
- League of Legends
- インタビュー
8月23日(土)24日(日)に京王アリーナTOKYOで開催される「VALORANT Challengers Japan 2025 Season Finals」に出場する3チーム(RIDDLE、FENNEL、NOEZ FOXX)が出揃いました。本稿では3チームのうちの1つ「FENNEL」GON選手、Eulerコーチの合同インタビューの様子をお届けします。
ローワーブラケットからの厳しい戦いを強いられるFENNELは、現状をどう捉え、王座奪還に向けて何を見据えているのか。「なにをすべきかはわかっている、限界への挑戦です」と語るEulerコーチと、「結果は練習の段階で決まっている」と冷静に語るIGLのGON選手。大成功を収めたロールチェンジの裏側や、チームに変化をもたらした「細部への意識」とは。二人の言葉から、勝利への渇望と確固たる自信を紐解きます。
――ここまでの振り返りと、オフラインに向けた意気込みをお願いします。
GON:ここまで長いようであっという間でした。「まだ1年経ってないんだ」みたいな。新しいチームとして1から組み立てる難しさもあり、「そういう考え方もあるのか」という新しい発見もあって、とても濃密だったなと感じますね。終わったわけじゃないんですけどね、まだ。
オフラインはローワーからスタートになってしまいましたが、「2日間、FENNELを見れる」というお得要素みたいなのもあります。ファンの方は1日目から感情移入をしてください。RIDDLEに対しドラマチックに勝っていくので、応援お願いします。
Euler:1からチームを作る難しさはめっちゃあり、僕とGONはその点においてとても頑張りました。自分たちが目指していたオフラインへの目標ってすごい高いと思っていましたが、ここまで来れているのはすごいなと。
もしアッパー決勝でRIDDLEに勝てていれば、85%くらいの確率でSeason Finalsを優勝できると考えていました。でも負けてしまい、今時点では、7マップの練度やNOEZに勝つことも含めると、優勝の確率は2、3割ほどだと思います。明日からの練習でこれをどこまで上げられるかが、限界への挑戦です。何をすべきかはわかっているので、頑張ります。
――Eulerコーチに質問です。チーム全体でSplit3で変わった部分はありますか?
Euler:元サッカー日本代表の岡田武史監督が「勝負の神は細部に宿る」と語っていたことがあります。これを意識し始めてからチームが変わりました。
『VALORANT』では、細かいピークや撃ち方、アビリティのこだわりでラウンドの勝敗がひっくり返ります。ゲーム以外でも、誰かの良いプレーを一言褒めるとか、日常生活の中のちょっとした声かけなど、“細部”を意識した結果、チームとしてだいぶ変わったと感じます。
――GON選手に質問です。今日の朝ごはんは何を食べましたか。
GON:今日の朝ごはん、実はまだ食べてなくて。「今日インタビュー」とマネージャーから連絡をもらって、もう急ピッチで、すごい速度で用意したので、朝ご飯まで調達できませんでした。僕のプランニングでは、この後タコスを食べに行くことになっているんで、今日の朝ご飯はタコスだと思います。
――GON選手はSplit3にてフィジカルの強さが目立ち、クラッチシーンも数多く見られました。ご自身も言及していた“パフォーマンスを出すコツ”について教えてください。
GON:Split3で変えた部分が2つあります。1つは試合に影響する可能性もあるのでまだ言えません。もう1つは、YouTubeで「朝ごはんチャンネル」を始めました。それから調子良く、僕の分析ではやっぱこれかなと思いますね。
Euler:僕もGONにとって良い方向に働いていると考えています。GONが練習に対して前向きになるようになって、GONの生活がちょっと変わったのも、真面目な話、良いと思います。
――この先、アセンションやPacificリーグを目指していくうえで、現在のFENNELが世界に通用する部分、足りてないと考える部分を教えてください。
Euler:FENNELとRIDDLEはPacificレベルの力があると思います。ですが本当にPacificのチームはどこも強いです。スクリムするたびに勝とうが負けようが「強いな」と感じます。
僕らの良い点は、勝率が高いマップにおけるみんなの“阿吽の呼吸感”です。特定の状況において「何したほうがいい」というのが、僕やGONが何も言わなくてもスムーズに動ける部分が他のチームと差をつけてると思います。足りてない部分は、7マップの中いくつかでその動きができていない所です。
