まず伝えたいことがある。
それは、1話のタイトルが“Heavy Is the Crown”だということ。
そう、“Heavy Is the Crown(王冠とは重きもの)”。それは2024年11月9日(土)より公開される。「Arcane(アーケイン)」シーズン2自体にも当てはまる言葉だ。
2021年の11月に公開された『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)の完全新作アニメーション「Arcane」は、公開されるや否や世界中でとんでもないヒットを飛ばした。国内でも『LoL』とはまったく関わりのない分野の人ですら「『Arcane』ってアニメがすごいんだ!」と騒いでいたことは、いまだ記憶に新しいのではないだろうか。
そんな大ヒットを飛ばした前作は、まさしくシーズン2にとっての“重い王冠”に他ならない。待望の次回作は、果たして前作を越えられるのか――それが気にならない人はいないだろう。
しかし、筆者には断言できる。「『Arcane』シーズン2は、その王冠を被り続けるだけの傑作だった」と。本稿では、そんなシーズン2の1~6話を公開に先駆けて視聴できる機会を得られたので、そのレビューをお送りしていこう。無論、極力シーズン2のネタバレは避けるので、その点はご安心いただきたい。記事内の画像も、すべてYouTube上にて公開されているシーンからキャプチャしたものとなっている。
※シーズン1のネタバレは含まれます。また事前情報なしでシーズン2を視聴したいという方は、ご注意ください。
◆より複雑化する人間模様―ジンクスが残した爪痕
物語の舞台は進歩の都市ピルトーヴァーと、その地下都市であるゾウン。シーズン1のラストシーンより続く形で物語はスタートする。
……そう、あのラストシーンから。未来の希望へと繋がるはずだったあの会議をぶち壊した、ジンクスの凶行。それが何を引き起こしたのかをまざまざと視聴者に見せつけるところから、シーズン2の物語は始まるのである。
1話はピルトーヴァー側、2話はゾウン側を中心に、“なにがどう変わっていったのか”が描かれる。シーズン1のラストからもなんとなく察しがつくように、双方の権力階級にわりと尋常じゃない被害が出ているため、人間関係や勢力図はシーズン1からガラっと変化。とくにゾウンは……まあ実質的なトップであるシルコが倒れた以上は想像に難くないとは思うが、当然ながら権力争いがとんでもないことになっている。
その関係もあって、第2話ではいままでスポットライトの当たっていなかったゾウンのキャラクターたちへと光が当たることに。ゾウン特有の怪しさ満点なビジュアルをしたクセのある人物もいろいろと登場するので、ケミパンクのデザインが大好きな方は、とくに2話を楽しみにしておくといいだろう。
もちろん、「Arcane」の華であるバトルシーンもさらに進化。専用BGMとアクションが見事に調和し、戦闘中の言葉なき言葉――キャラクターの感情をより克明に描きだしている。
しかも、そんな戦闘シーンは1話からがっつり登場。「最初なんだしざっと状況説明だけして終わりでしょ?」なんてことは一切ないのでご安心を。とくに後半の15分は、「Arcane」シーズン1の興奮を再度呼び起こすかのような怒涛の展開が待ち受けている。
◆アンベッサ、セヴィカ、そしてハイマー。注目すべきはこの3人
さて、ここからは「シーズン2のこのキャラクターがアツい!」的な話をしよう。とは言っても、ケイトリンやヴァイ、ジンクス、ジェイスといった主要キャラクターたちが見逃せないのは当然なので、ここでは大きく取り上げない。……まあジンクスはジンクスで、“ゾウンのジャンヌ・ダルク”みたいな存在になっていたりするのだが、そのあたりは実際に見るタイミングまで楽しみにしていただこうと思う。
今回紹介するのは、それ以外のサブ寄りなキャラクターたち……アンベッサ、セヴィカ、ハイマーディンガー。この3人は物語の立ち位置としてかなりおもしろい場所にいる。どういう状況なのかもあわせて軽く紹介していこう。
ノクサスより来たる戦乱の母、アンベッサの政治力
「Arcane」シーズン1で、登場はしておきながらもこれといって目立った動きは見せなかったアンベッサ。シーズン2では、そんな彼女がついにピルトーヴァーの中枢へと潜りこむための本格的な動きを見せる。「やっぱあのノクサスで将軍やってるだけあるわな……」と、妙に納得してしまうような、アンベッサの辣腕に注目してほしい。
