「一度辞めてからが本番ですよ」… 果てしなき『LoL』沼の魅力をLJLキャスター「eyes」「Revol」が語り尽くす【対談インタビュー】

『リーグ・オブ・レジェンド』競技シーンをキャスターとして支え続けてきたeyesさんとRevolさん。LJL 2024 Springの振り返りから、お互いの『LoL』愛に至るまで、色々とお話を伺いました。

League of Legends インタビュー・コラム
「一度辞めてからが本番ですよ」… 果てしなき『LoL』沼の魅力をLJLキャスター「eyes」「Revol」が語り尽くす【対談インタビュー】
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プレイするのはもちろん、観戦するだけでも楽しい『リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)』の世界。2024年上半期は、そんな『LoL』観戦シーンにおいて激動のシーズンだったと言えます。

国内プロリーグ「League of Legends Japan League(以下、LJL)」をキャスターとして支え続け、その長きにわたる競技シーンの歴史を見届けてきたeyesさんRevolさんは、この突如巻き起こった変化をどう見届けているのでしょうか。

そこで今回は直接おふたりにインタビューを敢行。LJL 2024 Spring Split レギュラーシーズンの振り返りから、お互いの『LoL』への愛に至るまで、“いまこそ訊きたい!”という話を色々とお伺いしました。

◆絶対王者・DFMを破ったSHGの大躍進をどう見ていた?

──まずは2024年のLJL Springを振り返っていただきたく。福岡ソフトバンクホークスゲーミング(以下、SHG)がDetonatioN FocusMe(以下、DFM)の連覇を止め、念願の初優勝を果たしました。

Revol:まず言えるのは、SHGはメンバー発表が早かったですよね。昨年末の時点ですごいメンバーを発表できていて、気合が入っているなと感じていました。一方でDFMは最も遅かったんです。

eyes:毎年早かったのにね。

Revol:そこが印象的でした。始まってみるとDFMも強さこそ見られましたが、シーズンが進むにつれての成長があまり感じられず、対するSHGは段々と良くなっていたので、そこで差が生まれたのかなと。

eyes:両チームともに新コーチを招集したんですが、DFMは元選手でコーチとしては新人となるviviDコーチが加入したのに対して、SHGは日本でも既に実績があるvicalコーチを迎え入れました。

Revol:vicalコーチはRascal Jester時代から素晴らしい仕事をしていますよね。

eyes:序盤こそ劣勢だったSHGですが、修正が早かったのがひとつの勝因かなと思います。プレイオフ決勝を見ていてもBan/Pickで選択したチャンピオンに合わせた戦略ができているSHGに対して、DFMは(後半に強みを発揮する)スモルダーを採用しているのに序盤から戦ってしまうなど、戦略的な部分で大きな差がついたかなと。

Revol:ボットレーンで勝ちに行くならもっと強いPickをすればいいのに……と思うことはありましたね。

eyes:スモルダーとセナのボットレーンへガンクを仕掛けるんだもんね。心の中で「やめなよ~」と思っていましたよ(笑)。一方でSHGは、練習してきたプラン通りの動きというのが伝わる内容でした。

──そして今シーズンの大きな変更点が、LJLプレイオフを勝ち抜いた3チームが(太平洋地域の)「PCS」プレイオフへ参入する方式の導入です。年に2度の世界大会「Worlds」や「MSI」への直通枠が無くなったことで、コミュニティの中では少しネガティブな反応も多かったと感じますが……。

Revol:少しではなかったですよね(笑)

eyes:8割から9割はネガティブだったよね。

──確かにそうかもしれません(笑)。ただ、実際に大会を観ていると海外チームとの対戦できるチームが増える面白さもありましたが、おふたりはいかがでしょうか。

Revol:eyesさんは最初から、9割じゃない方の反応でしたよね。選手も国際大会の経験を積めるという点でポジティブな立場だったのをよく覚えています。

eyes:今まで国際戦に出場できるのが1チームのみだったなか、個人的な感想として色んなチームが経験を積めるのは大きいと思ったよね。それとやっぱり、応援するチームが3つあったら試合を見るじゃん(笑)

さらに言うと、以前に開催された日本地域のチームと東南アジア・オセアニアのチームが対戦する「Rift Rivals」でかなり手応えを感じていたから、余計に僕はプラスの印象だったかな。蓋を開けてみて、1点だけ残念だったのはアカデミーリーグが上手く機能していると言えなかった部分。そこだけは、これからどうにかしなければいけないと思います。

