概ね同じですね。メンバー発表がまだなのでなんともいえないですけど、岸の言う通り時間がないなか急造したような感覚はあったので、来年のDFMはそこが安定してほしいとは思いますね。
――来年はChallengersからChampionsに挑戦できる可能性があるフォーマットになっています。どんなことが起きると予想していますか?
岸大河:うーん。やっぱりChallengersのチームは難しいんじゃないですかね。Championsまで上がれるチームがいたらもう驚きですね。もし出場したなら全力で応援しますね。
yukishiro:G2ぐらい活躍できれば……。結局、狭き門なのかなとは思います。
視聴体験としては、構造がシンプルで見やすくなっているんじゃないですかね。感覚としては、地域で優勝すれば国際大会への道が開けていた、2021年や2022年頃のVCTに近いですよね。
来年は完全に直通というわけではありませんが、Challengers Japanを勝ち抜けば、Ascensionという長い階段をスキップするような形で、Pacificの舞台でティア1チームと戦うことができる。ファンから見ても、世界へ繋がる道筋やチャンスが可視化されやすくなったと思います。
とはいえ、そこからChampionsへの切符を掴む条件は依然として厳しいままです。ただ、岸も言う通り、その高い壁をもし乗り越えることができたなら、それは本当に偉業だと思いますね。
岸大河:例えるなら、サッカーの天皇杯です。社会人チームや大学チーム、J2、J3から勝ち上がってきたチームが、J1の強豪と真剣勝負ができる。そんな下克上のチャンスがある構図に似ています。逆に、迎え撃つティア1チームにはプライドがありますから、「格下には絶対に負けられない」という凄まじいプレッシャーもかかる。その緊張感も含めて、見応えのあるものになるはずです。
yukishiro:そうだね。
岸大河:リーグチーム側にはトップリーグで戦っているというプライドがあります。それに加えて、「これだけ経験を積んできたのに、こんなところで負けてたまるか」という、ある種の”コンチクショウ精神”で必死に来るはずです。そういった意地の張り合い、プライドバトルが見られるのは楽しみですね。
「ティア1がいかに強いか」という格の違いを見せつけるのか、それとも「ティア2がティア1を食っちゃったよ、超面白いな」という展開になるのか。どちらに転んでもドラマがある、そんな熱い雰囲気で観戦できるのは面白いですね。

――2026年、頑張ってほしい、注目したいなっていうチームはありますか?
yukishiro:メンバー構成で見れば、一番期待しているのは間違いなくVitalityですね。
やはり移籍加入したChronicle選手の存在がめちゃくちゃ大きいと思います。 古巣のFNATICは「マクロのチーム」と言われていましたが、実際は個人のフィジカルで強引にラウンドをもぎ取るシーンも多かった。他チームには再現できないような勝ち方ができるチームでしたよね。 中でもChronicle選手は、イニシエーターという本来あまりエゴ(自我)を出さないポジションでありながら、あえてエゴを出してチームを何度も救ってきたプレイヤーです。
誰に聞いても「世界トップ」と答える彼が、まさかVitalityに移籍し、そこでDerke選手と合流するとは。一時期FNATICにも在籍していたSayonara選手がついにティア1で見られるという点でも、期待しかありません。 今度こそ、「良い意味でのオールスターチーム」が完成したと思っています。メンバー構成で見れば、一番期待しているのは間違いなくVitalityですね。
あと、これだけは言わせてください。Global Esportsには、やっぱり期待しています(笑)
――やはりyukishiroさんといえばGEですね。
yukishiro:不思議なチームなんですよね、Global Esportsって。とにかくフットワークが軽い。チームを離れた有力選手がいれば、即座に獲得に動くじゃないですか。 例えばPRXをまさかの形で脱退したPatMen選手を、すかさず獲得したのには驚きました。さらに、今年活躍したxavi8k選手を迎え入れ、FPXからはAutumn選手も獲得しています。
だからちょっと、予想がしにくいんです。ファン目線で見れば、「よし、今年のGEは間違いなく優勝できる!」とまでは思っていないかもしれませんが(笑)それでも、このメンバーを見れば「やっぱり期待しています」と言いたいですね。
――岸さんはいかがですか?
