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秋田県を拠点に活動する日本初のシニアプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」。平均年齢60歳を超え、かつて「インベーダーゲーム」に熱狂した世代の彼らが今、『VALORANT』の戦場に立っています。
今回、創設時メンバーのmark25さん、2期生のCaitSithさん、ひろBooさんの3名にインタビューを実施。3D酔いとの戦いや、未知のツールへの困惑、そして退職金を投じて揃えたゲーミング環境など、シニア世代ならではの等身大の挑戦と、ゲームを通じて見つけた新たな人生について詳しくお話を伺いました。
――まずは自己紹介をお願いします。
mark25: mark25(マーク25)と言います。マタギスナイパーズ設立当初からの初期メンバーで、今年で丸4年が過ぎました。一番の古株なんですが、全然腕が達者でないところが問題でして(笑)。今のランクはアイアン3です。一番高かった時はブロンズ3まで行きました。1年半くらい前かなあ……あれは幻ですね(笑)

CaitSith: CaitSith(ケットシー)です。2期生として、1期生の方々の1年後に入りました。活動歴は3年になりますが、やっぱり腕が全然伴わなくて……ランクがドドドっと落ちて泣いています。私も一瞬ブロンズ2まで行ったんですけど、あっという間に落ちました。

ひろBoo: ひろBooです。私も2期生です。ランクは今ブロンズ1で、最高到達点もブロンズ2ですね。

――では改めて、マタギスナイパーズに応募した経緯を教えていただけますか?
mark25: 私は60歳になる手前で定年退職しまして、仕事以外の好きなことをやろうと思っていたんです。そしたら女房が「高齢者を集めてゲームをやるチームを作るらしいよ。あんたパソコン好きだからいいんじゃない?」と見つけてきまして。それですぐ応募し、採用していただいたという経緯です。
もともとゲームはやったことがなくて、インベーダーゲーム世代ですから(笑)ただパソコンが好きで、自作パソコンをいじったり、ベンチマークソフトを回して数値を眺めて喜んでいたんです。
CaitSith: 私はmarkさんたちが活動を始めたのをローカルニュースで見たんです。「あ、やりたいな」と思ってXをフォローして、次の募集の時に速攻で応募しました。
入れてもらえたんですが、思ったより「修行」でしたね(笑)もっとまったりやれるかなと思ったら、練習時間が結構あって。「えーっ!?」みたいな。だんだん家事が手抜きになってます(笑)
ひろBoo: 私はインベーダーゲームやファミコンなど、もともとゲームが好きで、主にRPGをプレイしていました。仕事をしている最中、63歳の時に1期生の募集を知ったんですが、「仕事してるしな……」と諦めたんです。その翌年に退職して、65歳になった時に「どうしようかな」と思っていたら「65歳以上」という条件で募集があったんです。「これだ!」と思って応募しました。
FPSはまったりできるかと思ったら全然そんなことなくて。練習が厳しくて「あれ?」みたいな感じでしたね(笑)

――皆さん、『VALORANT』の経験は全くなかったんですよね?
mark25: そうです。実は活動開始当初、1期生は別のゲームから入ったんです。半年くらい経った頃に「今はRiot Gamesのこのゲーム(VALORANT)が一番人気があるからやってみましょう」ということになりました。それが2022年の5月頃かな。
――初めてプレイしてみて、どんな印象を持ちましたか?
mark25: 最初は「ただのシューティングかな」と思っていたんですが、やってみるとマップの名称が違う、武器がいっぱいある、買い方が違う。「毎回同じ金持ってないじゃん! 負けると金ないの!?」って(笑)もうチンプンカンプンでした。
――なかなか続けるのが厳しいこともあると思います。
mark25: そうですね。ただ、ランク(コンペティティブモード)の登場が大きかった。イモータルなど、トップのレベルの高さが半端ないじゃないですか。「あそこまでなんとか行けないものか」と思える奥の深さですね。未だに下から3番目くらいをプラプラしてるんですけど、まだ体も五体満足で動くので、「年寄りだからやってない」じゃなくて「じゃあやってやろうじゃないか」という感覚です。