Revol:パシフィックチャレンジャーズ リーグ (PCL)では日本チームが全然勝てなくて、惜しいと言えるのも数試合だけでしたね。PCSの話に戻りますが、僕も最初はネガティブな反応でしたね。

ただ、2016年までは国際大会の出場枠を巡って、マイナーリージョンのチームが集まってワイルドカード枠を争う「IWCI」や「IWCQ」といった大会へLJLから参加していたことを思い出したんです。それと同じか、むしろ日本1位のチームだけでなく3チームも参加できるようになったとポジティブに捉えられるようになりました。

──Springシーズンは前述の2チームに加えてV3 Esports(以下、V3)がPCSプレイオフに出場しましたが、結果を振り返っていかがでしょうか。

Revol:案の定V3は、経験不足が如実に出たなという印象です。ただ、この経験こそが国際大会に3チーム出場できるメリットでもあるし、チームとしての伸びしろも新たに見えたのではないかと思います。DFMはLJL決勝戦の内容が良くなかったのを最後まで立て直せなかったなと。試合内容としては惜しかったですし、Stage2に抜けられる実力もあったので残念でした。

eyes:V3は明らかに緊張してたよね。渡航して体調を整えるやり方も知らないだろうし。ただ、ずっと強い強いと言われていたAcee選手が実際にPCSのチーム相手でも通用するんだと肌で感じられたのは良かったんじゃないでしょうか。DFMは選手の実力があるのに戦略が噛み合わなかった印象で、そこさえ何とかすれば決勝まで行けたんじゃないかと。

Revol:SHGと並ぶ実力は持っていますよね。逆に最初はSHGが決勝戦まで進めるとは思っていなくて、PCSの強豪トップ3相手に手も足も出ないんじゃないかと危惧していたくらいでした。ただ実際はFrank Esports(以下、FAK)とCTBC Flying Oyster(以下、CFO)を倒して決勝戦へ進出。最後こそ3-0のストレート負けでしたけど、ちゃんと戦えたなとポジティブに観戦できました。

eyes:僕は初戦でPSG Talon(PSG)とフルセットまで行った時点で「決勝まで行けるな!」と感じましたよ。ただSHGは毎日のように試合があって、かつ毎回フルセットなので、会場となったホテル「グランドハイライホテル台北」にちなんで“Stay hilai Gaming”なんて言われていましたけど、対戦を重ねるほど手の内を晒しちゃうんですよね。

レクサイやツイステッド・フェイトでトップレーンを荒らす戦略を既に見せてしまったのでBan/Pickで対策されて、急遽ボットレーンを荒らそうとチャレンジしたけど上手く運ばなかった印象です。さらに二の矢、三の矢があれば勝てたんじゃないかなと

Revol:惜しかったですよね。

eyes:FAKは調子を崩していたのもあったけど、CFOにも完勝でしたし、Summerシーズンへの楽しみが広がる結果だったと思います。

◆人気ストリーマー達による『LoL』ブームで感じる変化とは?

──そんなLJLのSpringシーズンと同時期に日本『LoL』コミュニティはストリーマー大会の「the k4sen」が行われるなど、これまでにないほど賑わっていました。『LoL』を“得体の知れない何か”ではないと知って、プレイし始めた初心者の方も多そうですが、おふたりから見て変化は感じられますか?

Revol:イベントとは少し違いますが、僕が一番最初に『LoL』のコンテンツでインパクトを受けたのは(現SHG所属の)evi選手がYouTubeにアップしている「えびンモTV」ですね。トップレーンでのチャンピオンごとの戦い方を詳しく説明する動画で、それをきっかけに『LoL』を深く知ってのめり込んだという声も数多く聞いていました。

Revol:ただ、そこから数年は初心者を『LoL』沼に一気に引き込むようなインパクトあるコンテンツがなかった。それでもしゃるるさんが初心者をコーチングする「増永アカデミー」を開くなど、さまざまなクリエイターが下地をずっと作ってくれていて、k4senさんが初心者大会の「the k4sen」ですごく上手く見せてくれたことで、その下地が爆発するに至ったんじゃないでしょうか。でも、僕はあんまり初心者と話す機会ってないんですよね。

eyes:そう。なんか「あの人たち(eyes&Revol)はコアだから」って空気感が蔓延しているみたいで、配信で「こんなことを聞くのは申し訳ない」とコメントされたこともあるんですよ。だから僕の肌感では「おー、そっちでは『LoL』は盛り上がってんの?」みたいな感じです(笑)。やっぱりストリーマーシーンとプロシーンには境目があるじゃないですか。