岸大河:Americasから話すと、僕はLeviatánが気になります。今回は若い選手が新たに入ってきますからね。昨シーズンの終盤に加入したSato選手を含め、アカデミー上がりのNeon選手も入ってきます。こういった若手のフレッシュな才能が加わるのは、個人的にすごく楽しみなポイントですね。
yukishiro:Onurもいるしね。
岸大河:一方でKRÜ Esportsは、長らく中心となっていたKeznit選手が抜け、そこにSaadhak選手が入ったことでどう変わるのか。 あとはNRGですね。オフシーズンにTeam LiquidからKeiko選手が加入したので、そこもめちゃくちゃ楽しみです。
EMEAだとVitalityは面白いチームですが、Karmine Corpも興味深いですね。dos9選手が入って、さらにavez、Sheydos、Suygetsuがいる。「Sheydosがここに来るんだ」という驚きもありましたし、かなりユニークな構成です。全体としてはトルコ勢の勢いが少し落ち着いて、まだ苦しむ時期が続きそうな印象ですね。まあEMEAに関しては、結局FNATICなどが安定して勝ち上がってくるんじゃないかとは思ってます。
Pacificの注目は、まずGen.G Esportsです。Munchkin選手が抜けた穴は大丈夫なのか、という懸念はありますが、そこにLakia選手が入っている。彼らが新体制でどういう「味」を出してくるのか、すごく楽しみです。
あとはFULL SENSE。Crwsがコーチに転身し、Leviathan選手がロスターに入りました。Crwsがコーチになったことで選手との距離感が近くなり、より一体感のある面白いチームになる予感がします。そして日本のVARRELですね。実際にメンバーと話したんですが、やる気に満ち溢れていて、自信を感じました。特にXuNa選手は、個人的にかなり「エグい」プレイヤーだと思って注目しています。
yukishiro: みんな言ってるね。
岸大河:XuNa、すごい楽しみですね。CNはまだロスターがあまり出てなくて、なんとも言えませんが、引き続き僕はXLGは見てるんで、RargaとかHappyweiが頑張ってほしいなと、思ってます。


――今年はキャスターの勝敗予想も盛り上がりました。Stage 1からChampionsまでのデータを集計すると岸さんが的中率1位でした。
岸大河:予想屋やろうかな。
――逆にyukishiroさんは的中率が一番低くて……。
yukishiro:僕はね日本に全力で投資してるので。どんなことがあってもZETAとDFMガンガン入れまくってたから。今年はちょっとね、日本チームが奮わなくて。
岸大河:Global Esportsもいるからね。
yukishiro:あの予想はみんなエンタメですからね(笑)スタジオ行って、みんなの予想を見てから、「あ、ここ割れてるんだな」「あ、ここ偏ってるな」「じゃあちょっとこうバランスでこっちに入れておこうかな」みたいなのもやったりするからね(笑)
岸大河:僕は平均的に当たったかなとは思うんですけど、Championsになるともうわかんないですね。
yukishiro:きついよね、Championsね。
岸大河:もう正直自分のPick’emと違う、流れとか勢いで決めたりしたから。
yukishiro:そうだね、前の試合見て予想を変えたりするから。
岸大河:あと雰囲気でこっちかなって、なんか降りてくるものもあるので(笑)
yukishiro:割とみんな楽しんでやってますね。あと面白さを意識したりね。
岸大河:コンテンツ的に面白く、”エンターテイメント”っていう面も大きいですから(笑)
yukishiro:僕はもう、来年もGlobal Esports入れ続けますよ。当たるまで引かないですから。
岸大河:Riotがもう予想のAI作ってほしいですね。我々とAIで勝負させてほしい。
yukishiro:確かにAI欲しかったな。
岸大河:だって、Riotはキャスターに予想させて何にもリスク負ってないじゃないですか、彼ら(笑)
yukishiro:じゃあ、来年は勝敗予想に“泉 航平”追加しようよ(笑)、Riotの代表で(※泉航平氏はVALORANT Esports JAPANプロデューサー。来年よりAPAC地域のコミュニティリードを務める)。
岸大河:予想の最初とかで0-2とかになるじゃないですか。本当に「ヤバい」ってなりますよ。エンターテインメントとはいえ、0-4とか1-3ぐらいからスタートしたときがあって、「やばいこれ俺このままマイナス背負うのかな」みたいな借金した感じにはなりましたね。
――他の方の成績をみていかがですか?
