近年、日本の『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)人気が高まり、プレイ人口が増加傾向にある一方で、「プレイはしているけど、LoLの競技シーンはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、日本『LoL』競技シーンの“今”をもっと多くの人に知ってもらうために、LJL発足当初(2014年)からのレジェンドプレイヤーであるYutaponさんと、人気ストリーマーでありコミュニティに強い影響力を持つしゃるるさんの対談を実施。
日本の『LoL』シーンにおける現状と未来について深掘りします。
◆プロになったきっかけは“ない”? 二人の『LoL』歴
――Yutaponさんがプロを目指したきっかけってなんだったんでしょう?
Yutapon:きっかけ……そのきっかけっていうのが僕の場合はないといいますか。知り合い同士でチームを立ち上げて、それが当時の「DetonatioN Gaming」に拾われて、その延長線上にあるのがいまなんですよね。なのでもう、気づいたらプロになっていた感じでした。『LoL』自体も中学からずっとやってましたし。
――明確に意識し始めたタイミングもなかったんでしょうか。
Yutapon:それで言うと、お金をもらい始めたタイミングでしょうか。ちょっと正確な時期までは覚えていないのですが、多分ゲーミングハウスに入ったぐらいのタイミングだったかと思います。
――Yutaponさんはプロとしてかなり長い期間活動されていましたが、先日休止を発表されましたよね。理由とかをお伺いしても?
Yutapon:長期間やってきたことによるモチベーションの低下が主な理由ですね。いろいろな出来事もありましたし。そういうもろもろが重なって一旦休止という形を取らせていただきました。
――休止中も『LoL』の配信やウォッチパーティーなどはされていますが、いまと昔では視点が変わったりしましたか?
Yutapon:いままでずっとプレイヤーとしてしかやってきていなかったので、単純に外から試合を見るのが新鮮でおもしろいですね。今後も日本の試合は見ていこうかなと思ってます。
――ありがとうございます。今度はしゃるるさんにもお聞きしたいのですが、まず『LoL』を始めたきっかけはなんなのでしょう。
しゃるる:当時はある別のPvPゲームをやっていたんですけど、ちょっと調整に不満を感じていて……。そのときに友人から誘われたのがきっかけですね。シーズン1ぐらいだったと思います。LJLができる前にあった大会にほかの配信者といっしょに出たりして、オフライン会場でも試合した経験がありますね。
――LJL以前……JCGとかは聞いたことありますが。
しゃるる:いや、それよりもっと前の……WCGとかだったと思います。あとはGが付く前の「Logicool Cup」とかですね。その決勝でDFMと戦って……負けた(笑)。ぽんさん(Yutapon氏の愛称)と戦って負けた気がする。
――プロを目指したりはしたんでしょうか。
しゃるる:最初の頃に目指しはしましたが、やっぱりそもそも……なんでしょう、日本人JGの席もなかったですからね。まあ、ごっこはしました。プロゲーマーごっこ(笑)。
――しゃるるさんは最近、コミュニティ大会やストリーマー陣を巻き込んだ企画など……いわば啓発的な活動を精力的に行われてますよね。これはなにか心境の変化があったのでしょうか。
しゃるる:それで言うとですね、そもそも『LoL』配信を始めたきっかけに“おもしろいゲームを広めたい”というのがあったんです。当時はまだマイナーだったので、配信して見てもらえれば、もっといろんな人にこのゲームのおもしろさが広がるんじゃないかと思って。なので啓発活動は最初からですね。
そこからバトロワ系ゲームが流行り始めて……『VALORANT』が出たあたりで、「このままだと『LoL』やべえんじゃねえか」と焦りを感じて。
――2020年ごろですよね。確かにあのあたりはコロナの関係もあって、今後の展望が見えにくい時期でもありました。
しゃるる:じゃあどうすればいいかなーと思ったんですけど、やっぱり配信者がたくさん始めてくれるのが大事じゃないかと。どの界隈でも最初はそうじゃないですか。そこから“増永アカデミー”を始めたんです。そしたらk4senさんが『LoL』を本格的に始めてくれたりして、「あ、ラッキー」みたいな(笑)。
――それらが、今の盛り上がりにつながっているんですね。
しゃるる:そうですね。まあ自分としてはやっぱり好きなゲーム、おもしろいと思うゲームがなくなってほしくないからこそ、啓発活動をしている感じです。
◆チームに求められる「結果」と「育成」の難しさ
――今年からLJLは大きくリニューアルされましたが、おふたりはどう感じてますか。
Yutapon:試み自体はけっこうおもしろいと思います。
しゃるる:わかる、おもしろいよね、試みは。
Yutapon:ですよね。実際悪くないと思います。ただ、やっぱり最近競技シーンに対しての注目度とかは下がっているような気がしていて。単純に数字は取れなくなってきているのかなって感じがします。もっと前からいまの形態になっていれば、また違ったんじゃないかなと。
――早くからこういう体制が整っていれば、みたいな。
Yutapon:そうですね。いまのLJLみたいに、いろんな人が出てこれる場がしばらくなかったのはよくなかったのかなと。
しゃるる:僕も同意見です。やっぱりリーグ自体が閉じちゃっていたと思うんですよ。自分も最初期のころから10年以上LJLを見続けていますが、新規参入ができていないことで競争性が生まれていなかったんじゃないかって。
――もう少し具体的に伺えますか?