Revol:完全には重ならないですよね。

eyes:普段はストリーマーさんのコミュニティと接しないのもあって、その盛り上がりがプロシーンまで反映されている感覚はまだないですね。LJLの放送後にはコメントを確認していますが、それほど初心者らしいコメントが増えた印象もなくて、初心者の人はストリーマーさんのウォッチパーティで観ているのかな?というのが正直な感想です。

──まだシーンのコアなところでは分かりやすい変化が起こっていないんですね。では"初心者"で言うと、おふたりが『LoL』にハマったきっかけは覚えていますか?

Revol:ゲーマーなら分かってもらえるかなと思うんですが、僕は「今はこれをメインに遊んでいる」と言えるタイトルが常にひとつは欲しいタイプなんです。『LoL』の前にプレイしていたMMORPGの新バージョンがハマらなくて、何かないかと探している段階で勧められてシーズン1の頃にプレイを始めました。

ただ、本当にハマったきっかけはシーズン2のWorlds決勝ですね。台湾チームと韓国チームが戦ったんですが、それ以前はヨーロッパと北米のチームしか知らなかったので「東アジアのチームが決勝戦で戦うんだ!」と思いましたし、オフライン大会ならではの演出もすごくて、そこからどっぷり競技シーンを観るようになりました。

eyes:それまではあんまりプレイもしていなかったの?

Revol:プレイはしていましたけどカジュアルで、あまり積極的に何かを調べたりもしなかったです。観戦にハマってからディープなプレイも調べるようになりましたし、プロの試合は全部観るくらいになりましたね。

──eyesさんはいかがでしょうか?

eyes:僕はちょっと変わっているんですよ。知り合いがプロゲーマーをやっていたのもあってMOBAのeスポーツ大会を色々と観ていたんですが、いざ自分がやりたいと思ってもさまざまな条件でアカウントが作れなくて(笑)

Revol:あったなあ、そういうこと。

eyes:そこで知人がアカウントも簡単に作れて無料の『LoL』を勧めてくれて、やりたかったMOBAにハマりました。『LoL』好きって“一度辞めた後に戻ってきてハマった経験”がある人が多いですよね。でも僕は常にやりたくて仕方なく、今まで一度も辞めたことがないんです(笑)

当時はFPSなど他のタイトルでもプロシーンが始まって注目され始めていた頃で、『LoL』もシーズン2のWorldsが「いち大会での賞金総額が過去最高」と記事になっていたんです。「それは見ないといけない!」と思って観戦してみたらものすごくて、観戦にも熱中するようになりました。そういう意味では、シーズン2まではプレイしかしていなかったですね。

──私も一度辞めて戻ってきたタイプですので、eyesさんのプレイ歴はすごいなと思います。人によってさまざまな経験と向き合い方があるのも『LoL』の面白さですが、お互いに「この人は本当に『LoL』が好きなんだな~」と感じる瞬間はありますか?

Revol:ありますよ。僕は『LoL』に対する欲望はプレイと観戦が一体となっているので、競技シーンのシーズンが始まると観ているだけで満足して、あまりプレイしなくなるんです。ただeyesさんはシーズン中も個人配信でプレイしているので僕の基準からすると「とんでもないな!」って思います(笑)

eyes:え?観ていてたらやりたくなるでしょ?

Revol:僕は満足しちゃうので。

eyes:いやいや、Fakerのアジールを見るとアジール使いたくなるでしょ。ARAMで引けないかな~って!

Revol:なんない(笑)

eyes:なんないんだ(笑)

Revol:特に数年前は観なければいけない試合も多いなかで、年間500試合以上もプレイしていましたよね。

eyes:やってたね。中国、韓国、アメリカとヨーロッパの試合を見て、ソロランクを何試合かプレイして寝る生活でした。

Revol:それでLJLのキャスターと振り返り配信もやって……。すごいですよね。

eyes:でも、僕もありますよ。LJLの実況解説をやった後に、Revolさんはキレるんですよ。「なんでこのチームはこうしないんだ!」「なんだこの構成は!」「こうしていれば勝ってるじゃないか!」って。