ひろBoo: 私たちが2期生として入ったとき、既に先輩たちが『VALORANT』をプレイしていたので、教え込まれました。「1期生すげえな」って思いましたね。
あと当時は「3D酔い」が結構あって。月に1回ミーティングがあるんですが、その時に「3D酔いには車酔いの薬が効くよ」と話題になり(笑)
mark25: 1期生は最初ほとんど全員飲んでましたよ。「トラベルミン飲んでみよう」と(笑)今はもう慣れましたけど、3ヶ月くらいは薬飲んでやってました(笑)

――ゲーム以外の部分、例えばDiscordなどのツールを使うのは大変でしたか?
ひろBoo: お互い本名も、前の職業も知らない。お家も知らなくて、連絡先も知らないから。Discordでしか連絡取らないんです。
mark25: 連絡取れない。じゃあ電話教えてってこともないしね。
ひろBoo: だから他のわだかまりっていうか、なにかしがらみみたいなのがない。オフ会もないし、やってないですよ。でも集まるならここ(Discord)って感じ。基本ここだけ。
「さあ、どっかで集まるか」つって「じゃあ会社に行ってじゃちょっと話しようか」じゃなく、「じゃあディスコで金曜日の何時とか」。気が楽ですよね。

mark25: でも、Discordは最初全然わかんなかったです。やったことなかったですから。やってるのはドコモのショートメールぐらいで。LINEも俺はあんまり好きじゃなくてやってなかったんですよ。
で、ここに来て「じゃあディスコでやりますから」って言われた時には「あ?」つって。「え、何のこと言ってるんですか? ゲームでやってるんだから、ゲームで繋がってるんじゃないですか?」って言ったら、「いや、そうじゃなくてDiscordで」って。その仕組みがわからなくて……。
――(笑)
mark25: まずはそれを1から教えてもらったんです。使い方も、繋げ方も。たまにエキシビションマッチとかで「じゃあDiscordのどこに入ってください」「カスタムのコード入れてください」とか言われますが、全部が初体験でした。
本当に何も知らない人に0から教えるというのは本当に大変だと思うんで、監督も根気があると思います。「こっちだべ、こっちだべ」と探した挙句、そのうち間違ったりするし、とんでもないとこに入ったりする。だから「勝手なことしないでください」とか言われました(笑)でも今はもうすんなり使えてますよ、毎日やってるので慣れましたね。

――年を重ねていくと新しいことにチャレンジすることが億劫になりますが、すごいですね。
mark25: マタギスナイパーズは日本初のシニアeスポーツチームなんですけど、「最初」って、この年になるとあんまないから。「最初にできるんだ!」って思って入ったところはありますね。
ひろBoo: ね。誰もやってないってね。若い人はみんないっぱいゲームやってるじゃないですか。でもこの年代で誰もやってないし、「新しいチーム作る」っていうのは、「ええ、これ面白いじゃん」と思ったんですよね。
mark25: だからそれに怖じ気することなく「おう、やろうやろうやっちゃえ」っていう。バカだよね本当に(笑)でも、こういうバカがいないと多分どこも進まないんだなと思う。新しいことをやる人はみんな批判も受けるけどね。
――ゲーム内ボイスチャット(VC)について伺います。若い人にはVCで喋りたくない人もいますが、抵抗はなかったんですか?
mark25: 最初は全く喋れませんでした。俺本当は無口で……。
CaitSith: 絶対嘘だ。宴会部長でしょ。
mark25: (笑)始めてから1年くらいは「味方に情報を報告してください」と監督に言われるくらいでした。いまはもうできるようになりましたけどね。最初は撃たれたら「わああ!」となってたんですよ。だんだんとキャラクターやマップの細かい部分を覚えていって、しゃべれるようになっていきましたね。
――始めたてのころは、何か言われたりしましたか?
mark25: 「モクの出し方しらねえのか!」と言われて「すいません…」と返すと「すいませんしか言えねえのか!」みたいなこともありました(笑)
あとは、こっちは一生懸命報告してるつもりでも、喋りすぎて「うるさい!」って言われたり(笑)監督からも「短く、端的に」って言われてるのにたくさん喋ってたら、味方からチャットでこっそり「うるさい」って(笑)