しゃるる:どんなシーンでも新人って必要じゃないですか。でも入れ替え戦があったころも、入れ替え戦がなくなったときも、あまり新人を入れるチームがいなかったんですよね。
それは降格の心配だとか、スポンサーへの体面だとか、そもそも有望な新人がいなかったとか……いろんな理由があるとは思うのですが、結果的にほとんどのチームが“育成の年”を作らなかったのが原因で、近年の新人不足に繋がっているんじゃないかと思います。
――たまに有望な新人が出ても、なにかしらの要因で離れていくことも多かった印象です。
しゃるる:各チームにいろんな思惑があったとは思いますが、結果的に以前のLJLは停滞してしまっていたのかなと、個人的には考えています。
でも、だからこそいまのLJLはすごくいいですよね。たくさんの新人選手が出られる機会になっているので。でもやっぱり「もう少し早いうちからこの形になっていれば」とは思ってしまいますが。
――もっと前から新人選手がたくさん出場できるような環境が必要だったと。
しゃるる:そうですね。でも国内最強だったDFMが、ずっと新人を起用しなかった理由もわかります。『LoL』に限らず、国際大会で結果を出すと、わかりやすく国内で人気が出るんです。DFMが実績を残した2021年はめちゃくちゃ盛り上がってましたし。
――あの年はすごかったです。
しゃるる:でもそれ以降はうまくいかなかったですよね。自分も「どうすればよかったのか」というのに対して明確な答えは出せませんが……それでも、ああいう形で国内リーグを勝ち上がったのであれば、国際戦で勝つ義務が発生したように思います。
――なるほど……。いまの話を聞いて、当時現役だったYutaponさんとしてはどう思われますか。
Yutapon:聞いてて「だいたいそうだな」って思うことが多いですね。実際に見ているうえでのおもしろさが減っていたのは事実だと思いますし、あのやり方で戦うなら勝たなきゃいけないっていうのもそうだと思います。
ベスト16まで進んだ2021年以降、国際戦で勝てなくなったのは大きかったですね。競技シーンに対する関心が落ちる理由にもなったんじゃないかなと。
――結果を出せなかった影響は大きいということですね。
Yutapon:そうですね。結果も、LJLの環境的にも。
しゃるる:でもDFMの肩に乗っているものがデカすぎたようにも感じている。
Yutapon:なんかもう、「やんなきゃな」みたいな雰囲気にもなってましたね。DFMっていうチーム自体が。
しゃるる:プレッシャーとかもあるし、そうだよね。
◆日本サーバーのレベルも上がってきている
――実際、こちらでは想像もできないほどのプレッシャーがあったかと思います...。ちょっと話を今に戻しまして……いまのLJLにはどんな要素が必要なんでしょうか?
