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『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)がリリースされてからはや15年。「しゃるる杯」や「League The k4sen(LTK)」で『LoL』を知った方の中には、昔から活躍する『LoL』プレイヤーたちの歩みをご存知ない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回、『LoL』最初期からプレイし、「League of Legends Japan League(LJL)」の発足当初からプロ選手として参加、「LJL」優勝経験や国際大会への出場経験も持つRainbrainさんをお呼びし、インタビューを実施。
『LoL』が持つ魅力やコミュニティの変遷、『LoL』シーンの移り変わりなどを深掘りします。

――初めて『LoL』に触れたきっかけはなんだったのでしょう。
Rainbrain:すごく月並みな理由なんですが、友達に誘われて。当時もMOBA系のゲームを触っていたのですが、「似たようなゲームでこんなのがあるよ」と『LoL』をすすめてもらって。そこからですね、始めたのは。
――となると、時期としてはいつごろになるんでしょうか。
Rainbrain:シーズン1かシーズン2あたりでしょうね。細かいところとかは忘れましたが...。
現在でこそ主流ですが、当時はまだBOTにふたり、TOPにひとり、JGがいて……みたいなこともまったく定まってなくて。「チャンピオン選んだらとりあえずどっかに行け!」みたいな(笑)
――いわゆるEUスタイルが確立される前ですよね。自分はシーズン5からなので想像もつかないです。
Rainbrain:混沌としたゲームでしたねえ、当時は。
――その後プロシーンに参入されるわけですが、Rainbrainさんがプロを始めた頃ってどういう感じだったんでしょう。
Rainbrain:プロシーンとしては“起こり”の時期でした。当時はチーム活動なんかもまばらで、仲いいやつ5人がチームを作るようなところがスタートでした。で、コミュニティ大会に参加して、そこでいい成績を上げていたら企業の方からお声がかかる……みたいな。
最初は友達同士の集まりだったんですけど、だんだん話が大きくなっていったんですよね。いろいろなチームにスポンサーがつくようになって、プロっぽくなっていったといいますか。
――なるほど。個人的にRainbrainさんはRascal Jester(RJ)のイメージが強いのですが、最初に所属していたのはどのチームだったんでしょうか。
Rainbrain:Rampage(RPG)ですね。
――何度もLJLでDetonatioN FocusMe(DFM)と王座を奪い合っていた、“古豪”ですね。
Rainbrain:もっとさかのぼると、最初は友人と「この人強いじゃん」となった人とで組んだ“Pentagram”というチーム名で活動していたんです。ただ、やっていくうちにDetonatioNさんとかがしっかりとプロチームとしての形を作っていったのを見て、僕らも「もっとチームっぽくしていこう」となり、Rampageが生まれたという感じですね。
――創設メンバーだったと。
Rainbrain:そうです。その後Rascal Jesterになり、DetonatioN RF(RabbitFive)になり……。RabbitFive時代には日本代表として、All-Starイベント(International Wildcard All-Star Melbourne 2015)にも出場しました。

――All-StarにはCerosさんやEviさんとも出場していましたよね。選手時代の思い出とか印象深い出来事ってありますか?