岸大河:たぶんyueはガチで予想してるんじゃないかな。あと谷藤さんも真面目にやってて、TORANECOさんも比較的真面目。
yukishiro:OooDaさんも真面目だね。
岸大河:そうだね。
yukishiro:なんか俺が真面目じゃないみたいな感じになってきたな(笑)でも、国際大会は本当にマジの予想だから。逆張りっていわれるけど(笑)
岸大河:僕は日本にはちょくちょく入れてましたけど、yueとRetloffよりは入れてなかったかも。ふり~ださんも的中率高いな、一緒か。
yukishiro:さすがに俺と並ぶ奴はいないか(笑)
岸大河:でも国際大会のTORANECOくん的中率高いっすね。
yukishiro:やっぱりプロ経験ならではの目線ってのがあるんじゃない。
岸大河:あるかも。
yukishiro:プロ経験……あっRetloff……。
岸大河:Retloffあれっ(笑)Retloff、総合52%はアナリスト……。
yukishiro:なんか面白いね。Championsとか国際大会になると、Retloffって結構、「まあさすがにここは」っていう予想するじゃん。本人も「いやさすがにこれはこのチームでしょ」みたいに言ってて。結構それが外れちゃうのが国際大会の面白いとこでもあるよね。

――誰よりは良い成績がいいみたいなのってありますか
岸大河:僕はRiotのパワーランキングが意味ないっていうのを証明したいですね(笑)統計的には面白いですけど。でも、僕のPick’emや予想の方が格付けとしては正しいよってのを来年証明したいです。
yukishiro:僕はそうだな……でもGame ChangersのPick’emはキャスターの中では1位だと思うので、Pick’emはちゃんと頑張りたいと思います。勝敗予想に関しては河野海樹よりは上に行きたいですね。あいつ最近いろんなゲームやりすぎて調子乗ってるから。今一度「お前はVALORANTだぞ」って言って教えこんでやりたいっすね。河野もPacificに関してはRRQに全部賭けると思うんで、RRQ vs Global Esportsの試合は注目カードですね。本当に。
――来年のメタ、プレイヤー、チームにどのような変化が起きそうとか、こういう風になりそうみたいな予想はありますか。
yukishiro:今のメタをベースに話すなら、来年はもっと「撃ち合い」を見て楽しめる年になると思います。 競技シーンにおける撃ち合いの技術は成熟し続けていますし、加えて今は、全体的にアビリティの強さがマイルドになっているタイミングなんですよね。
猛威を振るっていたヨルが弱体化を受けたり、イニシエーターの索敵スキルのクールタイムが長くなったりしています。そのため、プレイヤーはより丁寧にアビリティを使わなければなりません。結果として、スキルを使わない「ドライ」での勝負が以前よりも増えるはずです。 アビリティ一発の重要性が上がる分、無駄撃ちが減り、その隙間にある純粋な「撃ち合い」により注目できる年になるのではないでしょうか。
岸大河:僕が昨年から言っていた予想が、そろそろ現実になる予感がしています。「1マップにつき2種類の構成を用意する」という時代が来るのではないかと。 それが見え隠れしているのが、「アビス」です。攻めスタートだからなのか、トリプルデュエリストを採用するなど、攻守や相手に合わせた柔軟なピックが登場しています。
岸大河:ヴィトーも登場し、明確に何かのカウンターとして採用するケースが出てくるとも思います。そうなると、ヴィトーが出てくるなら、フラッシュ役としてブリーチを採用しようとなる。ヴィトーのアビリティに破壊されないものを選んだり、あるいはフォールトラインでエリアごと潰しにいったり。そういうメタの変化が、今後生まれてくる予感があります。
「相手がこう来るからダブルコントローラーにしよう」「相手がダブルデュエリストだからイニシエーターを2枚にしよう」。そういった柔軟な変化を取り入れる余裕のあるチームが、今後は出てくるかもしれません。あるいは、一度試して良かった戦術を継続し、次はまた別の手を試す。そんなトライ&エラーが試合ごとにどんどん起こり得ると思います。

――シーズン幕開けが楽しみですね。では最後に来年に向けて、VCTファンに向けメッセージをお願いします。
yukishiro:毎年この時期は、ファンのみなさんにとって実は一番楽しいタイミングかもしれません。「来年はどんなメンバーになるんだろう?」と、各チームのロスター変更発表を心待ちにして、ワクワクする時期ですから。
そして、その興奮が冷めやらぬうちに、いざ本番のVCTが始まります。最近のファンの皆さんは本当に目が肥えているので、「このメンバーならどんな化学反応が起きるのか」「どういう強さを見せてくれるのか」という予想の解像度も上がっているはずです。 ぜひ、そんな「妄想」を大いに膨らませながら、来年の競技シーンも引き続き追いかけて楽しんでいただければと思います。
岸大河:一言で言えば「楽しく見てください」。本当に、それだけです。 日本から世界に挑戦している以上、ファンのみなさんの「勝ってほしい」という想いが強すぎて、時としてそれが「強い言葉」に変換されてしまうこともあると思います。その気持ちも分かります。 でも、対戦相手である海外のプレイヤーたちも、ものすごいスピードで成長し、人生を懸けて戦っています。勝敗だけでなく、その全力のぶつかり合いから生まれるドラマを、どうか見届けてあげてください。
日本のチームを応援するのも素晴らしいですし、世界の様々な選手やチームを好きになってもいい。純粋に『VALORANT』の競技シーンを心から楽しんでほしいんです。会場が日本なら足を運んでほしいです。
今年以上の熱量で楽しんでもらえるよう、僕らキャスター陣も全力で頑張ります。一緒にいいシーンを作り上げていきましょう!
――ありがとうございました!
”VALORANT Champions Tour”――全てが試される頂の舞台。 時代や世代が移ろっても、そこに全てを賭ける意志は変わらない。疑念を越え、己と仲間を信じて掴む勝利だからこそ、観る者の心を震わせる。
意地と哲学の激突、極限のエイムと頭脳戦が生む美しいドラマ。 刷新されたメタとチームで迎える新時代、若き獅子「Absol」の旅路も始まり、日本最強「Meiy」が勝利へ突き進む。
来年のVALORANT Champions TourはAmericasで1月15日に開幕(Pacificは1月22日)。また新たな物語が始まります。
<取材・執筆:えとのす棘/編集・校正:岡野 朔太郎>