Revol:言っておきますけど、eyesさんもキレてますからね。

eyes:いやいや、同じ熱量でいなきゃいけないからですよ。試合が「こっちが上手かったな!」って気持ちよく見られた時は資料もルンルンで片付けて裏へ下がるんですけど、不服な試合だった時は毎回ヘッドセット外しながら「はぁ~」って溜息つくんですよ。そんな毎試合ごとに起伏が激しくなるか?って思いますよ。

Revol:不服な試合の時は、うっかり汚い言葉が出ないよう自分の中で戦っているので、終わった時に解放されて言っちゃうんですよね。

eyes:本番じゃないところでもそういうのが出るのは「好きなんだな~」と思いますね。

──それだけ観戦を愛し、ずっとLJLのキャスターを担当しているおふたりの目線から、今見ても楽しめる「LJL名試合」を教えていただきたいです。

Revol:昨年のSummerシーズン決勝はすごかったですね。同じく幕張メッセで行われた2017年Summerの決勝もすごかったですし……振り返ってみるとSummerの決勝は毎シーズン面白いですね。なかでも去年の試合は直近というのもあって印象が強いです。

eyes:それは試合の内容だけじゃなくて?

Revol:オフラインならではの演出なども含めてですね。生で観ると選手の緊張具合も分かりますし、試合後の選手インタビューも特別です。2016年にオフライン決勝でPaz選手(現Sengoku Gamingコーチ)がインタビューでファンへの感謝を述べていたのも、試合内容以上に印象に残っていますね。

eyes:試合の内容だと昨年のSummer Splitは面白かったですね。僕がめっちゃ印象に残っているのが2018年のSummer決勝で、それまで何度も決勝まで進みながら優勝を逃してきたDFMが悲願を果たすんですが、Ceros選手がviviD選手が引退するかもしれないシーズンだったという想いからインタビューで泣くんですよ。あの感情のなかったCeros選手が感情を取り戻したシーンは見てほしいかな。戦っているのも、今のLJLを見ていればある程度知っているメンバーですし。

──ありがとうございます。それでは最後に今『LoL』が好きな人、そしてこれから『LoL』を好きになる人も含めてコミュニティへのメッセージをお願いいたします!

eyes:これから新規で『LoL』を始める方は、k4senさんやたかやスペシャルさん、らいじんさん、あるいは他の皆さんでも身近な人から知っていくケースがすごく多いと思います。そんな中でどうにも僕は競技シーン畑の人間だと思われているようなんですが、あまり気にせず声をかけてほしいなと思っています。「声をかけてはいけない人だと思われてますよ」って最近言われるんですよね(笑)

──そのイメージは少し分かります。

eyes:思ってますよね!? 昔はコミュニティ大会の実況もやっていたようなタイプなので、フランクなお付き合いができたらなと思いますし、気楽に声をかけてほしいです。

あと、『LoL』というゲームは沼なんで。1回辞めても戻ってきてしまうので。「1回辞めてからが本番」という人も周りにたくさんいますので、まずは1回やってみて、辞めてみて。そこから戻った時にどれだけ“沼れる”かを期待しています。これからもよろしくお願いします!

──Revolさんもお願いします。

Revol:Riot Gamesのタイトルだと『VALORANT』のようなFPSや、これからリリースされる『2XKO』のような格闘ゲームの観戦って、ゲームを詳しく知らなくても楽しめますよね。でも『LoL』は知らないと楽しめないと思うので、一度で良いからプレイしてみてほしいです。一度プレイすれば、どのタイトル以上に観戦の深みがあって楽しめます。『LoL』の“観戦沼”に引き込むためにも一度はプレイしてほしいですね。

そこでやってみて合う合わないはあると思いますが、毎年秋に行われる世界大会の決勝戦は試合内容、演出、そこへ至るまでに培われていくストーリーも含めてeスポーツの中でも最高峰のものが楽しめるので、せめてそこだけ。年に1日だけはスケジュールを空けて観戦していただきたい!……というのが僕の願いでございます。これからもよろしくお願いします。

《ハル飯田》

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ハル飯田

1993年、大阪府生まれ。一旦は地元で公務員になったものの、ゲームが好きすぎて気付いたらフリーライターに。他メディアではeスポーツ選手や競技シーンの魅力を発信することに注力したり大会でキャスターを務めたりもするのだが、インサイド&ゲムスパではもっぱら好きなゲームについて語ることで安らかな気持ちになっている。

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