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8月15日、高校生No.1を決めるeスポーツ大会「STAGE:0」の『VALORANT』部門 グランドファイナルが実施されました。
大阪・夢洲で開催中の「大阪・関西万博」内イベントホール「シャインハット」を舞台に実施された大会は、多くの来場者が詰めかけ大盛況に。決勝はスーパークラッチも飛び出す大接戦となりましたが、見事ルネサンス豊田高等学校「大阪に行くために」が優勝し、大会連覇の偉業を成し遂げました。
同大会のキャスターを務めた岸大河さんとyueさんにインタビューで大会の総括と、万博イメージキャラクターとの確執(?)について聞きました。
――まずは今日の感想からお願いします。
岸大河:過去の高校生eスポーツ大会の興奮を超えましたね。今までもたくさんの高校生大会を見てきましたが、出場者の皆さんのレベルが上がっているのもそうですし、今回は会場の雰囲気も合わさって、過去の興奮度を超えてきました。こうして歴史が積み重なってきたからこそ、あれだけスーパープレイも生まれたんじゃないでしょうか。
yue:ルネサンス豊田高等学校のチームが2連覇を達成しましたが、プロシーンとは違って絶対に世代交代が起こる高校生年代での2連覇というのはすごいですよね。試合内容を振り返っても、本当にどちらが勝ってもおかしくないと言える接戦だったので、お互いに全力を出し切った試合を制しての優勝というところに強さを感じますね。
あと高校生の活躍もそうですけれども、僕的に一番嬉しかったのは会場の盛り上がりですね。万博という会場の特別さもありますけれど、大きな声援が高校生の背中を後押しして、今日のSTAGE:0をより一層素晴らしい大会にしてくれたのかなと思いました。
――配信上でもプレイのレベルが上がっていることへ言及していましたが、改めてどのようなポイントでレベルの高まりを感じましたか?
岸大河:単純なエイムもそうですし、恐らくはランクマッチで鍛えたであろう判断が練習期間を経て、チームに落とし込めているように見えました。高校生という環境を考えると非常に高いレベルだったんじゃないでしょうか。
3センチネル構成でのロータスとか、独自の構成も面白かったですね。もちろんFnatic構成を持ってきたアセントのようにプロシーンを取り入れるケースもありますけど、単にコピーするだけではなくて“自分たちの『VALORANT』”を表現してくれたことはすごく大事だし、プロ顔負けの取り組みですよ。構成をそのまま真似る方がシステム的には早いですけれど、それだけじゃやっぱり面白くないですし、それぞれの個性や意見を尊重して出してきた答えなのかなと思うと、仲の良さや『VALORANT』への想いを感じられます。
yue:レベルの上がり方でいくと、僕は「判断力」に尽きますね。今までの大会の印象だと高校生は「練習してきたものを出そう」という思いが強く、アビリティ合わせやリテイクで足並みを揃えるためにかなり時間を使ってしまっていたんです。
ただ、今回のSTAGE:0では「このスピード感の中で思考が遅くなるとどれだけ不利になるのか」を全員が理解していた印象で、特に準優勝だったルネサンス高等学校の「Across」はすぐに切り替えて次の目的地を設定するとか、相手の動きに合わせてファストリテイクしたり、サイトを空けたりという工夫が本番でできていましたよね。
練習をそのまま出すのではなくて、練習したからこそ身についた対応力が発揮できていたと思うので、この対応力・判断力の上がり方は特に感じました。
――仰るように高校生は必ず卒業に伴う世代交代が訪れますし、STAGE:0はBo1というのもあって、刹那的なところが魅力でもあると思います。お二人の印象はいかがですか。
岸大河:そうですね。本当に「今しかない」「一発で勝たなければいけない」っていう刹那的な魅力はおっしゃる通りだと思います。Bo1でBANがあればプレイするマップもある程度絞り込めて、1戦のためにすべてを集中して全力を尽くせる、一試合のために本気を出しやすい環境だったのかなと思います。
あと最近は、他にも高校生大会がいくつかありますよね。なので、直近の大会で詰め込めていたとか、ゲームのアップデートが来てからある程度時間が経って、プロシーンも含めてメタも固まっているので分析しやすかったとか、そうした研究力みたいな要素も表れたのが、今日の試合だったんじゃないでしょうか。
――3センチネル構成の狙いについても「Bo1で対応されづらいから」という狙いがあったようですね。
yue:たしかに対応されづらいからこその独特な構成を選んだという理由もあったと思いますが、決勝戦だけで見れば対応されていたんですよね。「Across」のコーチもあの構成は事前に別の大会で見て知っていたし、やってくることについても想定と対策はできていたそうなんです。
それでも優勝できたのは、あの構成を使い続けて強さを引き出せていたからだと思います。とっさの合わせや判断ができるほど、その構成に全力を注いだからこそ、自分たちだけのオリジナリティを突き詰めて勝ち切れたんでしょう。
観戦側からしても「何を見せてくれるのかな」とワクワクさせてくれましたし、汎用性のない構成なので難しい場面もあったんですが、迷うシーンがほとんどなかったんですよね。しっかりとした完成度を感じました。
岸大河:Bo3やBo5になるとマップの得意不得意が積み重なって総合的な強さは変わってくると思いますが、逆に「苦しくなった時に瞬間的な判断ができるか」「何か流れを変える一手が打てるか」という部分はBo1でも変わらない“強さ”だと思うんですよね。
今回のように相手が3センチネル構成を出してきて手詰まりになったときにどうするのか。対策をしていてもタイムアウトが取れる回数は限られていますし、作戦を共有しても実行できるかは別じゃないですか。最終的には選手たち自身が何か解決案を出さなきゃいけないんです。
