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突然の“常時芋”ポストと、プロレスを仕掛けるワケ―「G2 JAPAN」開設の意図、日本コミュニティへの熱き想いをCEOと仕掛人が語る【独占インタビュー】

欧州の強豪「G2 Esports」が日本で本格始動。話題の「常時芋」ツイートの裏側や、ファンと共に熱狂を作る日本独自の展開について、仕掛人VoL氏とCEOが語ったインタビューをお届けします。

岡野 朔太郎

岡野 朔太郎

『リーグ・オブ・レジェンド』や『VALORANT』など、数々のタイトルで世界的な強豪として知られる欧州のeスポーツチーム「G2 Esports(以下、G2)」。 競技シーンでの強さはもちろん、そのユニークでやや破天荒なSNS運用やミーム文化で、世界中に熱狂的なファンを持つ同チームが、ついに日本向け公式X(旧Twitter)アカウントを開設しました。

さらに、G2が手掛ける漫画作品「レッドオーラ(Red Aura)」が公開されました。エンターテインメントとしてさらなるステップアップを目指すG2が国内展開を本格化します。

ではなぜ今、日本なのか。そして話題をさらった「常時芋」ツイートの真意とは。 G2 JAPANの展開をリードする日本マーケティングリーダーのVoL氏と、G2 Esports CEOの“Stilgar”ことAlban Dechelotte氏に、日本展開の狙いと展望を伺います。

日本独自の「G2 JAPAN」を確立する

――G2 EsportsのCEOとして、日本のeスポーツシーンをどう見ていますか?

Alban Dechelotte(以下、Alban): 日本は世界でも屈指の情熱的なゲーミング文化を持っています。ここ数年の急成長は、見ていて本当にワクワクしますし、日本のファンはとても熱く、忠実です。一度応援すると決めたものに全力で想いを注いでくれる姿には、いつも心から感動しています。 また、日本には「スキル」「物語」「アイデンティティ」を大切にする独自の価値観があり、それが日本のeスポーツを特別なものにしていると感じます。

“Stilgar”ことAlban Dechelotte氏

――G2と日本のコミュニティが共鳴できる部分はどこでしょうか?

Alban: G2は大胆で妥協せず、常に勝利を追い求める一方で、「ストーリーテリング」をとても大事にしています。日本のファンは、個性が輝き、挑戦を楽しみ、ユーモアを大切にする“物語”を好みますよね。それはまさにG2のDNAそのものです。私たちはただ勝つだけでなく、“瞬間”を作り、“キャラクター”を生み出し、ライバル関係やユーモアで文化を築いてきました。日本のファンの皆さんが重視する“本物らしさ”こそ、G2の根幹にあります。「最高レベルで戦いながらも、楽しむことを忘れないチーム」だと感じてもらえたら嬉しいです。

――日本での展開について、具体的なビジョンを教えてください。

Alban: 私たちが新しい地域で展開する際、「本国のやり方をそのまま翻訳して届ける」ことは絶対にしません。現地のファンが共感できる“その国ならではのG2”を作りたいのです。 日本でも、日本独自のG2カルチャーやミームを生み出してほしい。日本のG2が「G2 JAPAN」として自立した存在になることが理想です。

――グッズ販売やイベントなどの計画はありますか?

Alban: もちろんです。LINEマンガでオリジナルWebコミック「レッドオーラ(Red Aura)」を公開しましたが、世界初公開の舞台に日本を選んだことを誇りに思っています。日本企業とのコラボレーションや新しい取り組みの構想もありますが、まずはコミュニティの“土台”を築くことが最優先です。その基盤ができたタイミングで、オンライン・オフライン両方で、ファンの皆さんと直接つながれる“G2らしい”イベントを実現したいと考えています。

――最後に、G2が目指す未来と、そこにおける日本の役割を教えてください。

Alban: 私たちの目標は、G2をeスポーツだけでなく、音楽やファッションも含めた真のグローバルなスポーツ&エンターテインメントブランドに育てることです。その中で、文化を生み出す国である日本は欠かせない地域です。アニメやゲームなど、世界のエンタメを形作ってきた日本カルチャーの一部として、敬意を持って、長期的に関わっていきたいと考えています。

日本の熱狂が、G2を「本気」にさせた

――今回、日本向けSNSを開設するに至った経緯を教えてください。

VoL: G2は「世界で最もエンターテインメント性のあるチーム」を目指してきましたが、これまで日本へ直接声を届けられる場所がありませんでした。世界のどの地域と比べても、日本のコミュニティは本当に特別です。イベントの熱量、SNSでの盛り上がり、そしてファン同士の一体感。そのエネルギーを目の当たりにし、「日本はG2が本気で向き合うべき場所である」と確信しました。そこから動き出したのが、今回の「G2 JAPAN プロジェクト」です。ありがたいことに、G2が僕自身のこれまでの経験や動きを高く評価してくれて、日本展開のリードを任せてもらうことになりました。

――プロジェクトの立ち上げはスムーズに進んだのでしょうか?

VoL: 何より大きかったのは上司のsashaの存在です。彼は誰もが知る「Apple」出身で、判断も早く、レスポンスも時差を感じさせないほど“鬼速い”。彼をはじめ、ソーシャルチームやマネジメントチームと連携する中で、柔軟さ、スピード、そして信じられないほどの自由を感じ、「これがG2か…」と日々学んでいます。 ビジネスとしてのリアリティ、コミュニティの情熱、そしてG2というブランド。そのすべてが噛み合って、今回のローンチにつながりました。準備期間も1ヶ月くらいだったと思います。

――直近ではフランスでの活動もされていたようですね。

VoL: 「VALORANT Champions」ではフランス・パリでTeam Vitalityをサポートしていました。その時に改めて、日本のファンの熱量はSNSを通じて国境を越える力を持っていると感じたんです。「このコミュニティからのエネルギーを、ちゃんとチームに、そしてステージに立つ選手に届けたい」。その想いがG2メンバーの持つリスペクトの精神とも合致し、開設に至りました。


目指すのは「感情を翻訳する」場所―「常時芋」ポストの裏側

――今後、G2の日本向けSNSではどのような発信をしていくのでしょうか?

