『LoL』のリードゲームデザイナーを務めるMatthew Leung-Harrison氏が、Xにて「プレイヤー行動とペナルティに対する哲学的アプローチ(philosophical approach)」についての考え方を公開しました。
これは新たに導入されたシステムに対する反響を受けてのもので、システムやデータの現状、そしてRiot Gamesがどのような姿勢・理念を持ってゲームプレイの健全化を目指しているかが紹介されています。
◆迷惑行為に対する4つのポイント
Matthew氏は投稿内で以下の4つのポイントに分け、プレイヤー行動に対する対処や考え方に言及。本稿ではその一部を抜粋・要約して紹介します。

◆ネガティブな行動のうちの“95%”にフォーカス
まず前提として、Riot Gamesは「単に悪い行動を罰すること」ではなく「良い行動を奨励し、改善を促すことで、活気あるリーグを育むこと」を究極の目的としています。
また、Matthew氏は妨害行為の95%は「普段は中立あるいはポジティブなプレイヤー」によるもので、たまたま溜まったフラストレーションを爆発させてしまったタイミングで起こるものであるとのデータを紹介。そうした状況では何気ないチャットですらも攻撃的な反論を誘発し、結果的に全面的な口論やAFK、インティングなどを引き起こしてしまうことに繋がる可能性もあります。
たとえゲーム中で暴言チャットをするプレイヤーが全体の1%であっても、17試合プレイするとチームに対する暴言に遭遇する可能性は50%を超えてしまい、報復や反論としてさらなる暴言に発展してしまうケースが多いことも事実。
そうした状況を踏まえ、普段は健全なプレイをしている95%のプレイヤーがネガティブな行動を取ってしまった際には軽いペナルティを与え、そうした間違いを繰り返さないよう導くことが全体としてネガティブな経験に遭遇する機会を減らす上で効果的であるとしています。また、こうした考えはルールに反した行動を続けるプレイヤーへの対処を軽視している訳ではないことも明言されています。
◆厳しい処罰
良い行動を促すためには(1回目から14日間のBANなど)厳しい処分を行うべきとも考えられますが、人々に正しい行動を促す上では「小規模でよくデザインされた、タイミングの良いナッジ(促し)」の方がはるかに効果的であることが研究によって明らかになっています。
『LoL』においても単純に罰則の内容を厳しくしただけでは違反者の発生率には大きな変化は見られておらず、適切なタイミングで具体的な行動内容に即したペナルティをできるだけ早く与えることが重要であると紹介。
また、ペナルティを受けたプレイヤーが再びそうした行為に及ぶ可能性は実際には10%以下と非常に低く、即時警告や軽微なペナルティ(1日間のアカウント停止など)が非常に効果的であることを示しています。
◆報告(通報)へのフィードバックと報酬
質の高い報告(通報)は『LoL』のシステムにとって大きなメリットとなる一方で、試合ごとに敵チームの全員をまとめて報告するような行為は単にその報告が無意味になるだけでなく、将来的な報告への信頼度の低下を招きます。
Matthew氏は「ここ数年、報告の効果が薄れていると感じる方もいらっしゃるかもしれません」としたうえで、この状況を変えようと努力していると明言。現在も報告が成功したプレイヤーにはLPの払い戻しやオートフィル(どこでもオプション)の免除といった特典が存在しますが、将来的にはさらに多くの特典を提供したいと考えていると明かし、今後も不適切な行為を放置せずに報告するよう呼びかけています。

報告に対して素早くフィードバックが送られるのも、システムが機能しているという信頼を築くために重要なポイント。現在もさらに迅速かつ正確なフィードバックが送られるよう取り組みは続けられており、悪質なプレイヤーがどのような手法でシステムによる検出を回避しているのかを把握し、継続的な調整に役立てられています。
また、システムに対する信頼関係においては「誤検知を起こさないこと」も非常に重要です。単にミスをしただけのゲームプレイがインティングと判定されるのは避けなければならない事象であり、もちろん膨大なゲームの中にはミスに見せかけた悪質行為も含まれてはいるものの、迅速かつ慎重に対処していく方針が示されています。
◆非常に悪質な行為について
繰り返し迷惑行為に及ぶ非常に悪質なプレイヤーも約0.1%と非常に少数ではあるものの存在しており、こうした人物の行為はエスカレートし、最終的に永久BANなど長期的なペナルティを受けています。
アンチチートツール「Riot Vanguard」の導入によって対策はされつつあるものの、永久BANはサブアカウントの使用かアカウントの売買・貸し借りによって回避されることがあり、これについてMatthew氏も「ペナルティを責任を負うことなく回避する行為を防ぐために積極的に調査している複雑な問題」であると述べています。
Matthew氏はシステム構築に携わっているチーム、そして忍耐強くプレイしていつもフィードバックを寄せてくれるプレイヤーへの感謝を述べ、『LoL』を最高のものにするために常に努力していくというメッセージで投稿を締めくくっています。
『LoL』における不正行為や迷惑行為に対する対策は直近の1年ほどの間にもさまざまな手法や改善が取り入れられており、2024年からはゲームプレイ時に「Riot Vanguard」の導入が必須に。
2024年11月には利敵行為などの可能性を示してロール変更やピックを強制する「人質行為」へのペナルティが明確化されており、2025年2月にはチャットやピンの使用可否と連動した名誉システムのリワークも実施。同4月の「25.09」パッチではトロール行為の検出・ペナルティシステムが強化されており、現在はスマーフ対策のための新スキル評価システムもテスト中であることが明かされています。
真面目に試合に取り組まない悪質な行為や攻撃的なチャットは『LoL』のプレイ体験を著しく損なうものであり、Riot Gamesも高い問題意識を持って本件に取り組み続けていることが今回のMatthew氏の投稿や一連のアップデートからも読み取れます。
だからと言って我慢ならない状況に遭遇した際の理不尽な気持ちを完全に抑えることは難しいですが、多くの事象が普段は健全なプレイヤーによる一時的な感情の爆発であることなどを理解しておくことで、少しは見方が変わるかもしれません。また、投稿で言及されているように報告の正確性も重要で、闇雲に通報項目にチェックを入れるのではなく、適切な報告が求められることは覚えておきたいポイントです。