2024年9月下旬に開幕した『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の世界大会「Worlds 2024」。1ヶ月を超える長い道のりも、日本時間11月2日にいよいよファイナルを迎えました。イギリス・ロンドンで開催された決勝戦の対戦カードは、LPLの「Bilibili Gaming(以下、BLG)」とLCKの「T1」。LPL第1シードで着実に力をつけ悲願のWorlds優勝をめざずBLGと、LCK第4シードからのし上がってきた昨年王者のT1との頂上決戦に、世界中の注目が集まりました。
まず1戦目は序盤から築き上げた有利をそのまま生かしたBLGが勝利し、続く2戦目は序盤の不利をスワップでひっくり返したT1が勝利。3戦目は終始BLGペースで勝利を掴みましたが、4戦目はじわじわ有利を広げたT1がネクサス破壊に成功します。両者とも絶対に負けられないという意地を見せ、2-2から迎えた5戦目。中盤までは比較的静かな互角の展開でしたが、終盤にT1が素晴らしい集団戦を繰り広げて見事勝利。これにより、3-2でT1が2年連続となるWorlds優勝を果たしました。
本稿では、試合終了後に行なわれたT1の合同インタビューの様子を翻訳してお届けします。
◆10年の歳月が経っても変わらないFaker
――Faker選手に質問です。他のプロ選手やプロを夢見る若者たちに伝えたいことはありますか。
Faker:僕らの優勝を見て、大勢の選手たちが僕のように夢を持って、自分ならではの人生を創り続けていってもらえればと思います。
――全ての選手に向けて質問します。どのチャンピオンの優勝スキンを希望しているか聞かせてください。
Zeus:今年大会で使ったチャンピオンが多くないのでグラガス、カミール、オーンの3つで迷っています。
Oner:僕はまだ考えていませんが、一番使ったヴァイか最後に使ったシンジャオで考えています。
Faker:僕も考えておいたものはないので、ファンの皆さんに喜んでもらえそうなもので考えてみたいと思います。
Gumayusi:僕はジンかヴァルスで考えています。
Keria:僕もそんなに考えてなかったんですが、今年のWorldsでレナータを使ったときが一番うまくやれたと思っているのとパイクが楽しくプレイできたので、このふたつで悩んでいます。
――kk0maコーチにお伺いします。BLG戦に向けてどんな準備をしましたか。また、ファイナルを控えて外部からの視線によってプレッシャーは感じましたか。
kk0ma:BLGとのファイナルにおいて外部からの視線は気にしませんでした。Worldsを見ているとパッチは同じでもベスト8、セミファイナル、ファイナルでピックなどに少しずつ変化があって、試合を見ながら準備した部分もありますが、選手やスタッフが非常に優秀ですしBo5でもあるので、1戦目2戦目で負けても修正さえうまくやれれば勝てると考えていました。
――T1の全ての選手への質問です。優勝の喜びを誰かひとりと分かち合うなら、誰と分かち合いたいでしょうか。
Zeus:今大会でGumayusi選手と何度も話し合いをしてフィードバックもお互いに一番したと思うので、Gumayusi選手と喜びを分かち合いたいです。
Oner:ひとりに決めるのはとても難しいですが、選ぶとしたら姉にしたいと思います。
Faker:今僕を見守ってくれている人たちと分かち合いたいです。
Gumayusi:(分かち合いたい人が)すごく多いので……僕もZeusにします(笑)。
Keria:僕もこの喜びをひとりだけと分かち合うのは惜しいので、大勢のファンの皆さんと分かち合いたいです。
――Faker選手に質問です。今日のパフォーマンスについて、多くの人々が10年を超える歳月が過ぎても変わらないと賞賛していました。どのように実力を維持し、チームがピンチになるたびにキープレイヤーとして活躍することができたのでしょうか。
Faker:今日はピンチになったとき、瞬時に行動したような気がします。そして、今日の試合では決定的な状況が自分に何度も訪れたのでそう見えたんだと思います。今日のパフォーマンスは全般的に良くなかったんですが、毎回どうすればうまくやれるか悩みながら頑張ったので良い結果になったと思います。
◆Fakerが最も印象に残っているプレイは「サイラスでのエンゲージ」
――Gumayusi選手に質問です。とあるインタビューでの「ファイナルの夢を見た。だけどそれはLCKではなく、そのとき僕は長い髪を結んでいた。そんな夢を見たので髪を伸ばし始めた」という話について、詳しく聞かせていただきたいです。それから、今回のWorldsでもインタビュー中にステージに蝶が飛んできて運が良くなりそうだという話をしていましたが、そういった超自然現象に意味を見い出してパワーをもらっているのでしょうか。