Rainbrain:それでいうと、CROOZさんがスポンサーに入っていたCROOZ Rascal Jester(CRJ)時代はいろいろありましたね。CROOZさんの会社で働きながら、社会人とプロゲーマーを両立していた時期でもありますし、当時はチームメンバーといっしょにゲーミングハウスにも入ってましたから。
――共同生活を送るうえで、とくにトラブルとかもなかったんでしょうか。
Rainbrain:あー……それで言うと、お風呂の温度が熱い問題とかはありました(笑)。僕は熱いお湯が好きなのでシャワーの温度をかなり上げていたせいで、その後に入ったやつに「おいふざけんな! あちいよ!」って怒られちゃって。
――(笑)。絶妙に微笑ましいエピソードですね。ちなみに誰が怒ったんでしょう。
Rainbrain:たしかapa(※apaMENさん)だったかな。ほかにもADCだったRkpが、炊飯器でお米を炊くときに、なにを失敗したのかお餅みたいな謎の物体を作っちゃって……。「お米炊くの下手なヤツいるの?」ってみんなで笑ってたこともありましたね(笑)

――いまでこそゲーミングハウスにシェフがいたりしますけど、当時ってそんなことないですもんね。あの時代特有のおもしろトラブルというか。
Rainbrain:当時といまとでは、全然環境もちがいますしね。あのときは全員が、なにをどうすればいいかすらわかっていなかったような感じもありましたし。
いまは本当に、しっかりと整備されていますよね。キャリアとか、どうやってプロになるのかとか、そういったことを周囲の方がよく考えてくれるようになったと言いますか。
――個々人にスポットライトが当たる機会も多くなりましたしね。その後、Rainbrainさんは2015年を持ってプロゲーマーを引退されるわけですが……これについては、当時どういう心境でご決断されたのでしょうか。
Rainbrain:「海外から来る選手たちとの戦いにはついていけないだろう」と感じたのが大きいです。実は『LoL』よりも前に“下級兵士”という名前でとあるゲームの日本代表になったことがあるんですよ。そのときに韓国の選手と戦ったんですが、やはり強くて……。土壌が違うというか、eスポーツが盛んな土地との違いをすごく感じたんですね。
で、2015年あたりから「LJLにも韓国人選手を入れよう」という流れが強くなってきて、「同じステージでは戦えないだろうな」と。それに、自分のことをあまり有能だとは思っていませんでしたから。タイミングよく、たまたまそのポジションにいたというだけで。
――差し出がましいご意見かもしれませんが、個人的には恐ろしいスティール率を誇る強力なJGだという認識でしたが……。
Rainbrain:うーん。それも細かく言うなら、そもそも負けている前提の話なんですよね。スティールが発生するってことは、不利を背負っている状況なわけですし。
もちろん、そう言っていただけるのは大変名誉なことではあるんですが、「最初から勝てているならそのほうがいいだろうな」とは思っていました。
――なるほど……。

Rainbrain:年齢のこともありましたしね。当時27、8歳とかで、最年長クラスでしたから、この先のキャリアを考えてもこのタイミングかなと。
それに当時から配信には力を入れていましたし、こういった方向性で活動するのもアリだと思ったんです。自分がAll-Starに選ばれたのも、配信活動をしていた影響が大きかったんじゃないかな。
――たしかに、昔から積極的に配信をされていましたよね。RJ時代とか。
Rainbrain:なんというか、チームにはストリーマーが必要だと思っていたんですよ。
――なるほど。詳しく伺えますか?
Rainbrain:選手ってどうしても練習に時間を取られるので、露出の機会が少ないんですよ。大会のときにパッと出てきて、それで終わりになってしまう。それだと印象に残りにくいですし、応援のきっかけにもなりにくいじゃないですか。
なので、いわばタレントというか、選手以外にチームの“顔”みたいな存在が必要だと思っていたんです。チームがどういう状況でも、「あの人がいるからいっしょに応援しよう」となるような。
――今はどのチームにも所属ストリーマーさんがいらっしゃいますよね。やはり、プロの選手を応援するための窓口が必要だったと。
Rainbrain:そうですね。それこそ、RJでリザーバーだったころは、自分で配信して、その考えを実行していました。練習する姿を見せることで「こういうふうに頑張っているよ」というのを伝え、チームのファンを獲得していくような。
これは言ってしまえば、負けたときの保険にもなるんです。チームが勝てなくてもファンを獲得したり、維持したりする手段になる。勝敗とは別方向のアプローチができるんですよ。
――なるほど……そのときの行動がいまの活動にもつながっているわけですね。
Rainbrain:いまは無所属ですけどね(笑)。あと引退後のキャリアで言うと、じつはRevolさんとeyesさんにLJLの解説をやらないかと誘われたことがあったんです。
――そうだったんですか?
Rainbrain:はい。ただそのときは「どっちつかずになりそうなんで、ストリーマーでやります」とお断りしました。LJLで公式に解説をやる以上は時間の大半を勉強に割かなくちゃいけませんし、そうなるとストリーマーとしての活動がおろそかになる。それは良くないなと。
――大会で解説するところを何度か拝見していたので、LJLの解説席に立つ姿もちょっと見てみたかった気もします。あとRainbrainさんと言えば、20時間を超える長時間配信をなんなくこなしている印象があるのですが、これはいったい……?