しゃるる:それで言うと、もう少し日本人選手の積極性がほしいでしょうか。KRの選手がいるチームは、ゲームメイクがそこ頼りになってしまっている印象があります。そのままだと、現状世界で勝てていない日本チームの焼き直しになってしまうんじゃないかなと。LCPやLJLをほぼ全試合見ていて、そう感じました。
――強いチームはどこからでもゲームを作ってきます。ルートが限定されているなら対策もしやすいですし。
しゃるる:とはいっても見てる側の意見なんですよね。実際プロとしてやってる人の意見もちょっと聞きたいんですけど、ぽんさんどうだろう。
Yutapon:まあ、あれですよね。そういうのはいくらでもスクリムで試してると思うんですよ。でもそこでうまくいってなくて、結果的に“うまくいったパターン”であるKRの選手に寄りがちになってしまっているんじゃないかと。
しゃるる:あー……プロシーン関係なく「そこのレーンに行ってもダメじゃね?」って思うと行けないもんね。
Yutapon:本番は特にそうなっちゃいますね。入っているKRの選手と同じぐらい強い日本人選手がいて、うまく成功体験を積み重ねられればいんですけど……。解決するには単純に、KRの選手と技量が並ぶしかないかなって感じがします。
あとは、サーバー自体のレベルとか、価値とかが上がればいいなと。現状だと、KR選手のフィジカルに追いつくために練習する場所がないのが大きな問題だと思います。
――やはり、KR(韓国)サーバーのレベルは高いんでしょうか?
Yutapon:KRサーバーの上位レートは、プロ選手とかプロを目指して真剣にやってる人が多いんですよ。だから、ゲームがすごくプロ試合の本番のような動きになります。
やっぱ、韓国っていう国の土壌があるのかな。本当に必死にやってる感が伝わってくるんですよね。EUとかNAとかでは全然そんなことないんで、やっぱり韓国が特別なんだと思います。
――そういった場所が日本にも必要ということですね。
Yutapon:そうですね。やっぱそういう基礎力を高める場所が欲しいですね。
でもなんだろうな。難しいな、これは。変わることってほぼできないと思うんですよ。日本サーバーにいるトップ層の人たちがプロになるというマインドで必死にやるしかないんじゃないかな。
しゃるる:これは友達のじゃすぱーくんから聞いた話なんですけど、『VALORANT』の競技シーンが盛り上がり始めたころ、『VALORANT』のランク戦は治安がすごくよかったらしいんですよ。
理由としては、みんなプロゲーマーを目指しているから。上位の人たちがプロになれる窓口が広かったからこそ、あとで問題にならないよう素行の段階から気を付けていたらしいんです。だから全体として「真面目にゲームしよう」っていう雰囲気があったから治安がよくなっていると。
――いまはプロとしての素行が求められることも多いです。
しゃるる:だからこそ、“そこ”が重要なんだと思います。けっきょくプロゲーマーに憧れる気持ちが強ければ、多少なりともサーバー自体のレベルは上がるんじゃないかな。
実際、LJLに出る際は素行調査があるので、選手の人たちはすごく真面目にやってるんですよ。「このピックして偉いな」とか「ちゃんと真面目にプレイしてるな」みたいな、好感を持てる人たちなんです。
――プロに品行方正さが求められているように、ソロQにもそういった変化が表れているイメージでしょうか?
Yutapon:そうだと思います。先ほどしゃるるさんも言ってましたが、LJLに参加して頑張っている人たちって見ててわかるんですよね。「この人たち真面目にやってるな」って。そういうのが伝わってくるので、サーバーとしてはいい傾向になっているとは感じます。あとは必死やってる人たちの数が増えていけばなと。
ただ、以前に比べるといまの日本サーバーってソロQ的にはかなりいいんですよ。意外とレベル高いなって思うことが多いです。
しゃるる:真面目にやってる人も多くなってきましたよね。
Yutapon:これが続いていき、ソロQが競技シーンっぽい環境になれば、さっきも言ったとおり練習としてはすごくいい場所になるのかなって思いますね。
――黎明期とか、2、3年前に比べると今の環境は確実によくなっていると。
Yutapon:そうですね。「上手い人が多いな」って思います。
◆「人は孤独に耐えられない」“コーチDiscordサーバー”が必要
――話は変わりますが、以前apaMENコーチへのインタビューで、「日本はコーチが勉強する環境がない」という話があったんですが、ここも日本が抱える課題なんでしょうか。
しゃるる:間違いなく課題のひとつだと思います。もっとコーチ間で情報共有はしたほうがいいと思うんですよね。それこそ“コーチDiscord”みたいなものがあって、横のつながりができればいいなと。もちろん手の内を明かすようなものですし、問題も多いとは思うんですが……でもそういうことをやらないと国内のコーチのレベルってどうしても上がらないと思うんです。
それこそ今って、専業でやれてる人はほとんどいないと思うんですよね。仕事の合間に見る、みたいな。