Gumayusi:髪を結んでファイナルに向けて準備する夢は僕らのゲーミングハウスから始まっていたので、おそらく来年の国内リーグでまたファイナルに行くことになるのではないかと考えています。蝶については良い兆候でした。全体的に今回のWorldsでは周囲の人たちにもT1が優勝しそうだとか運気が良さそうに見えるとか言われていて、チームで準備しているときもとても雰囲気が良く勢いもあったので、良い結果になるだろうと思っていました。
――Faker選手に質問です。今日の試合で一番良かったのはどのプレイだと思いますか。ご自身でもチームメイトでも構わないので、理由も聞かせてください。
Faker:4戦目に僕がサイラスでエンゲージしたシーンがありました。直感的に仕掛けたんですけどすごく良い結果になり、チームメイトたちもうまく合わせてくれたので、あのシーンが個人的に一番象徴的だったような気がします。
――Faker選手への質問です。今年RiotがHall of Legendsを発表し殿堂入りを果たしました。来年も1名選ばれる予定ですが、Faker選手が考える候補者はいますか。
Faker:それは僕にもわからないですね。そういうのは多くのファンから愛されなければならないと思うので、ファンの皆さんが一番好きな選手が選ばれると思います。
――kk0maコーチ、これまで多くの選手を指導してきたと思いますが、いま多くの人々に、この5人が歴代最高のロスターであると絶賛されています。コーチから見てこの5名の選手が持っている特別な点はなんだと思いますか。
kk0ma:選手たちの特別な点というより、個々人がすべてにおいて優秀で有能だと考えています。
◆Faker「優勝までの過程が残念だった。来年はそれを払拭したい」
――Faker選手に質問です。アジア大会で金メダルを獲った際の記者会見で、eスポーツがスポーツとして認められるには試合や練習過程において人々にインスピレーションを与えられるかどうかだと話していたかと思います。今回5回目の優勝を果たした瞬間にeスポーツをスポーツとする文化に成長させつつ、ファンの皆さんのみならず世界中の大勢の人々にインスピレーションやモチベーションを与えました。Faker選手を見て自分の夢を追いかける皆さんに向けて、それらを与えられるようなお話をぜひお願いしたいです。
Faker:僕は、自分がファンの皆さんに与える影響が一番重要だと考えています。僕から大勢の人々が元気をもらい、そういった良いものを周りの人たちと分かち合えたらいいなという気持ちがあります。だから今日の試合も一生懸命準備しましたし、今後も頑張り続けるつもりです。
――この5名の選手で3回Worldsに出て準優勝1回と優勝2回を果たしチームワークの良さが証明されたと思うのですが、今後Faker選手以外の4名の選手が契約満了を迎えると聞いています。もちろん来年も共に戦うこともできますが、バラバラになって敵同士となるかもしれません。デリケートな問題だとは思いますが、各選手の考えやどれぐらいチーム側とやり取りしているかについて言える範囲で教えていただけるとありがたいです。
Keria:とりあえず僕は来年ゲームできるかどうかもわからない状況なので……。
Gumayusi:僕が代表してお答えします。まず契約に関してはデリケートなテーマなので、ここでお話するのは難しいです。僕らはすでにこのメンバーでたくさんの思い出がありますし、本当に良いメンバーだと思っています。個人的にはチャンスがあればまたやれると思っていますが、それは個々人の意見、そしてチームの意見によって変わってくると思います。
――Faker選手に質問です。本当に数多くの業績を立てられましたが、今後叶えたいことはありますか。また、先日パリオリンピックでキムウジン選手が金メダルを獲得しこれで自分を認められると言っていたのですが、今回5回目の優勝を達成して自ら上手くやったと感じられたのでしょうか。
Faker:今回の優勝によって自ら満足だとかよくやったという感じではなく、個人的には過程が残念だったと思っています。それで少しすっきりしない気持ちが残っているんですが、そういった気持ちを払拭するのが来年の目標であり、来年は過程においてもう少し成熟した人間になれるようにしたいです。
◆応援してくれたファンに感謝を
――Gumayusi選手に質問します。毎回こういうときに質問している気がしますが、Gumayusi選手の場合、実兄のINnoVation選手が先にプロゲーマーとなり世界チャンピオンになったことで目指す目標となったかと思います。ご自身もLoLで2回連続優勝を果たし、実兄の積み重ねてきた業績と比較して自分がどれぐらいやれたと感じていますか。また、Gumayusi選手は家族愛が強く見えるのですが、INnoVation選手や家族に向けて言いたいことを聞かせてください。