――やっぱり暴言を言われると「むっ」となりますか?
mark25: うん。むっとなる。でも仕方ないね、言う人はいるしね。何百万人もやってるとすれば、それでも1人2人しかいねえんだと思うしね。
監督なんか最初は「気にすんな」って言ったけども、やっぱり落ち込むんだ。落ち込むね。「定点(爆弾やスキルの位置)の出し方知らない」とか、「定点勉強してからランクに来てください」とか、「アンレート行け」とか。
で、理不尽な言われ方すると、ちょっとね、飲んでる(我慢している)ところも正直あります。でも「マタギスナイパーズ」という有名ではないにしても(看板のある)場所ですから。もし(個人)であれば、「バカ野郎てめえ!」って、「1回面(ツラ)貸せ、どこで言ってんだよお前よ」って、「誰に向かって言ってるおめよ!」と秋田弁でね、バーって言ったと思うけど(笑)
――(笑)
mark25: 「会社」という看板背負ってる以上言えないじゃないですか。これはもう社会の仕組みと同じで、会社の名前背負ってると、あれやこれや言えない。グッとこらえる。
だけどね、あらかた大方の人はみんなそんなバカなことは言わないですよ。いい人いっぱいいるよね。失敗しても「ナイストライ」とか「どんまい」って言ってくれる人もいるしね。「大丈夫、大丈夫。頑張りましょう」っていう人の方が多いので。本当。いっぱいやってきたらこそ、そういう人の方が多いってのが分かってきました。
mark25: まあやっぱり一般社会と同じで、そんなにおかしい人はいるけど、どうしてもいるけど、いい人はね、感謝するんで。

――改めてVALORANTの楽しさや魅力ってどんなところだと感じますか?
mark25: 「これやると絶対勝つ」が一切ないところですね。例えばアイソの壁(コンティンジェンシー)ひとつとっても「どう出すか」で変わってくるじゃないですか。だから悩むんです。
CaitSith: あれ銃も弾が通らないだけで、レイズにグレ(ペイント弾)投げられたら終わりだよね。
ひろBoo: そう。状況や相手によっても変わるし、やはり“正解がない”のが面白いですよね。でもチームで動いて、それがうまくハマった時がすごく楽しいです。なんとなくチームワークが芽生えてきて、阿吽の呼吸で動けるようになるとすごく嬉しいです。
mark25: だいたいみんなその状況によってなにをすればいいかわかってきたよね。サイトに入るならここにリコンを撃とう、スモークを炊こう、位置変えるときも少ないコミュニケーションでできるようになってきました。
ひろBoo: でもいろんな相手と試合していると、さらにそれ以上のもの(セット)が来るんですよ(笑)。上には上があるんですね。速さ、正確さ、正しいタイミングなど、もっと上手くなりたいです。
――ご家族の反応はいかがですか?
ひろBoo: 息子の奥さんが配信をみてくれたり、姪から親戚づてに「エイム良かったよ」って言ってもらえたりしています。思ってもみなかったところからそんな反響がありますね。
CaitSith: 少子化をリアルでやっているので孫はいないんですが……。でも主人は送り迎えをしてくれています。
――旦那さんからの応援もあると。
CaitSith: 駐車料金が高くなるので……。
――あ、切実な理由。
CaitSith: でも好きなことを好きにやっている分には、応援してくれていますね。晩ご飯を作らなくなったりしたらクレームもつくかも(笑)

mark25: 息子が今たまたま転勤で秋田にいるんですが、私がプレイするのを「ほぉ~~~~親父それ撃てるんだ」と腕組んで見ていたりします(笑)尊敬を得てるかは別にして……親父はゲームやって静かにしてるのが一番いいってことかもしれません(笑)嫁は配信をみてくれて「あの言葉はダメだな」とダメ出しをもらいます。
――同世代の人にゲームを勧めたりとかはありますか?
mark25: 勧めてみたけど、やっぱり昔からパソコンに慣れてる人じゃないとなかなかできないですね。あと同世代には、笑ってる連中もいると思うんです。「ああ、ゲームやって遊んでる。今さらゲームとかって柄じゃねえんだってよ」って。
年をとっても、「働けるうちは働く」とかっていうのが、なんか社会的にこうずっと言われてるじゃないですか。それを「ゲームしてる」って言うとね、やっぱ遊んでるってイメージ。
でも、お金を稼がなくても、このコミュニティを基礎にしてまた広がっていく。次に60代の人が70代になってきた時に、あるいは50代の人が60代になった時に、ここのエリアがもう少し広がるようになってるんだと。そのためになら、俺たちがやってもいいよなって気がするね。
――マタギスナイパーズは注目度がとても高く、秋田県警ともコラボされてましたよね?
mark25: 特殊詐欺とサイバー犯罪の防止ポスターですね。ポスターを見た友人からは「お前どうしちまったんだ」と言われました(笑)この歳になってテレビに出たりインタビュー受けたりなんて、普通ないですからね。本当にありがたいです。
――マレーシアのチームと戦っていた試合もありましたね。
※マレーシアの「Old Guards」と「マタギスナイパーズ」対戦し、マップスコア2-1でマタギスナイパーズが勝利した
CaitSith: お相手のチームからSNSのDMでお声がけいただきました。マレーシア戦の後は、英語でチャットを書き込んでくる人が増えましたね。
mark25: あの試合のロータス、最初は負け越していて、もうみんなやめたいと思うほどでしたよ(笑)最終的にマップは負けてしまいましたが、オーバータイム一歩手前まで粘ることができて、やめなくて良かったです(笑)
CaitSith: 攻守交代すると流れ変わるからね。
mark25: そう。流れが変わるときがあるんだよ。人生でもね(笑)だから諦めたくないよね。

