2025年シーズンからQT DIG∞に加入し、VALORANT Challengers Japanで活躍するYuran選手。Split 2ではベスト3-4に入賞しました。国内1枠のみのAscension出場権利をかけたSplit 3を目前にして、今何を思うか。
本稿では、Split 3を迎えるYuran選手へのインタビューをお届けします。“スクリムを減らす”という大胆な練習計画を採用した理由やその効果、2024年にZETA DIVISIONで学んだこと、メタの変遷などについて伺いました。
◆スクリムを減らすに踏み切った理由とその効果とは
――Split 2を改めて振り返ってみて、どんなシーズンだったでしょうか?
Yuran:成長もあったし、後悔も残るシーズンでした。Kippei選手がオフライン経験や公式大会を重ねて大会でも同じパフォーマンスが出せるようになったのは大きく成長できた点です。後悔については、オフラインには行けたけど初戦で負けてしまい、練習でうまくやれていたところのほとんど大会で出せなかった点です。
――Main Stageでは成績が良かったものの、オフライン(対RIDDLE戦)ではラウンド差の開く結果でした。あの試合で何があったのでしょうか?
Yuran:事件とか喧嘩などはなく、いつも通り練習もできていて準備万端でした。大会では細かいところでのズレや、相手の構成が思っていたものと違うなど、対応できずに流れで負けることが続いて、流れを断ち切れなかったと思います。
――なるほど。そういった後悔がある中で、Split 3に向けてチームとしてなにを重点的に練習していますか?
Yuran:Split 2で負けた要因が場慣れや緊張感への不慣れさだと考えて、スクリムを2マップにするなど、練習から緊張感を持たせようと取り組んでいます。
――実際にスクリムを減らすことは今も実践されているのですか?
Yuran:今もやっています。どこまで効果があるかはわかりませんが、とりあえず緊張感を持たせるという目的で取り組んでいます。サッカーとか他のスポーツだと練習試合が少ないじゃないですか。普段からスクリムが多いと、ミスがあっても「次があるし、まあいっか」となるのを、スクリムを2マップにすることで「俺のせいでラウンド落としたな」とか「細かいところで負けたね」とか、細かいところが見えてくるんです。大会に近い緊張感でやるっていうのが目的ですね。
――Yuran選手の視点で、効果はありましたか?
Yuran:1日の試合数がかなり減ったので、無駄にできない練習が増え、コミュニケーション量が増えたり、「こういう作戦をやるよ」という場面で忘れてた時の責任感がより重くなりました。ただ、一長一短ですね。
――短所もあると?
Yuran:悪いところは本当に何もできない日ができてしまうことですね。選手のメンタルに依存するし、スクリムで実際の大会の時みたいな負け方をしたときに、後半からプレーが甘くなったりすると、1日潰れちゃうときもあります。
――チームとしてはどれくらいの期間続けているのですか?
Yuran:チームから公開された動画の通りですが、Split 2のあとに練習が再開してから取り組んでいます。
――スクリムの数が減った分、時間に余裕ができると思いますが、空いた時間は何をしているのでしょうか?
Yuran:個人練習の時間を増やしたいという声もあったので、個人でランクをするとか、その日の試合を振り返るとか、大会を見るとか、自分たちの魅力を上げていくための時間にしています。
――チームで集まって練習する時間が少なくなってしまうと思うのですが、その点はどうでしょうか?
Yuran:チーム練習が減るからこそ、大会のようにチョケなしで緊張感がより一層出ます。そもそもチームとしての大枠はできているので、あとは細かいところの修正の段階にあります。例えば即席メンバーでスクリムを減らすと、そもそも連携が取れなくなってしまいますが、ずっと続いているメンバーの僕らだからこそできるチャレンジだと思っています。