少人数戦も足りてないと思います。RIDDLE戦ではyatsukaにうまいことやられてしまいました。勝つためにはミクロの面でもう少し“何か”が必要だと思います。Pacificの選手も、FENNEL vs RIDDLEに出場した10人の選手も、個人技は本当に強いです。少しの“何か”はパッションかもしれないし、ちょっとしたスキルのこだわりかもしれない。明確には分からないけど少人数戦を取るうえで“何か”が足りてないと感じています。
――Split3ではHals選手がフレックス寄りのロールになって、Aace選手を完全なデュエリストに置きました。ロール変更の狙いを教えてください。
GON:ロールスイッチし、Aaceが良いプレイヤーだとさらに気づかされましたね。
一番先頭のデュエリストは、しっかりとしたゲーム理解度が求められ、いろんなことを覚えなきゃいけない立ち位置にいます。役割を突然スイッチしたら、その部分が間に合わないのではと、ちょっと疑っていました。
でもAaceは、ロールスイッチ後もデュエリストをそつなくこなし、足りない部分はめちゃくちゃ努力して補っていました。元々めちゃくちゃ強いプレイヤーだと思っていましたが、デュエリストにがっつりハマっているのは、僕の中で良い驚きでしたね。
Halsについては、デュエリストだとHalsが最初に倒れてしまい、「俺のイメージしてる少人数戦ができねえよ」とHals本人からクレームが入っていました。サポートロールに変わったことで、Halsが残るようになって、少人数戦の勝率もちょっと上がったんじゃないかと思いますね。
Euler:変わるきっかけになったのは、Split2 オフラインでRIDDLEに負けた時に、Halsから「AaceとHalsのロールを変えたい」と言われたことです。
僕はGONと同様に懐疑的でしたが、もしHalsをデュエリストのまま続けた時、Hals自身にモヤモヤが残ってしまい、良い結果を招かないと思い試すことになりました。その結果はGONが話した通り、良いものでした。Aaceはデュエリストに最高のモチベーションを持っていて、理解すべきこと、学ぶべきことを全部やってきます。
また、ヨルが強力な今のメタも合っていますね。Aaceのドライ進行はPacificでも一番強いと思います。どんどんエリアを取り、相手がアビリティ返してきてもAaceは逃げられる、というところが良く噛み合ってます。
Halsについては、これまで上手いと思っていたCLZ以上に少人数戦が上手いと思います。例えば、サンセットでHalsが残り、誰かを蘇生して勝つとか、「ずるいな」と思うぐらい強い。
ブリーチのアビリティも上手で、「これはHalsだから勝ったな」みたいな場面も多いです。サポートロールはみんな嫌がると思いますが「いや俺が残ってクラッチするから」というマインドがHalsにはあります。
Hals、Aaceはとても能力が高い選手ですが、「自分のロールに対して前向きに取り組んでいる」んです。あの二人はどのロールでも、最終的にトップクラスになると思いますが、そのうえで“自分が前向きでいられるか”が大事です。それがロールスイッチによって、いい状態になってることに満足してます。
――オフラインで特に注目している、あるいは警戒している選手がいたら教えてください。
Euler:yatsukaですね。yatsukaがやばいです。yatsukaがマジでやばいです。強すぎます。みんなでどうにかしてyatsukaを倒します。本当にそれだけです。
――GON選手はいかがでしょうか。
GON:yatsuka選手ですね。メインステージ通じて「あれ、こいつ意外と強いな」と思うのはyatsuka選手だったんで本当に気をつけようと思います。
――FENNELにとってRIDDLEは因縁の相手です。オフライン初戦を勝ち上がれば対戦となりますが、相手のことや、自分たちについてなにかあればお聞かせいただければと思います。
Euler:上手く言語化できませんが、特定の1マップの練度に対して「RIDDLEに勝てるライン」、「多分接戦」、「足りないな」というのが、だいぶはっきり見えるようになってきました。その上で5人全員がいいパフォーマンスを出すことがとても大事です。
それを両立した時に「BO5で3本先に取る」ができると思うので、この1、2年で培っているその僕の中の感覚みたいなものを、上手く選手に落とし込んで、最高のパフォーマンスをオフラインで出せたらなと思います。
GON:練習の段階からRIDDLEを意識してやることが多く、「RIDDLEだったらもっとここはこだわってやるな」や、「ここを頑張ったら俺たちはRIDDLEより上に行けるぞ」と意識しています。IGLという面でも、「JoXJoはこういう風に味方を鼓舞してる」と参考にしています。
RIDDLE公式の動画で、JoXJoがMintyに「Mintyお前そのままじゃうんこだよ」とキレるキラーフレーズがありました。チーム内で共有しつつ、僕たちも「こういうマインドを持つことも大事」とリスペクトしています。仮想敵としてRIDDLEを意識し練習していました。
――ずばり勝てそうですか?
