涙の熱狂の5年間、「まだ見たい」からZETA快進撃、Masters Tokyoまで―日本『VALORANT』競技シーンが歩んだ道のりを辿る【VALORANT5周年記念特集】

『VALORANT』日本シーン5年の"偉業"。ZETAの世界3位で熱狂が加速し、Masters Tokyo開催も実現。ファンと一体となり世界の頂点を目指す軌跡と成長を振り返ります。

VALORANT インタビュー・コラム
涙の熱狂の5年間、「まだ見たい」からZETA快進撃、Masters Tokyoまで―日本『VALORANT』競技シーンが歩んだ道のりを辿る【VALORANT5周年記念特集】
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"偉業の芸術(Art of Greatness)"――それは、初代「VALORANT Champions」が掲げ、今なお競技シーンの頂を目指す者たちの魂を揺さぶる言葉。精密な射撃と的確なアビリティーが火花を散らし、無限の戦術が編み出されるこのゲームが誕生した瞬間から5年、日本の『VALORANT』eスポーツシーンは大きく飛躍し、まさに"偉業"と呼ぶにふさわしい成長で世界の注目を集めました。

それは、パンデミックの最中にローンチされた黎明の記憶、日本が見せつけられた大きな壁、日本が魅せた奇跡のプレイに日本中が歓喜の声をあげたあの日、そして今やアリーナを揺るがす数万の歓声が日常となった現在へと続く、5年間の壮大な叙事詩です。本稿では、その熱狂と涙に彩られた軌跡を、日本の視点から辿っていきます。

序章――夜明け前、IGNITIONとFIRST STRIKE

2020年6月、ゲームのリリースと同時に、Riot Games公認の大会群「IGNITIONシリーズ」が世界各地で産声を上げました。来るべき公式リーグ「VALORANT Champions Tour (VCT)」の夜明けを告げる狼煙です。まだ戦術も定まらないカオスな環境の中、後のスタープレイヤーたちが頭角を現し、強豪チームの原型が生まれていきました。



Absolute JUPITER(後のZETA DIVISION)でLaz選手がセンチネルをやっていた時代。スプリットのマップ形状も現在と異なる。

当時、国内シーンを支配していたのは「Absolute JUPITER」(後のZETA DIVISION)。他を寄せ付けない圧倒的な強さでIGNITIONシリーズとして行われた「RAGE Invitational」「RAGE Japan Tournament」共に優勝し、日本の『VALORANT』競技シーンにおける初代絶対王者として君臨しました。

そして2020年末、初の公式大会「FIRST STRIKE」が開催されます。これは各地域内で王者を決める大会です(当時は新型コロナウイルスのパンデミックにより、大規模な国際大会は開催できなかった)。日本では、Absolute JUPITERが決勝でBlackBird Ignisを破り、見事初代日本王者の栄冠を手にしました。



Absolute JUPITER優勝の瞬間

CyberZ(RAGE)プレスリリースより

第1章:世界への扉――VCTの幕開けと世界の壁

2021年、ついに「VALORANT Champions Tour (VCT)」が本格始動します。年間を通して「Challengers(地域予選)」「Masters(国際大会)」「Champions(年間王者決定戦)」という3段階のサーキットを戦い抜き、世界一を目指すという、現在にも通じる原型が生まれました。

そして同年5月、コロナ禍の厳しい状況を乗り越え、アイスランド・レイキャビクにて初のオフライン国際大会「Masters Reykjavík 2021」が開催されました。記念すべきこの舞台に、Challengers Japanから日本代表として駒を進めたのは「Crazy Raccoon (CR)」でした。

しかし、結果は世界の壁に跳ね返される厳しいものでした。続く「Stage 3 Masters Berlin」(当時は1年3ステージ制だった)ではZETA DIVISIONとCRが出場、CRは1試合勝利するもののプレイオフ突破は遠い夢のようでした。CRが出場した初の「Champions」でも、1試合も取ることができずに敗退となりました。

このとき生まれたOooDaさんの「勝てなくても良い、まだ見たい」という名実況や、Lazさんの「最悪の結果になりました。すみませんでした」という苦しい言葉は、世界の厚い壁を如実に表したものでした。





第2章:奇跡の快進撃――ZETA DIVISIONが世界を揺るがした日

2022年、日本の『VALORANT』史のみならず、日本のeスポーツ史において永遠に語り継がれるであろう「事件」が起きます。

その前に「VCT 2021: APAC Last Chance Qualifier」にも触れておきましょう。Champions 2021への出場権をかけたアジア地域の大会で、日本の「NORTHEPTION」が2位を獲得。Champions出場は惜しくも逃したものの、F4QやPRXを破竹の勢いでなぎ倒していったのです。



当時NORTHEPTIONだったMeiy選手のツイート(現ポスト)。しっかり世界で戦える選手になっている。

そのNORTHEPTIONで活躍したSugarZ3ro選手、TENNN選手と、REJECTからDep選手を迎えチームを一新したのが「ZETA DIVISION」。国内大会を圧倒的な力で勝ち進み、「Masters Reykjavík 2022」への切符を掴み取りました。