――QT DIG∞はYuran選手加入前からオフライン大会の常連チームで、好成績を安定して収めているチームだと思います。Yuran選手の視点でどんな要因があると思いますか?
Yuran:安定している要因は、競技シーンを長くやっているメンバーが多いため、変な緊張がなく、大会の雰囲気にも慣れているので、経験の量が安定しているからだと思います。
――Yuran選手の視点で今のQT DIG∞の強みはどういったところにあると思いますか?
Yuran:ミスの少なさかなと思います。細かいところでミスは出てくることもありますが、スクリムを2マップにしたことで初歩的なミスがかなり減った気がしていて、大会でも同じようにできると思っています。
――チームとして盤石な体制が整っているということですか?
Yuran:大体は仕上がってきているので、あとは微調整ですね。
――自信はありますか?
Yuran:結構自信あります。自分はいつも誰にも負けないマインドでやらせてもらっているので、どのチームにも負けるイメージはつかないですね。
――Split 3までにチームとしてどのように成長しましたか?
Yuran:Split 2と比べて、チームのコミュニケーションの質が向上しました。以前よりも各メンバーが積極的に発言するようになり、Gwangboong選手など、misaya選手以外のメンバーからも活発にアイデアが出るようになりましたね。スクリムを減らし、練習が少ない中で「試したかったのにできなかった」という後悔を残さないためにも、一つひとつの機会を大切にし、積極的に意見を出し合う意識が強まっています。Split 2での敗北を経験し、「これが最後」と気合いも入っていますね。
――Split 3に向けた意識について、これまでと違う点はありますか?
Yuran:今年最後なので、早々に負けたくないです。Ascension行きもかかっているし、その先のインターナショナルリーグはみんなの夢だと思うので、そこに近づくためにみんなの意識がちょっとずつ変わっているんだと思います。

◆18歳の挑戦、ZETA DIVISIONで学んだこと
――昨年インターナショナルリーグでプレイしていたYuran選手ですが、Challengers Japanとどのように違いがあると感じていますか?
Yuran:インターナショナルリーグは全部オフラインかつ配信試合で、みんなが日本の国旗を背負って戦っていたので、プレッシャーが強いです。でも相手の強さや自分のやることはChallengersでも変わらないので、結局自分のペースを乱さないようにすればよいと思ってやっています。
――Yuran選手の“いつも誰にも負けないマインド”は2024年当時から同じですか?
Yuran:インターナショナルリーグに行ったばかりの頃は本当にぺーぺーだったので、コーチやSugarZ3ro選手、Lazさんに意見をもらったりしていました。当時はリーグのレベル感がわかりませんでしたが、Kickoffの初戦でGlobal Esportsに勝った時くらいから「俺も通用するんだな」と思い、その成功体験で自信がつきましたね。
――2024年シーズンの最初は緊張、ぶっちゃけ大丈夫なのかなって皆考えていたと思います。当時の心境としてはどうでしたか?
Yuran:そうですね(笑)。みんなが「こいつ、いけるのか?」「18歳でVCT行けるのか?」「運ゲー?」みたいな(笑)。当時スクリムの後にCarlaoコーチに2時間くらい付き合ってもらい、フィードバックを無限に得ていて。「まずミスを減らすことからが大事だ」「もっとフィードバックを受けろ」とブラジル式のコーチングを受けていました。自分はバシバシ言ってもらった方が伸びるタイプなので、優しいよりかはバシバシ圧掛けてもらう方が好きですね。
――Carlaoコーチは結構スパルタな指導を?
Yuran:僕だけかもしれません。人によってはメンタルに影響がある人もいますし、コーチごとに教え方が違うので。僕の場合はめちゃめちゃ言ってほしかったので、結構強めに言ってもらってめちゃくちゃ良かったです。2カ月くらいでかなり伸びて、今に繋がってますね。Carlaoコーチは尊敬しています。