――専業となると、たしかにあまり話は聞かないですね。
しゃるる:そうなるとカバーできる範囲にも限りが出てきちゃいますし……ただでさえ『LoL』って必要な知識が多いじゃないですか。実際LJLでも最新のジャングルルートを活用できているチームとできていないチームがあったりしたんですが、そういうのは多分コーチ自身が知らないんじゃないかと思うんです。
別にコーチDiscordとまで銘打たなくてもいいので、「いまのジャングルはこういうルートを使ってますよね」みたいな細かい最新の情報をやり取りできたり、ディスカッションする場所があれば、全体としてレベルアップできるんじゃないかと。
――競技シーンがまた成長段階になっているからこそ、そういう場が必要だと。
しゃるる:みんなで探して共有して、みんなで強くなるっていう段階なんじゃないかな、今は。職業としてコーチが確立していないっていうのも理由のひとつではあるんですが。
――それこそしゃるるさん自身、コーチの道を目指すとかはなかったんでしょうか。アカデミーなどでいろいろな方に教えていたりもしましたが。
しゃるる:自分の知識だけだとまったく足りないんですよ。競技シーンで必要な知識量が10だとしたら自分は3ぐらい。初心者や中級者を引き上げることはできても、上級者をプロに、さらに高みにっていうのは本当に難しいんです。だからその、やらないっていうよりはやれないっていう感じですね。
――また別の知識になってくると。
しゃるる:別物ですね。やっぱりコーチ自身もチームゲームをやらないと無理だなと思います。ぽんさんとしてはどう思います?
Yutapon:僕もコーチをやる選択肢はなかったですね。言っていたとおりというか……コーチってよくわかんなくないですか?正直。
やるとしたら自分で考えてなんとかやるしかないわけですけど、考えを共有する場所もないですし、他人に教えるとしても「自分が教えてることは本当に正しいのか?」って思っちゃって。その正しさを確認する方法も、現状としてはないじゃないですか。
――コーチを学ぶ場所も、自分の正しさを確かめられる場所もない。やはり現状だとどうしてもハードルは高いわけですね。
しゃるる:そうですね。でも、さっき言ったような場所さえあれば、「コーチやってみようかな」って人も出てくるかもしれない。
あとあれですね。人は孤独には耐えられないんですよ。答えのない森をさまようならなおさら。孤独を感じているコーチもいるんじゃないでしょうか。
――かがり火を灯して、道を示す人が必要ということですね。
しゃるる:もしくはみんなで集まって「こっちじゃないか?」「いや、これはどうだろう」って言いながら進むかですね。相談する仲間がいるだけで全然違うと思います。
◆競技シーンに目を向けてもらうに必要なこと
――ストリーマーの方たちがプレイすることが増えたおかげで『LoL』自体はかなりいろんな人の目に入るようになったとは思います。そういう人たちに競技シーンを見てもらうにはどうすればいいと思いますか?
Yutapon:これはもう単純に、日本のチームが国際戦で結果を残すしかないんじゃないかと。自分のやってるゲームが大きな結果を出したら、それだけで興味が出ると思うんですよ。なのである程度注目されるような結果を残すしかないんじゃないかなって、僕は思っちゃいますね。
しゃるる:いやでも、これ俺はひとつ明確に答えがあって。『LoL』のプロって忙しいじゃないですか。でもそういう忙しいトッププロの人たちに、ストリーマーさんへ教えてもらう時間を作ってもらうんですよ。
そうすると、ただのプロゲーマーじゃなくて“教えてくれた人”っていうパイプができる。で、そうなるとストリーマーの人も、そのファンの人も、応援する理由になるじゃないですか。それこそ見て応援するような、ウォッチパーティーみたいなコンテンツになったりもしますし。
――なるほど。以前、SHAKAさんが主催されていた「師弟杯」のような。
しゃるる:もちろん教えた側がボコボコにされてしまうと、継続して見てもらえないとは思うんですけど。
例えばいまのLJLだと、Washidaiくんとかがそうですよね。いろんな人に教えたりしていて、実際放送を見ていても応援している人が多いのがよくわかる。僕の放送のコメントを見ていてもそう感じます。で、実際彼はLJLでちゃんと強いので、しっかりと人気も出ている。もし彼が世界大会に出て、さらに活躍するようなことがあれば、もっと大きな流れになると思うんですよ。
――選手自身の活躍も重要だと。
しゃるる:ストリーマー大会とかにプロが入って一緒にやっていくよりかは、やっぱりプロはプロの世界で結果を出す。それをストリーマーが見るっていうのが一番良い形で人気が出る方法だと思います。……もちろん、結果を出すっていうのが難しいというのを除けばですが。プロとしても、注目されればやりがいに繋がるんじゃないかなと。
でもやっぱり、そういう時間を作るのが大変そうですよね。どうしても『LoL』のプロって忙しいですし。
――Yutaponさん的に、こういったプロの方が参加する企画は可能だと思いますか?