もちろん「こいつが関わるならノクサス側の話も進むのでは……?」なんて期待も裏切らない。劇中にはあの謎多きノクサスの一団が登場し、物語の展開にも深く関わってくることに。ユニバース関連の進展を待っているノクサス推しの方は、ぜひともアンベッサからは目を離さないように。
シルコ亡き後、腹心――セヴィカは何を思うか
ピルトーヴァーで気になるのがアンベッサなら、ゾウン代表はセヴィカだ。ずっと付き従っていたシルコがいなくなったいま、彼女がどのような行動を取るのか――。ここも序盤における大きな見どころのひとつとなっている。
そんなセヴィカが大暴れするのは2話の後半。ここのバトルシーンは「Arcane」内でも屈指の出来栄えになっているので、「ド派手なアクションを楽しみたい!」という方にもうってつけ。
セヴィカ自身、個人的にはかなり好きなキャラクターなので、シーズン2で改めてスポットライトが当たるのはうれしい限り。彼女の選択した道がどのようなものか、その目で確かめてみてほしい。
追放されたその後はいかに。ハイマーディンガー教授の活躍
シーズン2は、ハイマーディンガーがやたらとかわいい。
シーズン1ではアーケイン(ヘクスコア関係)の危険性を示唆したものの、その穏健な姿勢を疎んじられ「追放に1票!」されたかわいそうなお爺ちゃんだったハイマーディンガー。ただそんな彼がやたらとイキイキしているのがシーズン2である。
すでに公開されている映像では、エコーと一緒に潜入ミッションに挑む姿が描かれているが、そのシーンのハイマーディンガーはめちゃくちゃノリノリ。意味不明な暗号を急に作ってみたり、全然意味のないローリングをしてみたり……エコーも呆れるのもわかるぐらいのハイテンションである。
そんな姿を見ていると、もはやゾウンからも追放することに1票を投じたほうがいいんじゃないかと思ってしまうが……もちろん、ただのおもしろ科学お爺ちゃんとして登場するわけではない。シーズン2では、ハイマーディンガーがとある重要人物同士の出会いに関わってくるのである。「このふたりがついに……!」という非常にワクワクする展開に繋がるので、ハイマーディンガーの動向はぜひとも注意深く追っておいていただきたい。
あ、それと『LoL』におけるQスキル“H-28G革新砲”っぽいものも劇中にサラッと登場する。自分は見るだけで「ヒッ」と声を上げてしまうぐらいには『LoL』でトラウマを植え付けられた砲台だが、ハイマーディンガーファンの方々はそのあたりもお楽しみに。
良さは変えず、さらにおもしろく。「Arcane」の冠を被り続けるのにふさわしいシーズン2に
そんな革新砲の話もそうだが、「Arcane」は本編に関係ない部分で「あっ!」となる部分が非常に多い。「あのチャンピオンが!?」「これ、あのアイテムじゃない?」なんて描写は、今回筆者が見た1~6話の間だけでも20を優に超えていた。『LoL』プレイヤーに向けたファンサービス精神は、シーズンを越えてもまったく変わらない。それどころか、さらに増しているのではと思うばかりだ。
“前作でよかった部分は残しつつ、それでいてさらにおもしろく。”
これは理想的な続編である条件のひとつ。口で言うのは簡単だが、実際にそれを成すのは途方もなく難しい。1話のタイトルにもあるが、“Heavy Is the Crown(王冠とは重きもの)”。前作が良ければ良いほど、その名声が高まれば高まるほど――その王冠は、重みを増すのである。
だが、「Arcane」はそれをやってのけた。複雑な人間関係を描写しきり、好評だったバトルシーンはよりブラッシュアップ、『LoL』プレイヤーへのファンサービス的なイースターエッグも随所に散りばめ……無論感想は見た人によって異なるだろうが、あくまで筆者個人の感想として言うならば、間違いなくこのシーズン2は“理想的な続編”である。きっと完結の際には、あの日シーズン1の最終話を見た感動を、さらに超えるものを届けてくれるはずだ。
そんなシーズン2は2024年11月9日より配信開始。『ARCANE』シーズン1という偉大なる王冠。その重圧すらも跳ねのける最高のアニメーションを、その目でしかと確かめてみてほしい。