『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』のプロリーグ「LCP」が、今シーズンから有観客で開催されています。
現地観戦のため筆者が台北に赴いた際、日本チームのご好意により急きょゲーミングハウス取材をさせてもらえることになりました。チーム側のスケジュールに合わせて初日にFukuoka SoftBank HAWKS gaming(SHG)、翌日にDetonatioN FocusMe(DFM)のゲーミングハウスをそれぞれ訪問。試合後のインタビューではなかなか聞けない、ゲーム以外の生活面を中心にお話を伺ってまいりました。
本稿では、取材準備からSHG訪問後までを時系列でお伝えしていきます。
◆SHGゲーミングハウスは試合会場から車でほど近い新築マンション
海外取材の際、普段なら日本から菓子折りを持って行きますが、今回は用意がないので現地で調達することに。

この店の看板商品にもなっている、通称「肉紙」を2チーム分購入しました。ジャーキーを極限まで薄くしたような食品と言えばイメージできるでしょうか。肉製品なので日本への持ち込みは禁止。現地ならではの「肉紙試食会」も兼ねたレポートを書いていきます。
SHGゲーミングハウスをマップアプリで調べたところ、試合会場から車でほど近い新築マンション内にあることが判明。地下鉄(MRT)の駅からは遠そうに見えたのもあって、最近筆者がハマっている台北の路線バスに乗って行くことにしました。ちなみにこれは後から教えてもらったのですが、実はマップアプリ上に表示されていない道があって、実際は駅からかなり近かったです。
バスがマンションの真裏に到着してしまったため、入口がわからずマネージャーさんに迎えに来てもらいました。建物に入りエレベーターを上がるとロビーがあり、そこで無事に選手たちとご対面。取材自体が急きょだったので対応できる人だけで構わないとチーム側に伝えておいたのですが、4名も来てくれて本当にありがたかったです。

◆第1回「肉紙試食会」、そして気になるSHGメンバーの食生活は?
SHGはこのマンションの3部屋を借りています。まずは「肉紙試食会」のため、食堂のある棟へ。こちらにはEvi選手とGaminコーチ、そしてマネージャーさんが暮らしています。ちなみに食堂でのGaeng選手のお気に入りは一番手前の席。部屋から色々持ってきて、テーブルに置きがてら手前の席に座るのが習慣になっているそうです。ほかの人はいつも適当に座るとのことで、こういうのは性格が出ておもしろいですね。
さて、いよいよ肉紙の試食です。初めて見る食べ物に恐る恐るといった雰囲気の選手たち。1枚をみんなで分けていきます。そして誰かがひとくち食べて、「うまい!」と声を発してからはひとり1枚ずつ手に取って食べ始めました。FATE選手に「もう1枚食べる?」と聞かれたGaeng選手が「いや、我慢する!」と答えるほど、試食会は大好評でした。

続いてもうひとつの棟へ。上の階にCourage選手とMarble選手とGaeng選手が、下の階にFATE選手とYellowYoshi選手とmomentコーチが住んでいます。自然と同じ階の人同士で行動することが増えたものの、momentコーチとMarble選手のように早起きな人同士でお昼ご飯を食べる習慣もあるのだとか。
Marble選手は来たばかりのころ、「魯肉飯(ルーローハン)」が好きでしたが、八角の味に飽きてしまったそうです。それでも日本人メンバーは比較的現地の食事を好んでいて、逆にFATE選手以外の韓国人メンバーは現地のものはあまり食べていないとのこと。Gaeng選手は香りの強いものが苦手で、現地のものより日本料理や韓国料理をよく食べていると言います。momentコーチももっぱら日本式のラーメンや韓国料理のサムギョプサルを食べるような生活です。そんな韓国勢が好きな現地の食べ物は「火鍋」。とても納得感がありますね。
ちなみに、料理が得意なマネージャーさんによると、食材が日本と違い過ぎるため作るのはちょっと難しいらしいです。例えばハンバーグを作ろうと思っても合い挽き肉が売っていない、など。ということで、まずは食材確保から調べている段階というのが取材時のお話だったのですが、つい先日、Evi選手のXにマネージャーさんの手料理が……!
◆練習部屋の様子と選手たちの素顔のエピソードを大公開!