◆「テホはコンペではNG」
――メタの変更についても伺います。テホ環境が終わり、メタの移り変わりがQT DIG∞にどのように作用するでしょうか?
Yuran:正直QT DIG∞はテホを使うのが得意じゃなかったので、ありがたいです(笑)。結局テホがいない頃に戻るだけだと思います。またヴァイパーが出てきたり、スロー展開が増えたりと、ねちねちした戦いが起きるかなと思います。
――プレイヤー視点でテホ環境を振り返って、どうでしたか?
Yuran:嫌ではなかったですね。元々バトルロワイヤルゲームのプロをやっていたので、メタが変わるのが好きなんです。当時は武器やマップなどめちゃくちゃメタが変わっていたんですよ。適応できないとずっと成績残せない環境でした。ただ、僕は誘導サルヴォを2つ撃てるテホが好きだったのでメタから外れてしまったのが悲しいです。
――ナーフ後も競技シーンでたまに出ていますよね。
Yuran:あれは出し方がちょっと特殊なので、コンペとかでは真似しないで欲しいですね。普通はできないので。
――強調表示で書いておきます(笑)
Yuran:本当にダメです(笑)。フルパでお願いします。

――新マップの「カロード」について、Yuran選手の印象はいかがでしょうか?
Yuran:カロードは今までのマップを詰め込んだ印象で、苦手な人が多いんじゃないかな?と思います。ミッドの作りが特殊で、ミッド取れないとローテできないし、でも取り返すのも微妙だしな…みたいな。守りが難しいマップで、それをプロシーンがどう攻略するのか楽しみですね。今ちょうどVCT ChinaでEDGがカロードをピックしているので、一旦様子を見ながらって感じですかね。
――古の5v5 FPSのマップという印象があります。
Yuran:至る所でちょっと似てますよね(笑)。みんな守りがきつそうで苦戦してます。
◆「日本シーンを引っ張れるような人間になりたい」
――Ascensionへ繋がるSplit 3を控えていますが、Yuran選手としての長期的な目標は設定していますか?
Yuran:日本シーンを引っ張れるような人間になりたいなと思っています。インターナショナルリーグで何年も活躍する、在籍できるほどの実力が欲しいです。最終的には優勝したいですが、とりあえずの目標はティア1に帰って、そこで戦いたいというのが目標です。
――Season Finalに向けて、Main Stageをどう歩んでいきたいですか?
Yuran:Main Stageは安定して勝ちたいです。もちろん勝った後にAscensionが控えているので、そこで終わりではないし、海外の強敵たちに勝つために、ここでくじけているようではいけません。今後を見据えて日本シーンでは安定して勝っていき、負けを少なくしたいですね。
――Split 3は、Split 2と比べて1戦ごとの重みが違うと思います。その点はいかがでしょうか?
Yuran:Season Finalに出場するために、まずはREJECTに勝ちたいです。7月13日(日)のREJECT戦に向けてしっかり準備し、もちろん他チームも倒した上で2位通過したいです。
――Split 3で特に警戒しているチームはありますか?
Yuran:Delightですかね。上手くて強いチームで、上位に食い込んでくる勢いがあると思います。自分たちのコンセプトを持っていて、それを活かしきれていると外から見て感じます。ヘイヴンでフェニックスを入れるなど奇抜な構成でしっかり勝ってくるのが、チームとしての基盤ができていると思います。アツいです、Main Stage。
――今後Split 3を勝ち抜いてAscensionを見据えた意気込みと、ファンの方へのメッセージをお願いします。
Yuran:Main Stageもちろん勝つのは当たり前ですが、オフラインでいつも初戦で負けてしまっているQT DIG∞のジンクスを打ち破るべく、優勝目指して頑張ります。ファンの皆さんいつも応援ありがとうございます。どこが勝ち上がってくるかわかりませんし、何度目の正直かわかりませんが、RIDDLEを倒してAscension行くので、インターナショナルリーグまで応援よろしくお願いします!

VALORANT Challengers Japan 2025 Main Stageは7月11日(金)から開幕。QT DIG∞の初戦は7月12日(土)のDay2 第1試合で、ZETA DIVISION ACADEMYと対戦します。サーキットポイントでは現在4位のQT DIG∞、Season Finalへの進出ができるのか注目が集まります。
<取材、編集:岡野朔太郎/執筆:ΣISAKA/撮影:松田和真>