Gumayusi:ゲームタイトルが違うリーグであり、StarCraftは1対1でLoLは5対5のゲームなので、兄と僕の業績を比べるのは本当に難しいと思います。兄は本当に素晴らしいプロゲーマーだと思いますし、僕も今後さらに頑張るつもりです。家族のみんなからは、今回も優勝してすぐにスマホのメッセージでお祝いしてもらいました。遅い時間までいつも僕を信じて一生懸命応援してくれるので、心強い支えになってくれていると思います。
――kk0maコーチと、選手の皆さんに質問です。kk0maコーチは復帰して最初のシーズンで優勝しましたが、1年を振り返って感情がこみ上げる瞬間もあったでしょうし本当に辛かったときもあったかと思います。一番のピンチがWorlds選抜戦だったとおっしゃっていたこともありましたが、今大会までひっくるめて一番ピンチだった瞬間と、選手たちに感謝した瞬間はどんなときでしたか。選手の皆さんは、今回の優勝についてもし言いたいことがあればひとことずつお願いします。
kk0ma:今年ヘッドコーチとして入ってきて、選手たちにはいつも感謝しています。むしろスタッフの仕事をしてキャリアを重ねて感じることはファンの皆さんや選手たち、そしてスタッフの皆さん、全てのことひとつひとつに感謝の気持ちを感じています。そして今年を振り返って個人的に私がミスしたなと思う部分は、もう少し余裕を持ってやれればよかったんじゃないかということです。今年の初めにも健康なT1にしたいという表現をしたのですが、果たしてそれをちゃんと守れたのだろうかとも思うので、来年も同じくさらに健康なT1にしたいです。最後に、妻に一番に感謝の気持ちを伝えたいです。
Gumayusi:僕はステージで感謝を述べたい人たちがたくさんいたのに、ひとりひとり言及できなかったので……。チームメイトとコーチ陣、そしてマネージャーさんたちとCOOのアンウンギ氏と僕らの健康面で支えてくださった理学療法士の先生、そしていつも応援してくださっているファンの皆さんに感謝の言葉を伝えたいです。
Keria:僕が目標を達成するまで応援し続けてくれているファンの皆さんや家族、知り合いの皆さんに感謝しています。これからも信じてくださる分、うぬぼれず怠けることなく頑張り続けます。
Faker:僕もプロゲーマーとして、素晴らしい舞台で良い結果がついてきているのは運が良いことだと思うので、非常に感謝しています。プロゲーマーという職業も寿命がそれほど長い職業ではないのでいつも感謝しながらやっていこうと考えていますし、ファンの皆さんも僕のようにポジティブなエネルギーを受けてくれたらいいですね。応援するなかでネガティブな感情にならずに、できるだけ良いものを受け取っていってもらえたらと思います。
Oner:僕も応援してくださっている全てのファンの皆さんに感謝しています。最初の優勝も2回目の優勝も、夢を叶えたという意味ですごく嬉しかったです。この夢を叶えるためにたくさんの時間と努力を費やしましたが、頂上に立ったときにものすごくポジティブで良い気持ちになれるので、すべてのファンの皆さんもこの気分を一度味わってもらえたらと思います。来年もこういった気分が味わえるよう努力したいです。
Zeus:去年優勝したときも今年の優勝も、2回とも奇跡のように勝ち上がってきて優勝という背景があったかと思います。今年は第4シードから奇跡のように勝ち上がり、Worldsでのパフォーマンスは優勝できる資格があるチームだと思いました。だけど実を言うと、Summerでたくさんの辛いことを経験し、もっと良い成績が出せそうで出せなかったことが今年の悔しさとして残っています。
――最後なので、面白い質問で締めくくりたいと思います。今年のMSIでも、Gumayusi選手とKeria選手が終わったあと1日ほど休暇で旅行してから帰ったと聞いています。今すぐ試合会場を出たら一番何がしたいですか。
Keria:今一番したいことは、ご飯を食べたいです。そして僕はサッカー好きなので、ロンドンに来たらサッカー場に行ってみたいと思っていました。そして明日ありがたいことにトッテナム側から招待していただけたので、みんなで行く予定になっています。楽しんでこようと思います。
Gumayusi:僕も勝利後にみんなで食事するのが意味深いと思っているので、美味しいものを食べに行きたいです。それからヨーロッパは街が素敵だからなのか夜道を散歩するのがロマンチックだなと思ったので、軽く散歩したいですね。
Faker:僕は最近チェスが楽しいので、チェスをやると思います。
Oner:今すぐだと、横になりたいですね。でもお腹も空いているので、ご飯を食べたいという気持ちもあります。
Zeus:偶然にも今年のホテルが、去年MSIでイギリスに来たときと同じホテルなんです。去年は敗退してホテルで食事をしてから悲しく去った思い出があるんですが、今年は優勝してみんなでホテルで食事するという話が出たので感慨深いですね。それとスイスステージが終わってから記者の方に、ファイナルの次の日にトッテナムの試合があると教えてもらったんです。それをこうして叶えられるのが不思議だなと思います。