VoL: 皆さんももうご存知のように、これがG2のスタイルです(笑)G2はどこまで行ってもG2なんです。単に英語を翻訳するだけではなく、「日本語でG2らしさをどう表現するか」に本気で向き合い、ファンの皆さんと一緒に“作っていく”アカウントにしたいと思っています。 G2のブランドらしさを大切にしつつ、日本独自のG2を作るべく、展開していきます。G2 JAPANは各部門のソーシャルチームとも連携していて、出ているツイートやコンテンツは誰かのぱっと出のアイデアもあれば、スタッフの誰かがツイートを拾ってこんなのどう?とかもリアルタイムで行っています。G2だからこその柔軟さがここにも表れてると思います。

G2には、ブランドとしての一面と、“ふざけてるけど本気”というユーモアに満ちたカルチャーが共存しています。その空気を日本語でもしっかり再現し、タイムラインに流れて来たら思わず見て良くも悪くも(笑)反応してしまうような、G2だけでなく、大会そのものを、日本のeスポーツシーン自体を盛り上げることができるアカウントを目指していたりもしてます。

――話題を呼んだ、「常時芋」ポストはどのように生まれたのですか?

VoL:「最初のパンチがすべて」だと思っていたので、日本のファンが見て「え、G2!?なんで!?」と思うような、いい意味での違和感を作りたかったんです。 過去の大会のチャットリプレイを片っ端から漁っていたら、「常時芋」が出てきて、「これしかない」と確信して上司に即提案しました。彼は「たぶん1000いいねくらいだろ」と言っていましたが(笑)

――反響はいかがでしたか?

VoL: 想像以上で驚きました。結果的に、この投稿が日本コミュニティとG2をつなぐ“最初の“架け橋”になりました。現地では日本向けコンテンツとして、babybayやShanksに日本語を教えて動画を撮ったりもして、みんなノリノリでやってくれました。 個人的には、「常時芋」はいつか真面目にグッズ化したいと思っています。

日本のシーンにもっと「プロレス」と熱狂を

――日本のコミュニティとどのように関わっていきたいですか?

VoL: G2 JAPANは情報を“発信する場所”ではなく、ファンやコミュニティと一緒に“作っていく場所”です。「こんな企画が見たい」というアイデアがあれば、公式でも僕個人のDMでもいいのでどんどん送ってください。「これ面白い!」と思ったものは本気で動かします。 ファンの発想やコンテンツは時にチームの担当者以上に鋭いです。ファンとチームが同じ温度で混ざり合う空気を日本でも作りたい。まだG2を知らない人にも「なんか楽しそう」と感じてもらい、チームとファンの境界線を自然になくしたいですね。それこそG2 JAPANはファンのツイートや俗にいうアンチや煽りにも平気で返します(笑)。これもコミュニティと一緒に作り上げるコンテンツの一部だと思っています。G2 JAPANのツイートだけではなく、ツイートに対してのコミュニティからのリプでの煽り合いや、引用RTもひとつのコンテンツとして見るものになっていって欲しいですね。

――日本のeスポーツシーンに対して思うことはありますか?

VoL: もっといろんな意見が出てきてほしいですね。ポジティブでもネガティブでも、声が増えるほどシーンはもっとより良い方向に進化できるはずです。 日本のチームアカウントは良くも悪くも“クリーン”すぎると感じることがあります。僕たち海外チームから見ると、もう少し煽り合いや“プロレス”があっても面白いと思います。観ている人を楽しませるエンタメの努力はいつだって必要だと思います。例えばMURASH GAMINGさんのように、負けた時に批判や悔しさ、「もっと強くなってほしい」という声が多く見られるのは、ファンが本気で応援している証拠。日本のチームももっと勝ちにこだわって、それに伴う熱いリアクションが増えれば、シーン全体がもっと面白くなるはずです。 試合前のチーム同士のプロレスも、これをきっかけにG2に言い返してくれるくらいの盛り上がりを見せてほしいですね(笑)先日の「Red Bull Home Ground 2025」では、Xやウォッチパーティー内でのG2 JAPANへの言及が多く見られて、少しはコミュニティの盛り上げに貢献できたかな…?と思っています(笑)。試合に負けたら自分達を笑い飛ばすなどのある一定のプロレスにおいてのルールも存在してたりもします。それこそ「G2 JAPANに煽られて悔しいからZETA頑張ってくれ!」こういった意見はとても嬉しいです。もっとコミュニティも勝ちに貪欲になっていって欲しいです。

――最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

VoL: G2 JAPANでは、選手のキャラクターやG2チームのテンション感といった、言葉にできない“温度”を届けていきます。SNSは情報を流す場所ではなく、“感情を翻訳する場所”であり、“距離感をデザインする場所”です。 「G2ってなんかいいよね」。そう感じてもらえるよう、ファンとのコミュニケーションを積み重ねていきます。チームが個性を持つことはとても大切で、G2にはありがたいことにその強い色が元からあります。このスタイルは中国でも受け入れられましたし、地域の他チームとは少し違うアプローチだからこそ、批判が出ることもあります。

でもその一方で、私たちの姿勢を好きになってくれるファンも確実に増えていくと考えていますG2が誰かの日常の一部になれたら本望です。

――ありがとうございました!


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