「日本チームの課題は選手入れ替え時のチーム知識の継承」―キャスター「yukishiro」「Retloff」インタビュー【VCT Ascension Pacific 2024】

「VCT Ascension Pacific 2024」決勝のビューイングパーティ後に、yukishiroさんとRetloffさんへのインタビュー。日本リージョンと各地域の違いや、今年のVCTの振り返りをお聞きしました。

VALORANT インタビュー・コラム
「日本チームの課題は選手入れ替え時のチーム知識の継承」―キャスター「yukishiro」「Retloff」インタビュー【VCT Ascension Pacific 2024】
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2024年9月20日から9月29日までインドネシア・ジャカルタで開催された「VCT Ascension Pacific 2024」。その決勝戦のビューイングパーティが京王プラザホテルにて開催されました。決勝では韓国・Sin Prisa Gaming(SPG)とインドネシア・BOOM Esports(BME)が対戦し、見事SPGが3-2で勝利しました。

本稿では、ビューイングパーティの様子と、そのイベント後に実施したyukishiroさんとRetloffさんへのインタビューをお届けします。

◆yukishiroさん、Retloffさんが参加した「ビューイングパーティ」

ビューイングパーティでは、yukishiroさんとRetloffさんと一緒にSPG vs. BMEの試合を観戦。お二人の解説やリアクションを聞きながら一緒に楽しむことができるイベントでした。

ネオンのスーパープレイに思わず「出たよ……」と言って、会場を盛り上げるyukishiroさんや、会場にあるカメラに向かってリアクションをするRetloffさんなど、ビューイングパーティだからこそ見られるお二人の姿も。

そんな公式ビューイングパーティを盛り上げてくれたお二人に、イベント終了後インタビューを実施。Ascensionを終えて、大会の振り返りや日本リージョンの置かれている状況など、話を聞きました。

◆アセンションでは各地域の特徴がよく出ていた

――本日はお疲れ様でした。まずは本日の試合とアセンションを終えての感想を教えてください。

yukishiro:お互いのチームの特徴がはっきりしていて、良い試合でした。BOOM Esports(BME)は、RIDDLE戦でチームとしてのまとまりがすごく良くて、昨年よりも成長が見られたので、これは優勝候補のSin Prisa Gaming(SPG)に勝てるチャンスがあるかもと考えてはいました。ただ、ロータスで逆転したあたりからは、もうどちらが勝つかわからなくなって、すごく見応えのある内容でした。

Retloff:yukishiroさんのおっしゃる通り、各地域での戦い方の特徴が良く出ていたと思います。たとえば、SPGは奇抜な構成ながらも、どんな構成でも扱うことができるチームですし、あれだけ素早いテンポの中でも、チーム内で情報共有を密に取ることができるという強みを持っています。逆にBMEは、綺麗な動きを徹底する正統派なチームです。

この対極ともいえる2チームがぶつかった結果、SPGが勝利したというのは、2025年の新しい『VALORANT』のヒントにつながるのではないでしょうか。

◆日本リージョンが抱える"3つの課題"

――本大会では、RIDDLEがベスト4となりました。日本と各地域の差として感じられている部分はありますか。

yukishiro:正直、それほど大きな差があるとは思っていません。ただ、日本がどうしても一歩遅れているなと感じるのは、選手が入れ替わったときに、これまでチームとして培った作戦や歴史などをどのように引き継いで、次のチームになじませていくかというところです。

フィジカルなど個人技だけで言えば、日本は全く負けていませんので、あとはこのチーム作りをどうしてくかっていうところが、課題のひとつなのかなと思います。

――アセンションを実況解説してきたという視点で、Retloffさんはいかがでしょうか。

Retloff:僕は大きく分けて3つあると思っています。

1つ目は、「0から1を生み出す戦術面」です。今回のSPGのようにデッドロックにネオンを加えるといった独自の構成を展開する、といった動きがまだまだ日本リージョンには少ないと感じています。

MURASH GAMINGの不死鳥構成という例はありますが、それが全面に出ているわけではないので、そういった「0から1を生み出す」という動きが日本でも活発になれば、戦術面の幅がかなり広がっていくと考えています。

2つ目は、「ミスをどれだけ減らせるか」ですね。Gen.Gなど世界的にも強いチームや安定しているチームは、ミスが少ないんですね。

相手がエコラウンドであっても、確実にラウンドをとるようなアンチエコ対策をはじめ、相手がこういう動きをしてくるのであれば、自分たちはこういう動きをしようという最適解が徹底されているんです。なので、そういった動きの徹底と、ミスをどれだけ少なくできるかが重要だと考えています。

