韓国・ソウルで行われた「VALORANT Champions 2024」は、中国・EDward Gaming(EDG)の優勝で幕を下ろしました。中国地域がひとつの地域「VCT China」として発足したその年における集大成となる大会で、これまで優勝はおろかトップ4へ手が届かなかったEDGが劇的な優勝を収めたのです。
◆まさに『VALORANT』の頂上決戦となった決勝
決勝戦を含む最後の3日間は韓国の大規模アリーナ「INSPIRE Arena」にて行われ、日本からはキャスターの岸大河さん、yukishiroさん、OooDaさんが現地から実況・解説をお届けしました。
決勝となったEDward Gaming vs. Team Hereticsでは、この試合のMVPにも選ばれたZmjjKK選手を筆頭にスーパープレイが連発。凄まじいキルだけでなく美しいセットプレイや徹底した連携など、『VALORANT』の頂点を決めるのにふさわしい戦いとなりました。
そんな中国チーム初という歴史的な勝利となった決勝戦を現地からお送りしたキャスターの御三方へ、試合終了直後にインタビューを実施。本稿では、その模様をお届けします。
◆過去最高の「Champions」だった
――まずは白熱のフルマップとなった決勝戦。現地から実況・解説をした感想を教えてください。
岸大河:最高の決勝戦だったと思います。2023年を更新してきました。
yukishiro:Championsとしては初の現地解説でした。とてつもない興奮がありましたね。二度と見られないんじゃないかと思うほどのスーパープレイの連続で、選手達の気迫を生で感じることができました。
OooDa:どのマップが最終マップになっても「過去最高のChampionsだ」と思えるほどでした。アビス(5thマップ)ではTeam Heretics(TH)の追い上げを止めたZmjjKKに、2020年のRoyal Never Give Upからのドラマを感じましたね。
――OooDaさんは海外での実況が初でした。実際に現地で実況してみていかがでしたか?
OooDa:ファンや選手だけでなく、制作する運営陣も含め、みんなの『VALORANT』への“愛”が、会場全体から伝わりました。本当に幸せでした。
yukishiro:でもOooDaさんのPick'Emは25ptです(笑)
OooDa:これお笑い的なインタビューでいいんですか?(笑)
――EDGが中国チームとして初の優勝を収めた要因はどこにあったと思いますか?
岸大河:昨年の今頃、VCT Chinaが発足するというニュースが出た時に、自分の配信で「中国チーム、来年優勝するかもね」と話していたのを改めて思い出しました。ただ、「1年じゃ無理だろう」や、Masters MadridやShanghaiをみて「あってもFPXじゃないか」と誰もが思ったんですね。そこを改革をしたのがEDGでした。
AfteRが抜け、Muggleを筆頭に元選手でIGLであるHaodongをコーチにおいて、よりマクロ・ミクロの視点が広がっていき、さらに「アグレッシブをもっと押して良い」というnobodyの考えや、新加入のS1Monの上手いKAY/Oがどんぴしゃでハマったことで、マクロ重視だったチームがミクロも強くなっていきました。そして改めて「中国リージョンの戦い方」に原点回帰し、いままでに見たことがない『VALORANT』になっていきました。
いろいろな戦い方がある『VALORANT』で、この形が正解なのかと言われれば違うかもしれません。しかし、決勝のトップ同士の戦いを見て、これがひとつの正解なんだなと思いました。
◆Gen.Gが世界全体のレベルを引き上げた
――では、決勝戦だけでなくこのChampions、ひいては2024年のVCTを振り返っての感想をお願いします。
岸大河:まず、Gen.Gが世界全体のレベルを引き上げてくれたと僕は思っています。キックオフのKarmine Corp(KC)やTH、Sentinels(SEN)、積み重ねていったFNATICなど、たくさんのチームがあるなかで、僕らが追いつけないほどどんどんレベルがあがっていって、実況・解説もひと苦労なほど、とても大変な一年でした。
その集大成であるChampionsでは、積み上げてきた結晶を互いにぶつけ合ってどちらが先に削れるのか、まさにしのぎを削る戦いで、僕らでも優勝予想が難しいほど素晴らしい大会でした。来年が楽しみです。
yukishiro:岸さんも仰る通り、キックオフではKCとTHが、これまでEMEAの強いチームを破って上がってきました。そこでは若手の活躍はもちろん、トリプルピークなどミクロ面のレベルアップがありました。MadridではGen.G、Sentinelsなどが綺麗なマクロのなかで緻密な連携を披露し、ここから全世界のレベルがめちゃくちゃにあがっていったんです。
そうすると、次はAmericasでSENがどんどん勝ちきるのが難しくなっていき、THも得意なサンセットで勝てなくなっていって、後半はBANするようになりました。今年は例年よりもゲームの成長スピードがむちゃくちゃあがっていきました。ある意味でこのレベルの向上は「全世界が協力していった結果」なのかなと思います。
OooDa:これまでは、「各地域にもっと特徴があったな」と思っています。お二人が話した通り、ミクロ面での「こうやったら勝てるよ」という最終目標のレベルが各リージョンで同じ場所に向かっていって、最終的な撃ち合い方はほぼ同じと言って良いほど拮抗しています。
そのなかで構成で差が出てくるのが面白いです。2コントローラーを活かして射線をきって有利を得たり、2イニシエーターで複数のフラッシュで戦うチームがいたりと、どの試合も見たことないレベルでした。今日の決勝では、2チームとも100%を超える完全体になっていたんで、今後これ以上(の試合)はないんじゃないかと思ったほどです。来年が楽しみですね。
――2025年、VCTはどのようになっていくと考えますか?
岸大河:難しい質問ですが、これまで見られなかった不規則なエージェント構成が出てくるのかなと、なんとなく思っています。まだ触れていないのでどんなキャラなのかわかりませんが、今回発表されたヴァイスなど、エージェントが増えてきてさまざまな選択肢がとれる環境になってきています。
今大会では3コントローラー、2センチネルや0センチネルなどもみられました。これからはもっと幅広い構成が登場して、もっと対策が難しくなっていって、相手によって2イニシエーター、2コントローラーなど、幅広い構成の変化も求められます。すると、今デュエリストの選手には幅広いエージェントプールが必要になってくるかもしれません。もっと『VALORANT』の世界が広がるのかなと期待しています。
今度は各リージョンがChinaを潰しにかかってくるのも楽しみです。それと……日本、頑張ってね!Champions行こう!