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2021年の結成以来、国内外から注目を浴びるシニアeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」。その運営を支えるのは、秋田に拠点を置くIT企業・株式会社エスツーです。
本稿では、運営担当の土門悠氏へのインタビューをお届けします。『VALORANT』へ移行したきっかけや、「シニアだから」というマイナスイメージを逆手に取った戦略。そして話題先行の「広告塔」ではなく、一つの独立した競技チームとして自立させるための再定義とは。IT企業の視点から語られる、新しいシニア文化の創出に向けた熱き舞台裏を紐解きます。

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――改めて、IT企業である御社がなぜ「シニアeスポーツチーム」を立ち上げたのでしょうか?
土門: 私たちの根底にあるのは「ITの力で地域課題を解決したい」という想いです。秋田県は少子高齢化のトップランナーであり、人口減少が進んでいます。一般的にネガティブに捉えられる「高齢者の多さ」を逆手に取り、「高齢者が元気で活躍している姿」を見せることが地域活性化の鍵になると考えました。そこで、若者文化の象徴である「eスポーツ」と、秋田の伝統的な狩猟文化「マタギ」を掛け合わせ、「マタギスナイパーズ」が誕生しました。
――設立当初から話題性は抜群でした。しかし、途中で方針を大きく転換されたそうですね。
土門: はい。私が運営にフルコミットし始めた2023年秋頃、チームの方向性を「福祉寄り」から「競技志向」へと大きく振り切りました。
これまでの「高齢者×eスポーツ」の事例は、認知症予防や健康増進を目的としたリズムゲームやパズルゲームなどが主流でした。もちろん素晴らしい取り組みですが、私たちが目指すのはあくまで「プロスポーツ選手」としての姿です。
「シニアだから」と特別扱いされるのではなく、勝ちにこだわり、カッコよくあること。それが下の世代にとっての希望や憧れになります。だからこそ、デザインを含めたリブランディングを行い、選手たちにも「本気で勝つこと」を求めました。
――秋田県警のポスターなど、ビジュアル面での「カッコよさ」も印象的です。
土門: あれは「選手をカッコよく見せる」という戦略の一環です。シニアを一人のプレイヤーとして尊重し、そのカッコよさを突き詰めて発信したことが、コミュニティからの支持に繋がっているのだと思います。
――設立当初は別のFPSタイトルをプレイされていました。現在の『VALORANT』に至るまでにどのような経緯があったのですか?
土門: 最初は「孫にも一目置かれる存在になろう」のスローガンを強く意識し、小中学生に人気のあるバトルロイヤルゲームを選定しました。しかし、当時の同タイトルには参入できる競技シーンが少なかったんです。
その後さらに別のタイトルを経て、『VALORANT』への移行を決断しました。きっかけは、プロチーム「ZETA DIVISION」の世界大会での躍進(2022年)です。国内の熱狂を見て「自分たちもこれをやろう」と。

――『VALORANT』は非常に難易度が高いゲームですが、勝算はあったのでしょうか。
土門: 3人制バトロワ形式に比べ、5人1組で戦う『VALORANT』は、より高度な戦術や連携が求められます。
年齢によるフィジカル(反射神経など)の衰えは避けられませんが、5人の連携やカバー、戦術理解度でそれを補える可能性が高いと考えたのです。実際に選手たちは日々、若者に負けない熱量で戦術を磨いています。
――eスポーツチームの収益化は業界全体の課題です。運営としてどのようなビジョンをお持ちですか?
土門: 事業として継続性がなければ意味がありません。単なる「話題作り」や「赤字の広告塔」で終わらせず、黒字化を目指しています。
現在のeスポーツシーンは、ストリーマー個人の人気に依存しがちで、選手の移籍や引退とともにファンが離れてしまうリスクがあります。野球のように、チームそのものを応援する「箱推し」の文化はまだ定着しきっていません。
だからこそ我々は、「マタギスナイパーズ」というチーム自体のファンを増やしたい。「このチームの活動を応援したい」と思ってもらえるようなコミュニティ作りや、ファンクラブ、グッズ展開などを通じて、スポンサー収入だけに頼らない多角的なマネタイズを模索しています。

――最後に、今後の野望をお聞かせください。
土門: もちろん「大会での1勝」は直近の目標ですが、視座を高く持てば「シニアeスポーツシーンのトップランナー」であり続けたいと考えています。
今後、ゲームに親しんだ世代が高齢化し、シニアのeスポーツ人口は確実に増えていきます。シニアだけの大会やリーグが発足する日も遠くないでしょう。
そうした新しい市場や文化が生まれた時、常にその先頭に立っていたい。「ゲーム×高齢者」が社会課題の解決策となり、生きがいの創出に繋がる。マタギスナイパーズの活動を通して、そんな未来を証明していきたいですね。
――ありがとうございました!

■マタギスナイパーズ
公式サイト:https://matagi-snps.com/
公式X:https://x.com/matagisnipers
公式Twitch:https://www.twitch.tv/matagisnipers?lang=ja
<執筆:岡野朔太郎/撮影:松田和真>