Rainbrain:プロ時代に配信をやっていた名残ですね。当時は長い試合になることが多かったんですよ。BO5もBO3も、フルセットになるとものすごく体力を消耗するんです。そういう状況でも本来のパフォーマンスが出せるのがいちばん強いだろうと思っていたので、トレーニングの一環として長時間配信をやっていました。
あとは配信者としての色、自分の個性としてこういうのもありなんじゃないかなと。配信をするうえで自分なりのカラーを見つけようと思ったときに、パッと思いついたのがコンビニだったんで。
――コンビニ?
Rainbrain:いつ開いても(配信を)やってるってよくないですか?
――ああ、なるほど!
――Rainbrainさんから見て、『LoL』はどういう魅力のあるゲームだと思ってますか?
Rainbrain:5人でやったときはとんでもなくおもしろいですよね。とくに仲のいい友達とかと組むと、本当に。ここまでの一体感が味わえるゲームって、ほかに無いんですよ。
――勝ったときの達成感はすごいですよね。
Rainbrain:試合時間が長いからなんでしょうね。ちゃんとネクサスを破壊するなら、上手くいったとしても30分ぐらいかかるじゃないですか。だからその分、喜びも大きいものになるんだと思います。
PvPのゲームで、ここまでの時間をかけて勝敗をつけるっていうのはあんまりないですよね。『VALORANT』のようにラウンド制で細かく勝敗をつけているわけでもないですし。
――ちなみにチームゲーム以外、例えばソロQはどうでしょう。
Rainbrain:ソロQは自分と向き合える人が向いていると思います。負けを他人のせいにした瞬間、上手くなれなくなるんですよ。いろんなことを無視して、自分と向き合っていかないと強くなれない。
たまに他人のせいにしながら上手くなる人もいるように見えますが、そういう人も表には出さないだけで、内面ではちゃんと向き合ってるんですよ。そうやって、いかにして自分と向き合うかが大事なゲームですね。
――禅みたいな話ですね。肝に銘じておきます。あとRainbrainさんと言えば、TFTとかアリーナとか、『LoL』のいろいろなゲームモードも楽しまれている印象です。
Rainbrain:TFTはすごいですよね。オートチェスの中ではすごくメジャーなタイトルになっていますし、大会も見ごたえがあって楽しいです。
あとゲームモードも昔に比べてすごくおもしろいものが増えましたよね。まだ触れていない(※取材当時)んですが、メイヘムとか評判もいいですし。
――昔はウルトラ・ラピッド・ファイア(URF)の初日だけ盛り上がっていたようなイメージでした。
Rainbrain:そうでしたね(笑)。そういう点でも、どんどん洗練してきていますよね。
――最近の『LoL』シーンの盛り上がりに関してはどう思われていますか?
Rainbrain:すごくいいことだと感じています。k4senさんとか、しゃるるさんとかが中心になって大会を企画したりして、視聴者にわかりやすく『LoL』が持つおもしろさを伝えている。これはすごいことですよね。
元来、『LoL』ってこんなに受け入れられていたゲームじゃなかったじゃないですか。やっているだけで「えっ」みたいな目を向けられるというか。
――ああ、ありましたね。経験したこともあります。
Rainbrain:それがいまや「『LoL』? やってるやってる!」って気軽に言えるようになったっていうのは本当にすごいことだなと。これがいちばん大きな変化だと思います。
――今だとむしろ「やってるの? じゃあ教えてよ!」って言われるぐらいの雰囲気になってきてますよね。
Rainbrain:ですね。すごくカジュアルなものになった。
『LoL』のコミュニティ全体を見ても、いろいろな方が見るようになってすごく良くなったと思います。昔はもっとトゲトゲしかったというか、言ってしまえば「自分以外は全員敵だ!」みたいな雰囲気があったと思うんですけど、いまはしっかり手を取り合うような形になってますよね。
――Rainbrainさんとしては、現在の「LJL」はどう見ているのでしょうか。
Rainbrain:国内だけで考えると、少し難しい状況になっているのかなと。「League of Legends Championship Pacific(LCP)」に出場しているSHGとDFMは高いレベルで戦えますし、実力も上がりやすくなるとは思うんですが……そのぶん国内は強いチームが減ってしまっているわけですから。全体のレベルアップという意味では、ちょっと大変だなと思います。
――なるほど。
Rainbrain:いずれSHGやDFMを倒すレベルのチームが出てくるとは思うんですが、そうなるとまたそのチームは「LCP」に行ってしまうわけですよね。そうなるとまた強い競争相手が減って、「LJL」自体の強さは下がってしまう。そこがちょっと難しいですよね。どうにかして、全体のレベルを上げる必要があると思います。
ただ、いまの方針になって良くなった部分もあるんです。
――どういった部分でしょうか?