Yutapon:モチベーションがあればできる……んじゃないですかね。拘束時間とかにもよるとは思いますが。
しゃるる:想定としてはイチから初心者に教えるとかじゃなく、ちゃんとやる気がある人のランク戦を見てあげるとかの話だね。
Yutapon:ああ、それぐらいなら時間的にも全然できると思います。まあただ結局、その人にどれぐらいモチベーションがあるか次第ではあるんじゃないかな。それをやるなら休みの日を使うことになるんで、どうしてもずっと『LoL』漬けになっちゃうんですよ。よっぽど『LoL』好きじゃないとできないとは思います。
――練習時間以外もずっと『LoL』ですもんね……。Yutaponさんとかはけっこうオフシーズンでほかのタイトルを遊ばれていたイメージはありますが、やっぱり練習がない日は『LoL』から離れたいって思ってしまうものなんでしょうか。
Yutapon:僕の場合はわりとそうですね。単純に根っこがゲーマーなので。新しいゲームがシーズン中に出ても指を咥えて見ているしかない以上、シーズンオフの時は我慢してたぶんやりたくなっちゃう。
――そういう時間をコミュニティの貢献に充てられる人ならって感じでしょうか。
Yutapon:そうですね。
しゃるる:コミュニティへの貢献って言うより、結局は自分のためですね。巡り巡って返ってくるので。
Yutapon:まあ擦り寄る……って言っちゃうとよくないですけど。うまくストリーマーさんにコーチングするのが僕としてもいい形だとは思います。
しゃるる:もちろん結果を出せば、むしろみんなプロゲーマーに寄ってくると思うけどね(笑)。
Yutapon:そう、それがいちばん簡単。
しゃるる:間違いない。
Yutapon:でもねえ……それができたら苦労しないんですよ。
しゃるる:そうなんだよなあ……。
◆「みんなでリフォージ! あなたもリフォージ!」
しゃるる:ちょっと暗い話になってしまったので、明るい話をしましょうか。
――ありがとうございます。LJLは体制も変わったばかりですし、まだまださまざまな可能性があります。
しゃるる:いまちょうど世代交代が起きていて、若い芽がどんどん出てきている状況ですよね。旧体制のものも変わりつつありますし、LJL運営のPLAYBRAINさんもすごく頑張ってくれてるじゃないですか。
だからこそ……「みんなでよくしてこう!」と言いたいです。いまだったらいろんなものが作り出せると思う。そういう作り上げる段階に参加できるのは、逆に言えば今しかないと思うんですよ。
――それこそLJLのテーマである“REFORGE AS ONE”ですよね。再構築していくというか。
しゃるる:そうですね! 今ならREFORGE(再構築)に参加できます!
――「あなたがリフォージするんですよ」ぐらいですね!