新体制で挑む初戦、DRXに敗北。やはり世界の壁は厚いのか。しかし、彼らの物語はここから始まりました。Lower Bracketに回ったZETAは、そこから奇跡の快進撃を見せます。EMEAの巨塔FNATIC、ブラジルのNiP、そして一度敗れた韓国の王者DRX。世界の強豪を次々と撃破していくドラマティックな展開に、日本中が熱狂しました。




Twitter(現X)では「#ZETAWIN」が世界トレンド1位を記録。早朝にもかかわらず、配信の同時接続者数は40万人を超え、パブリックビューイングには多くのファンが詰めかけた。Dep選手のオペレーター、Laz選手のクラッチ、crow選手の冷静な判断、TENNN選手の勇気ある踏み込み、SugarZ3ro選手の“H3ro”化。選手一人ひとりのスーパープレイが、多くの人々の心を掴んで離しません。最終結果は、世界3位。日本のタクティカルシューターが世界最高峰の舞台で成し遂げた、前人未到の快挙でした。

この追い風にのるように、Stage 2のFinalsはさいたまスーパーアリーナで実施。チケットは完売、総来場者数は2日間で2万6千人を突破、国内eスポーツ史上最多動員記録を達成しました。

第3章:「Masters Tokyo」開催――日本の熱狂、世界の舞台へ

ZETA DIVISIONが世界を揺るがした衝撃と興奮が冷めやらぬ2023年。この年、VCTは大きな変革期を迎え、Americas、EMEA、Pacificという3つの国際リーグを設立する「パートナーシップチーム制」を導入。世界中から選ばれた30チーム(後に拡大)が参加する、新たなトップリーグが誕生しました。日本からは、ZETA DIVISIONと、古豪DetonatioN FocusMeの2チームが選出され、世界の強豪と年間を通して戦うステージへと進みました。

そして6月、日本初となるVCT公式国際大会「Masters Tokyo」が、千葉のTIPSTAR DOME CHIBAと幕張メッセを舞台に開催されたのです。前年のZETA DIVISIONの快進撃と、国内でのオフラインイベントの成功が大きな追い風となり、この歴史的な大会への期待は最高潮に達していました。世界各地域を勝ち抜いた12のトップチームが東京に集結。日本のファンにとっては、世界最高峰のプレイを自国で目の当たりにできるまたとない機会となりました。



残念ながら日本チームの出場は叶いませんでしたが、会場を埋め尽くした日本のファンの熱狂は、世界に向けて強烈なインパクトを与えました。チームの勝敗にかかわらず、一つ一つのスーパープレイに惜しみない拍手と歓声が送られ、国際大会ならではの華やかさと緊張感が会場全体を包み込みました。海外チームの選手たちも、日本のファンの温かさと熱意に感銘を受けたというコメントが多く聞かれ、「Masters Tokyo」は日本のeスポーツコミュニティの成熟度と、『VALORANT』への深い愛情を世界に示す場となったのです。

第4章:オフライン観戦文化の定着――アリーナを揺るがす声援

「Masters Tokyo」という世界規模の祭典を経て、日本の『VALORANT』シーンにおけるオフライン観戦の熱気は、もはや一過性のものではなく、深く根付いた文化へと昇華しました。その象徴とも言えるのが、国内大会である「VALORANT Challengers Japan」です。

ZETA DIVISIONの躍進以降、2022年のさいたまスーパーアリーナでの熱狂を皮切りに、Challengers Japanのプレイオフは、東京、大阪、名古屋など、日本各地の大規模会場を舞台とする一大エンターテイメントイベントへと成長を遂げたのです。数千、時には1万人を超えるファンが会場に詰めかけ、お気に入りのチームや選手に熱い声援を送る光景は、今や「当たり前」のものとなりました。

会場では、チームのユニフォームやグッズを身にまとったファンたちが、応援ボードを手に、選手の一挙手一投足に熱視線を送ります。クラッチプレイが決まれば地鳴りのような歓声が沸き起こり、惜しい場面ではため息と共に温かい拍手が送られる。この選手とファンが一体となって作り出す熱狂的な空間こそが、日本の『VALORANT』シーンの大きな魅力であり、eスポーツが単なる競技ではなく、観る者を熱狂させる「ショー」として確立された証と言えるでしょう。

終章――終わらない夢、5年間の先に待つ栄光

本稿では触れていませんが、NORTHEPTIONの世界大会出場、VCT Game Changersの発足と国際大会への出場、SCARZのAscension躍進、日本シーンから輩出される世界王者など、FIRST STRIKEから始まったこの5年間で、数々の物語が生まれました。

世界に挑み、敗れ、そして立ち上がった選手たち。ZETA DIVISIONが見せてくれた奇跡の光。「Masters Tokyo」で生まれた熱狂、そしてアリーナを震わせる大歓声。そして現在進行形でパートナーシップリーグで世界の強豪としのぎを削る者たち、Challengersから己の力で道を切り拓こうとする者たち。彼らが見据える先は、ただ一つ。日本のチームが、まだ誰も手にしたことのない悲願――VALORANT Championsのトロフィーを掲げることです。

この終わらない夢を追いかけ、選手とファンはこれからも共に歩んでいく。5年間で紡がれたこの物語は、まだ序章に過ぎません。

※UPDATE(2025/06/03 3:30):誤字を修正および末尾の記述を追記修正しました。

《岡野 朔太郎》

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「最高の妥協点で会おう」 岡野 朔太郎

東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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