練習部屋では、全員が集まって日夜練習に励んでいます。一番奥はEvi選手の席。光がまぶしいのが気になるらしく、自作のバリケードを張り巡らせています。向かい側のGaeng選手も小さなバリケードを作っているのですが、こちらは集中しやすくすることが目的。理想は自習室のような完全な仕切りなのだとか。Marble選手は「Gaengさんからバリア張られてるんです、僕」とちょっと寂し気な様子でした。
そんなMarble選手はいま、ADC専門のGaminコーチにレーニングを見てもらっています。スクリムが終わると、毎回すぐにフィードバックを受けます。よく考えたら、錚々たる韓国人選手たちと日本LoL界の大スター・Evi選手とチームを組むのは並大抵のことではないはずです。Marble選手の努力は、我々の想像をはるかに超えるものなのかもしれません。
ほかに生活面で何か変わったことはないかと尋ねてみると、momentコーチが韓国から持ってきた日本語学習の本を見せてくれました。FATE選手も口数はそれほど多くはないものの、日本語をだいぶ理解できている様子。皆さん本当に日本語の上達が早いです。

Gaeng選手は、ほのぼのエピソードを披露してくれました。隣の隣の部屋の人が飼っている猫のお話。その家はいつも玄関のドアが開いているので、猫が廊下をウロウロしています。最初は会うたびに警戒されていたけれど、最近は撫でさせてくれるほど懐いてくれたので可愛くて癒されているとのこと。この猫が撫でさせてくれるのは、いまのところGaeng選手とYellowYoshi選手だけだそうです。
そうしてひととおり話が終わり再びロビーに降りてきたところ、夕食を取りに来たYellowYoshi選手とバッタリ!せっかくなのでYellowYoshi選手にも軽く話を聞いてみたところ、Marble選手の意外な一面を教えてくれました。


YellowYoshi選手によると、Marble選手はかなりの方向音痴。エレベーターを降りると毎回左右を間違えちゃうんだそうです。でもちょっと待って!このロビーは確かに左右がわかりにくいんです。上の写真の景色とほぼ同じ廊下が反対側にも続いています。「ここが難しすぎるだけでは?」とフォローを入れるもエレベーターの上下もよく間違えるらしく、それなら確かに方向音痴で間違いないかな、と思ってしまいました。
◆異国の地で力を合わせて頑張っているSHGに精一杯の応援を送りたい
そうこうしていると、どこからともなくマネージャーさんがご飯を持ってやってきました。この日の晩御飯はカレーライス。日本の食べ物をよく食べているという話どおりのメニューです。それにしてもマネージャーさんはいつの間にご飯を受け取ったのでしょうか。気になって聞いてみたところ、出前専用の置き場があってそこまで取りに行ったとのこと。出前以外の荷物置き場は別になっていました。

帰り際にもうひとつ、興味深いお話が聞けました。ゲーミングハウスを借りる際に決め手のひとつとなったのが、ここの一部の部屋のオーナーさんがSHGのファンだったというお話。これは思わずご縁を感じてしまうのもうなずけます。現地におけるeスポーツやLoLの知名度の高さがうかがえるエピソードなのではないでしょうか。

皆さんに見送られ、筆者はゲーミングハウスを後にしました。帰りは地下鉄に乗ることにして、駅へと向かいます。住宅地を抜けると、飲食店や市場などがあってかなり賑やかになってきました。近くには夜市もいくつかあるのを知っていて、何を隠そう、筆者は帰りがてらこのあたりで一番大きな夜市に寄り道して買い物や食べ歩きを楽しみました。
SHGのゲーミングハウスは都心にほど近いにも関わらず、結構ローカルな雰囲気のある地域です。その雰囲気と相まって、SHGのチーム自体も素朴で和気あいあいとした印象を受けました。仲間意識が強く、慣れない異国の地で力を合わせて頑張っているSHG。試合では苦しい戦いが続いていますが、こんなときこそ日本から精一杯の応援を送りたいし、ファンの皆さんも積極的に声援を送ってほしいと強く思いました。その声援が、良い形になって実ることを願って。