しゃるる:そう!「みんなでリフォージ! あなたもリフォージ!」です(笑)。
実際さっきソロQの話でもありましたが、本当によくなってきているんですよ。『LoL』自体も名誉システムがどんどん厳しくなってきていますし、Toxic(※暴言を吐くような、素行に問題があるプレイヤー)はかなり生きづらくなっていくんです。だから本当に、世界はしっかり再構築されていくと思いますよ。
――良い兆候はいろいろな場所にあるということですね。
しゃるる:そうですね。だからこそひとりひとりがその当事者であることを胸に刻んでやっていきましょう……みたいな感じですね。そうしたらきっと、よりよいものになっていくと思います。
Yutapon:若い世代は本当に、しっかり真面目にソロQをやってくれていて……そういう試合だとやってて「面白いな」って思えるんですよ。
しゃるる:そうだね。本当にそう。
Yutapon:だからずっと、そういうプレイを続けていってくれたらうれしいなって思いますね。続けていったらそれがじわじわ下のレートにも広がっていって、いい感じの試合が多くなって……それがソロQの質に繋がるんじゃないかと。なのでその調子で、そのまま頑張ってほしいです。
――おふたりともやっぱりいまは“芽吹き”の段階というか、そういう意識を持ってらっしゃるという。
Yutapon:本当にそうだと思います。いままでは日本サーバーで上手い人を見ても「この人韓国人だろうなー」って感じることが多かったんですけど、いまは明らかに日本人とか、LJLで見たことある“上手い人”が増えてきていて。なのでちゃんと、ソロQの環境自体はよくなってきていると思いますね。
しゃるる:全体的なレベルは足りてないけど、みんながいい方向に持っていこうとしているのは感じる。
Yutapon:そうですね。「こんな人いたんだ」っていう発見も多くて。
しゃるる:わかるな……。あ、ちょっと言いたいこととしては、こういう現状だからこそ、環境を守るためにも、LJLに出場しようとする選手の素行が担保されていることは重要だと思います。
――一番上が品行方正な選手をちゃんと優遇するようになれば、結果的に全体がよくなっていくと。
しゃるる:“LJLに出ている選手はみんなマナーがいい”っていう保証になるだけでも、プロゲーマーになる価値が出ると思うんですよ。「ここに出ている人はちゃんと『LoL』に向きあった人ですよ」と、ちゃんとブランディングするというか。
――そうなれば、選手を辞めた後のセカンドキャリアにも繋がりますしね。
しゃるる:いろいろ主催でやってみて、そのときにいつも思うんですけど……『LoL』は誰が大丈夫なのかわからないんですよね(笑)。現状は「明らかにヴィランじゃねえか」みたいな人が多すぎて、人が見つからないことも多く……。
――なるほど。だからこそLJLがその“大丈夫”の証明になればと。そういう意味でも「出たい!」と思わせる場になればすごくいいですよね。
しゃるる:そうですね。なんなら一番簡単にできるブランディングだと思います。クリーンにするってだけで、なにも悪いことはないですし。品行方正にやることのメリットというか、報酬的な面で“LJLへの参加”があれば、選手もリーグもWIN-WINだと思うんです。
実際ぽんさんはどうだろう。嫌じゃない? 変な選手がいたら。
Yutapon:うーん。でも、そうですね。ちゃんとしないと、チームメンバーがかわいそうだなって思います。頑張っている人がいても、「でもあのチームはこういう人がいるしな……」と思われてしまうと、それだけでチームの印象が決まっちゃいますし。頑張っている人のためにも、ちゃんと弾いてあげるシステムがあるといいなと思いますね。
しゃるる:わかるわ。人のモチベーションを奪う行為が、チームゲームで一番の悪だからね。
――それでは今後の話なども幅広くお聞きできましたので、最後に読者の方へのメッセージで締めさせていただければと思います。
Yutapon:話にもあった通り、今って本当に“リフォージ”していて、意外とちょっとずつ良くなってるんですよ。『LoL』を追ってもらえたらきっと面白いと思うので、プロシーンというか、LJLというか、そういうものにも興味持ってもらえたら嬉しいです。
しゃるる:5年前、6年前とかの昔がダメだったのは、きっとみんな当事者意識がなかったんですよ。環境を良くしていくのって、プレイヤーのみんななんです。それぞれが動かなきゃダメで、よくなるのを待っていても意味はないんですよ。
だからこそ、ひとりひとりが良くしていく意識を持たなきゃだめだっていうのは伝えたいです。それが結果的に競技シーンの盛り上がりだったり、視聴者数の増加につながっていくと思うので、みんなでできることをやっていければいいなと思います。
――ありがとうございました! 長時間の対談、お疲れ様でした!
(執筆:オクドス熊田/編集:松田和真)