社会人になれば、多分皆さんできるようになっていくと思うんですけど、それを高校生のうちから実行していることはすごく大事な部分で、今回解決できなかったとしても、「解決できるようになるのはどうすればいいか」を考える機会にもなります。
なので来年以降に、準優勝のルネサンス高校が「解決する」姿も見てみたいと思いますし、そうなると今度はルネサンス豊田側が「解決を迫られる側」になる可能性もありますよね。そうしてお互いにどんどん成長を見せてほしいですね。
――決勝以外の試合も含めて、印象に残っているシーンがあれば教えてください。
岸大河:N高「WB」のGAIDA選手の個人技ですね。もう「LeoやRieNsみたいだな」って思うくらいのエイムで、ソーヴァであれだけキャリーできるのはなかなか見ないですよね。
yue:なんか理屈じゃない撃ち合いが相当あったと思うんですよ。不利な撃ち合いでも絶対に顔を出して1キル持っていくみたいな。
岸大河:フラッシュ受けながら倒しているシーンとかありましたね。観戦画面だとなかなかすごさが伝わらないと思うのですが、完全に画面が白くなっていて何も見えない状態でのキルなんですよ。
yue:あのシーンではルネサンス豊田が相手のAリテイクにカウンターを仕掛けてたんですけど、そのGAIDA選手のブラインドショットですべてのプランが崩れちゃって、相当困っていましたね。かなり足も遅くなって、あのまま流れが掴めなかったらルネサンス豊田が負けちゃっていたと思います。メンタル的に押されるほどのフィジカルが彼にはありましたね。
岸大河:あれがデュエリストだったら「ドローンでどうにかするか」みたいな感じだと思うんですけど、ソーヴァじゃどうしようもないなって。
yue:そうですよね。絶対に先頭で撃ち合ってくるわけじゃなくて「なんでそこ出てくるの」みたいなシーンで強いですから。
岸大河:他にもベストクラッチに選ばれた1vs4クラッチもそうですし、決勝の「いくらはいくら」選手のシェリフでの2vs4も印象的でしたね。あれは「ガレキの勝負も勝たなくてはいけない」「サイト中でも1vs1で勝たなければいけない」状況で、勝てば解除までできて……というすべてのピースが揃わないとまず勝てないシチュエーションでしたが、エゴで全部取っちゃった。すごく奇跡的なクラッチで、あれは本当にしびれましたね。
yue:僕の印象的だったシーンは、ラウンド自体は落としたんですが、決勝で「Across」が相手のAメイン取りが多くなっているにも関わらず、タイムアウト後にAメインをドライで抜けたシーンですね。後から聞いたんですが、Bサイト方向からスローオーブが飛んできたのを視認して相手の配置を読んで抜けたそうなんです。
その読みがあったとしても、11-12という相当プレッシャーがかかる局面で読みを元にドライでダークカバーを抜ける判断をするのはすごいですよね。相当コーチとの信頼関係もあったんだろうなと。
岸大河:トラップワイヤーがないBサイトを一発で抜けていったシーンもそうですよね。
yue:チーム全体で元々準備していたものを、本番で自信を持って叩きつけられたっていうことですよね。本番で自信をどれだけ出せるかは難しい部分だと思うので、そこは心打たれました。
岸大河:この辺は僕らも試合後にコーチや選手と話して初めて知った部分なので、実況解説しているだけではわからなかったですね。
――非常に素晴らしいゲームで、会場も大盛り上がりでしたね。最後に少しゲームを離れて、ぜひ万博という会場やイベントそのものへの感想や印象も聞かせてください。
岸大河:(yueさんを指さして)まだ万博を回ってないらしくて、なんか染まってない感じ出してるんですよ。せっかく万博に来たのにミャクミャクにも興味ないですみたいな、アンチですよ。今日は朝7時ぐらいに会場入って、写真撮ってるのに。
yue:いや違います、理由があるんですよ。僕はやっぱミーハーになりたくないんです、逆張りキッズなので。
岸大河:じゃあyueが応援してるチームは逆張りってことで。
yue:めちゃめちゃ人気あるチームの時は心の中で応援してます(笑)
真面目な話、万博はこれまで来られなかったからっていうのもありますよ。なかなか仕事以外で大阪に来る機会ってないですし、僕はそもそも根がゲーマーなんで家から出ないので...。めっちゃ騒がれてるけど「どうせ俺行かないんだろうな」と思ってました。そしたら今回STAGE:0で来られて。
岸大河:もうミャクミャクもだいぶ“来てる”よね。
yue:ちょっと今ぬいぐるみ欲しいですね。
岸大河:いいねぇ。
僕も真面目な話をすると、前回も3日間万博でイベントに出演させていただいて、その時は正直言って万博がどんな場所かなんとなくしかわかってなかったんですが、すごく賑やかだし夜歩いても気持ちいいし、花火も上がってるしで。あとはいろんな文化と触れ合える素晴らしさも感じました。これはこの年齢で来てもいいけど、もっと若い頃に来ていたら見方が変わったかなって思いましたね。
僕はイタリア館に入れたんですけど、なかなか見られない彫刻があって、しかも展示内容も時期によって変わるんですよね。何回も来たいなっていう場所にはなってます。
yue:そう、イタリア館は今やってるゲームの元ネタになってる彫刻が見られるって聞いて、界隈でも話題なんですよね。見たいなぁ。
岸大河:あれも西暦が3桁の頃の彫刻でしょ?(※2世紀頃と推定されている) 2トンくらいの重さがある石を千数百年前にあれだけ削ったというのもすごいし、僕らも数千年後にはそう思われるようなことをしてるのかなとか考えちゃいますね。
yue:意味がわからないですよね。
――そこも万博の魅力ということですね。本日はありがとうございました!
のちにアンチ(?)を卒業してミャクミャクと和解を果たしたyueさん。