そして3つ目は、今日の試合でも改めて感じたのですが、「先手を取ること」です。今日、SPGのFrancis選手がオーバータイムの重要なラウンドで、スカイなのに強気な撃ち合いを仕掛け、2-1トレードという有利状況を生み出し、勝利したラウンドがありました。相手からすると「スカイだから絶対勝負してこないよね」と思うはずなので、その意表を突く動きでした。

こういった動きが成功すると、相手は「スカイのピークを警戒しよう」と立ち回ります。そうなれば、次はこちらがそういった相手の動きを予想して立ち回るというように、常に先手を取って有利に立ち回ることができるようになります。

8:21:20頃からのスカイの動きに注目

yukishiro:さらにもうひとつ挙げるとしたら、以前から言われている「言語の問題」はありますね。特に英語については、日本はまだまだ遅れている部分はあるのかなと。チーム全員が少しでも英語を話すことができれば、新しい選手を得られる機会は増えますし、通訳なしで海外とコミュニケーションをとれるようになります。

Retloff:言語の壁がなくなると、色々なノウハウを吸収できるようになるというのも強みですよね。日本語を喋れるというのが前提でチームを組むとなると、どうしても最先端のノウハウというのが取り入れにくいといったこともあります。

◆今年のVCTは「ニュージェネレーション」の年だった

――今年1年、VCTを振り返ってみてどんな年でしたか。

yukishiro:一言でいうなら「ニュージェネレーション」ですかね。

Retloff:おおー!僕も同じことを言おうかと(笑)

yukishiro:結果ベースで考えると、今年が最も選手の入れ替わりが目立った年でした。Gen.GのKaron選手やDRXのFlashback選手など、新人選手がPacificで活躍したのも記憶に新しいですよね。

さらにEMEAでは、今までずっと勝っていたNAVI、Fnaticといったチームが負けるという展開が起きました。逆に勝ち上がってきたのは、メンバーを大きく入れ替えて、10代の選手を多く取り入れたKarmine Corp、Team Hereticsといったチームです。

フレッシュなエイムの強さに、チームがこれまで培ってきた連携の取り方などのノウハウをうまくミックスさせていたチームが、今年はとにかく活躍したと思います。

振り返ってみると、『VALORANT』競技シーンの1、2年目は、同じジャンルのゲームをやっていたベテラン勢がそのまま移行して活躍している年でした。ところが3、4年目と時間が経つにつれて、その知識を得た若手が活躍するようになり、全体のレベルがどんどん高くなりました。しかも、そのレベルアップのスピードさえも年々上がっていると感じます。

Retloff:僕も同じ印象でした。もうひとつあるとすると「適応しないといけない年」だったのかなと思います。たとえば、スカイとヴァイパーのナーフなどの調整によって、環境が大きく変わったタイミングがあり、NRGやZETAなど数多くのチームが調子を崩してしまうことがありました。

逆にそこから流行ったのがヨルやアイソ、ネオンですよね。その構成に変化に適応できたことがEDward GamingのChampions優勝のきっかけになったと思いますし、今回SPGが大きく活躍できている理由の1つも、ネオンのメタ環境に適応することができたからだと思っています。

そういったメタの変化にどのように付き合っていくかというのが、どのチームも課題になった年なのではないでしょうか。

――どのチームにも変化への適応が求められたということですね。

yukishiro:要望にはなってしまうのですが、来年の世界大会では、スケジュールの中に事前にパッチアップデートのタイミングを決めておいてほしいと思います。仕様が大きく変わってしまうと、スクリムおよびライブ環境での練習に影響が出てしまいますよね。

Retloff:そうですね。ライブパッチでスクリムをやらないといけないので、そこで前のパッチと今のパッチでガラッと環境が変わっていると、スクリムをやる意味がなくなってしまうので、チームや選手のためにもスケジュールがわかると良いですね。

あと先ほどの「全体のレベルが上がっている」という話につながりますが、一度見せた戦術が通用しなくなっているというのも、今年改めて感じました。たとえば「相手がこの構成でこういう戦術をやってきた」となったときに、その対策をコーチが話さなくても、選手だけでこうやって対応していこうと対策が練れるようになっていると感じます。

このように選手個人の知識レベルがどんどん上がってきて、対策されやすい環境になってくると、エージェント構成をガラッと変える戦い方なども今後は重要になってくると思います。

特に今回のSPGが、様々な構成を試合ごとに即座に変えてくるようなチームだったので、2025年の『VALORANT』競技シーンではこのようなチームが流行るのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

《フリーダム山中》

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