Rainbrain:新人選手がすごく出てきやすくなりました。いままでの「LJL」って、いくつかあるプロチームの中でベテラン選手を抱えて戦っているだけだったんですよ。なかなか新しい芽が出る環境じゃなかった。
だけどいまの「LJL」なら、それこそ昔みたいに「ちょっと組んでみました」みたいなアマチュアのチームが出てくるじゃないですか。そこで頭角を現すような選手がいれば、強いチームが引き入れたりするかもしれない。
――それこそ先ほど話されていたような、黎明期の「LJL」のような。
Rainbrain:そうですね。昔はそういった日本人を育てるという段階を飛ばして「韓国人選手を入れよう」という流れになってしまいましたから。自分は本来だったらもっと育成の段階があったうえで、「じゃあ、海外の選手も入れてみようか」となるのが正しい流れだと思っているので、いまはその流れを取り戻す時代になっているんじゃないかなと。
――いま「LJL」に出たいと思っている選手はなにをすればいいか、アドバイスなんかはあるでしょうか。
Rainbrain:まずはチームに入ることですね。自分で作るでもいいですけど、とにかく試合に出られる環境を作る。これは絶対に必要だと思います。ソロQをやっているだけではなかなか難しいと思いますし、チーム的な視点を鍛える必要があるんじゃないかと。
いまは昔ほど、個人の強さは重視されていないと思うんです。競技シーンで勝つためにはチームゲームの視点が絶対に必要。なのでその経験を積めば、いろいろなチームで優遇されるんじゃないでしょうか。
――競技シーンじゃないですが、いまは「League The k4sen(LTK)」もありますよね。
Rainbrain:「LTK」もすごくいいですよね。人気のストリーマーさんを集めていることで注目度も高いですし、長年『LoL』シーンに関わってきた人たちにスポットライトが当たっているのもすばらしいなと。
多分、そういったずっと『LoL』に貢献してきた人たちを見せたいっていう意図もあるんじゃないのかな……と、思っています。
――k4senさん自身、ものすごく『LoL』ファンですもんね。
Rainbrain:選手たちが主役なのはもちろんですが、教える立場としてストリーマーの皆さんと関わることで、現役のプロや元プロの選手たちがたくさんの方に見てもらえるのはとても大きいことだなと。
そのぶん、コーチ陣は本当に大変だと思うんですけどね!競技シーンみたいにメタを追うんじゃなく、個々人の特性に合わせたピックを考えなきゃいけませんし。
――以前実施させていただいたインタビューでも、皆さん口を揃えて「大変だった」と言われていた印象がありますね。
Rainbrain:下手したら競技シーンより大変だと思います。
――ストリーマー大会ならではの悩みですよね。
Rainbrain:でも、こうやってストリーマーの方々を集めて『LoL』のリーグ戦をやってもらうっていうのは、すごく別軸から『LoL』の見せ方に切り込んだ感じがありますよね。
ストリーマーの方が成長したり教わったりするのと同時に、視聴者さんたちも『LoL』に詳しくなれる。そうなると試合を観戦するのもより楽しくなっていくじゃないですか。
――そうですね。成長段階から追っていけば、試合では当たり前すぎて解説されないようなところも知れますし。
Rainbrain:それこそLTKを追っているだけで基礎的な知識が身に付くので、競技シーンを見るのにもつながると思うんですよ。
素人中心にやるわけでもなく、元プロ中心のハイレベルすぎる戦いをやるわけでもない。このやり方はすごく理にかなっていると思いますね。
――すごくわかります。Rainbrainさん自身は、今後『LoL』シーンにどう関わっていくか、なにかイメージはあるでしょうか。
Rainbrain:あまり目立つのが好きではないので、自分から表立って何かをすることはないかもしれません。いまLTKで均衡の守り人として関わっているように、『LoL』を盛り上げようという方たちの力添えができたらなと思います。
最近はいろいろな人と遊ぶことも増えましたし、皆さんの良き隣人でありたいですね。