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「VoL」って何者?元自衛官、22歳で仏eスポーツ名門「Team Vitality」へ—「Champions 2025」最前線で果たす役割、国境を越えて活動する中で見える景色は

フランスの名門チーム「Team Vitality」で現地コーディネーターとして活動し、日本コミュニティとの架け橋となるVoL氏へインタビュー。「VALORANT Champions 2025」の最前線で彼が果たす役割、そして国境を越えて活動する中で見えた景色とは。その情熱の源泉に迫ります。

岡野 朔太郎

岡野 朔太郎

元航空自衛官から、22歳で海外のeスポーツチームへ。異色の経歴を持つ一人の若者が、日本のゲームコミュニティと世界をつなぐために奮闘しています。フランスの名門チーム「Team Vitality」で現地コーディネーターとして活動し、日本コミュニティとの架け橋となる山田光誠(VoL)氏です。小学生時代にFPSと出会い、競技プレイヤーを経て自衛隊に入隊。しかし、eスポーツへの情熱を再確認し、自らの手で道を切り開きました。世界最高峰の舞台「VALORANT Champions 2025」の最前線で彼が果たす役割、そして国境を越えて活動する中で見えた景色とは。その情熱の源泉に迫ります。

競技、自衛隊からeスポーツの世界へカムバック、異色の経歴の原点

——まずは自己紹介をお願いします。VoLさんって何者なんでしょう。

VoL:山田光誠(ハンドルネームVoL)22歳です!今はTeam Vitalityと日本コミュニティ・マーケットのサーチ、現地コーディネーターをしています。

僕の原点は、小学3年生の時に中古で買ったFPSです。中学時代、留学先のホストファミリーと国籍を超えてFPSでつながれた経験から、ゲームは“趣味以上”のものになりました。高校では競技プレイヤーも経験したほか、卒業後は一度航空自衛隊に入隊しましたが、「自分の時間を本当に投資したいのはどこか?」とずっと考えて、結果的に「やっぱりeスポーツだ」という答えに戻ってきたんです。そこからいくつかのeスポーツチームを経て、今に至ります。

そこで僕は、自分が幼少期から触れてきた日本のゲーミングコミュニティ、プレイヤーとして経験した競技シーン、そして裏方として見てきた運営やマネジメント、この3つを全部組み合わせて「自分にしかできない役割を作ろう」と決めました。日本のアツいコミュニティをもっと海外に届けたいし、海外の良い部分はそのまま日本に持ってきたい。その思いで直接海外チーム向けにそのチームに合わせた資料を作り、アプローチを始めたのが、今の活動につながっています。

「現地の熱を届ける」Champions最前線でのミッション

——すごい経歴ですね。今回のChampionsではどのようなお仕事を?

VoL:今回のChampionsでは、日本コミュニティに現地の熱を届けるための発信や調整、日本から来ていたファンのサポート、Riot Gamesとのやりとり、Vitalityのグッズのプロモーションなどを担当しました。

現場でしか見えない温度感を、日本にどうやって届けるかが自分の一番のミッションでした。ただの翻訳や代理ではなくて、「現場で見たものを日本人視点でどう伝えるか」が重要なんです。これは海外チームと日本コミュニティをつなぐ役割を担う上で、自分が常に意識している部分ですね。

そのほか、選手に「ちょっとカジュアルに日本のファンに一言お願い!」とセルフィーで映像を撮ってもらいました。これも現地にいた僕だからこそできたコンテンツかなと。見る人に「これは特別だ」と感じてもらえること、現場でしか作れない体験や空気をどう届けるか、そこに全力を注いでいます。

レスは爆速、決断も迅速。フランス名門チームのプロフェッショナルな仕事術

——Team Vitalityのメンバーはどんな人たちなんでしょうか?

VoL:本当に優しい人ばかりです。特にAustin(Head of Comms)とThomas(Head of VAL Marketing)にはお世話になりっぱなしで、頭が上がりません。レスは爆速だし、承認までのスピードも圧倒的に早い。曖昧な返答も一切ありません。普通なら大きな組織ほど意思決定に時間がかかると思いますが、Vitalityは真逆でした。オンオフの切り替えは徹底しているので、業務時間外は全く返事は来ませんけどね(笑)

僕自身「良い決断よりも、正しい決断よりも、まずは早い決断と強い決断」という考え方を持っているんですけど、Vitalityはまさにそれを体現しているチームでした。国籍もバックグラウンドも違う人が集まっているのに、組織としての動きは驚くほどスピーディー。マネージャーとしてめちゃくちゃ勉強になりました。

「ファンからファンへ」の交流、フランスで見たeスポーツ文化

——フランスと日本の価値観の違いなどはありましたか?

VoL:ファン文化の違いは興味深かったです。熱狂的な応援ももちろん肌で感じられたのですが、日本は「ファンから選手へ」が主流ですが、フランスは「ファンからファンへ」の交流が日本以上に多かったように感じました。例えば、PRXファンが手作りのキーホルダーやカードやグッズを配っていたり、SNSで呼びかけてたりと、ファン同士が横でつながるカルチャーが根付いているのは新鮮でした。

VoL:また、会場には8~13歳くらいの子どもたちも親御さんと一緒に来てたり、団体で来てるグループもいました。こういう世代が普通にeスポーツの現場に触れてるのを見ると、カルチャーとして根付いてきてるんだなって実感します。

あとアニメ人気はとんでもなかったですね。僕が現地に持って行ったアニメTシャツも「それどこで買ったの?」ってめっちゃ聞かれました(笑)

——最後にコミュニティへメッセージをお願いします。

VoL:今回Championsにフル参加できたのは、自分の力だけではなく、VitalityやRiot Games、そして多くの方のサポートがあったからこそです。本当に感謝しています。僕は学生時代は俗にいう“やんちゃな子ども”で、大人にたくさん迷惑もかけてきました。諦めることも多かったし、失敗やミスも山ほどしてきました。当時は周りの目ばかり気にして、流されるタイプだったと思います。

だからこそ、今こうして海外の大舞台で働けていることが、自分でも信じられないくらいなんです。今でも「自分なんかがここに居てもいいのかな?」って思う瞬間はあります。きっと、この業界に挑戦するのは僕が入った頃よりももっとハードルが高くなっていると思います。でも、それでも諦めずに夢を追い続けてほしいです。

過去は変えられないし、他人を変えることもできない。でも、未来は変えられるし、自分自身は必ず変われます。僕もそれを証明し続けたい。僕の海外挑戦はまだ始まったばかりです。これからもeスポーツを通して、一人でも多くの人の人生を変えられるように、全力で走り続けていきます。

——ありがとうございました!

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