――みなさんご自宅に『VALORANT』ができる環境はそろえてらっしゃるんですか?
mark25: 今では所属する11人全員が揃えてますね。最初は「ゲーミングパソコン」というのも知らなかったし、「でーぴーあい?(DPI)」「マウスパッド?100均のじゃダメなの?」という感じでした。ここに来てプレイしてるだけじゃ上手くならないなと思ってみんな徐々に揃えていきましたね。
ひろBoo: 二期生は元々ゲームやってる人もいました。私はマタギスナイパーズに入るにあたって退職金で一気に揃えました。嫁に内緒で(笑)
――普段はどのようなスケジュールで練習されているんですか?
ひろBoo: トップチームは平日の13時~17時まで、アカデミーはまだ働いている方もいるので夜にオンラインで授業という形で集まっています。でも授業以外の時間でもプレイしないと上手くならないので、午前中に自主練しています。
――年長者の皆さんは、ゲーム内で「年の功」が生きているなと感じることはありますか?私はひとり残されたときなどとても緊張してしまうんですが…。
CaitSith: 私も同じです(笑)それで必死に進んでも壁があって入れなかったり(笑)
mark25: 急いで行くとろくなことがないよね(笑)クリアリングが甘くなったり(笑)
――みなさん同じなんですね。

――最後に、来年の目標を教えてください。
mark25: 年末年始は『VALORANT』です。まずは年末の大掃除でパソコン周りを綺麗にすること(笑)
真面目な目標は、対外試合で1勝したいです。あとは個人的には、なんとかランクをゴールドまで上げたい。ゴールドの山を越えたいというのが直近の目標です。
動画見てると、上手い人は視点が全然違うんですよね。私なんか地面ばっかり見て歩いてるから(笑)ヘッドライン(敵の頭の高さ)に合わせるのが大事だって言われるんですけど、段差があると一気に難しくなりますよね。

CaitSith: 私も同じですね。なんとかランクを上げたいなとは思うんですけど、なかなか一人では……度胸もいりますし、報告とかもやりづらくて。
でも、ゲームの理解をもっと深めて、いちいち聞かなくても自分で推測して動けるようになりたいです。「今頃言うなよ」って感じですが、基本をきっちりできるようになりたいです。

ひろBoo: 私はシルバーには絶対行きたいなと思ってます。あとは試合全体の動き、試合運びを勉強したいなと思ってます。
そして、マタギスナイパーズとしての大きな目標はVCTに出場することです。
mark25: まずはChallengers Japanの出場ラインまでは行きたいですよね。
ひろBoo: そのときには我々がいるかはわかりませんが、その礎になりたいですね。
mark25: 囲碁や将棋、麻雀と変わらないですよね。秋田の冬は外で運動もしにくいですから、屋内で世界とつながりつつ24時間365日できる、こんなに良いことはないですよね。雑談もできるし、楽しいことだらけかな。負けることは別にして(笑)
――ありがとうございました!応援しています!

■マタギスナイパーズ
公式サイト:https://matagi-snps.com/
公式X:https://x.com/matagisnipers
公式Twitch:https://www.twitch.tv/matagisnipers?lang=ja
<執筆:岡野朔太郎/撮影:松田和真>