GON:“これからの練習次第”だなと思いますね。勝者側決勝でRIDDLEに負けたのは日々の練習がもうそのまま出ただけです。
この考え方はあんまり良くないかもしれませんが、僕は「当日めちゃくちゃ上振れて勝とう」という意識が、チームメイトの中で一番低いです。練習通りやって勝ちたいし、相手がこうしてきたら僕たちもこうするみたいな考えを持って試合しています。
昔から僕が言っている運命論は「結果は最初から決まってて、練習の段階にその結果は含まれてる」っていう考えなので、勝つか負けるかはもう本当にこれからの練習次第だなと思ってますね。
――チームや自身について、今シーズンを通じて成長した点を教えてください。
Euler:「チームを1からビルディングする」こと自体が大きな成長でした。アセンション優勝が目標ですが、まずはチームメイト含め「良いチーム」と思えるチームを作ることができました。
これまでCLZ、hiroronn、SyouTa、ミゾ(Xdll)などと出会ってチームを作りましたが、Johntaのもとで作っていました。今回は僕が先頭に立ってチームを作ったことが、一番成長した部分です。
GON:「こういう時はこうした方がいい」を積み重ねて、チーム単位で成長していますが、個人単位の成長は今年は見えにくかったです。
IGLとしての特定の状況での動き、といった積み重ねは増えたし、最近は自分自身のパフォーマンスも良いと感じています。でもなんか「いい感じだな」ぐらいで僕の中では止まってるので、はっきりとした成長が見たいなとは個人的に思います。
――言い方を変えると、もう到達点にいるっていうことですか?
GON:そう言ってしまうと、伸びしろがないみたいなことになっちゃうかなとか思うんで。まだまだ成長途中ですね、僕は。
――伸びしろはまだあると。
GON:伸びしろしかないですね、もう。
――GON選手に質問です。オフラインが決まって緊張はしてますか?
GON:緊張はしてないですね。
――もう慣れましたか?
GON:だいぶ慣れましたね。
――オフラインでのパフォーマンスや何かやりたいことは考えていますか?
GON:いやあ、マジでSplit3は、ないかな、もしかしたら。うーん。
――オフラインで注目してほしい選手はいますか?
GON:オフラインで注目してほしい選手は…僕ですね。
――オフラインでも“テクいプレイ”は見られますか?
GON:見れます!
「優勝の確率は2割、3割ほど」。現状を冷静に分析しつつも、「なにをすべきかはわかっている」と語ったEulerコーチ。勝利に必要だと語る、まだ見えぬ“何か”を掴み取るため、チームは「限界への挑戦」を続けます。FENNELは8月23日(土)のローワーファイナルで「NOEZ FOXX」と対戦します。Splitを通して成長を遂げた彼らが、大舞台で“足りていない何か”の答えを見つけ出し、頂点へと駆け上がることができるのか。その戦いぶりを、ぜひその目で見届けましょう。
<取材、執筆:佐藤颯哉/編集:岡野 朔太郎>