人気ストリーマーの加藤純一さんがオーナーを務めるムラッシュゲーミングは、VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Advance Stageにて「配信試合まで進出する」というチーム結成時からの目標を達成。翌2024年のSplit 1ではMain Stageへの進出を果たしました。
そして、Split 2のAdvance StageではSCARZに敗北を喫したものの、Crest Gaming Zstにマップスコア2-1で勝利し、無事にMain Stageへの残留を決定させました。
Advance Stageでは新エージェントの「クローヴ」にセージ、フェニックスを加えた独特な構成「不死鳥構成」が話題を呼ぶなど、とにかく話題に事欠かないムラッシュゲーミング。不死鳥構成の意図はなんだったのか、そしてオーナーである加藤純一さんはチームにとってどのような存在なのか、Biju選手に伺いました。
◆millionとBijuの喧嘩、加藤純一による鶴の一声
――改めて、今振り返ってSplit 1はどのようなシーズンだったと感じますか?
Biju:Split 1はチーム結成から最も良い結果が出た大会でした。Split 1で新しくReitaさんが加入し、補強したからこそ「結果を出さないと」というプレッシャーもありましたが、少しは満足できる結果です。ですが正直、これからどんどんハードルが上がっていく不安もあります。
――Split 1で「もっとこうしておけば良かった!」みたいなものはありますか?
Biju:Main Stageの中盤はZETA DIVISIONさんのオフィスをお借りして顔を合わせて練習や試合に臨むことができました。集まってプレイしてから良くなっていったので、もっと早くやっていればもう少し良い結果を残せたかもしれません。
――ブートキャンプは大きな存在であったと。
Biju:そうですね。面と向かって話し合うこともできるし、上手くいかずにどんよりした雰囲気になってしまったスクリムの後でも、最後にご飯行ったり雑談したりと、気持ちの切り替えのしやすさがオンラインとは違います。
――ブートキャンプやSplit 1を経て、チームの結束力も高まりましたか?
Biju:なんだかんだ、定期的に喧嘩はするんですよ。よくSNSなどで「またmillionとBijuが喧嘩してるよ」と言われますが、あながち間違いではないです(笑)。でも、死ぬほど真面目にやってるからこそ意見がぶつかり合うんです。そして結果的にオーナー(加藤純一さん)が出てきて収まって、というのを繰り返して結束力が……高まってるんですかね?(笑)
――衝突を繰り返しても、致命的な問題にはならないんですね。
Biju:なりかけています。
――あ、なりかけてはいるんですね(笑)
Biju:でも最終的にオーナーが出てきて収まるんです。オーナーを含めた全員で話し合うことで落ち着きます。もちろんオーナーは試合の戦術的なことにはガッツリ関わっていませんが、間を取り持ってくれています。
――やはりオーナーである加藤純一さんの存在は大きいんですね。
Biju:多くのメンバーは、加藤純一さんが好きでこのチームに入っています。納得がいってなくても「加藤純一がそういうなら……」と落ち着いて仲直りできちゃうんですよ(笑)
――試合の前後など、そのほかの場面で加藤純一さんとコミュニケーションを取ることはあるんですか?
Biju:大会の前には毎度ボイスチャットに来て「喝」を入れてもらっています。「頑張ってね」程度ではありますが、僕らにとっては“加藤純一は神”なので「あぁ、ありがとうございます!」となります。
――心の支えになっているんですね。
Biju:あと、いつも言われるのが「もう少し頑張れば人生変わるから、お前ら自身のために頑張れ」ですね。
◆「不死鳥構成」は“次のメタ”を予言している?
――Split 2へ向けて、チームはどのように変化しましたか?
Biju:アナリストのateさんがインゲームコーチになったのがまずひとつの変化です。やはり人とのコミュニケーションには向き不向きがあるため、そういう意味で試行錯誤をした結果でした。ateさん自身がメンバーとコミュニケーションを取るのが好きで、友達のようにカジュアルに話しやすい人柄なので、試合中の間違いの指摘も柔和になります。もうひとつは、millionさんのプレイスタイルです。
――「million選手のプレイスタイル」ですか。
Biju:はい。これまでは比較的自由にプレイしてもらっていて、刺さる場面もありつつ、フォーストブラッドなど甘えたプレイも少し目立っていました。手っ取り早く直せるものとして、millionさん含めて話し合ったうえで、堅実なプレイや味方と合わせるプレイを増やしてもらったんです。Split 1でも多少できていたチームの連携をより強化した形です。
――million選手はどんな反応を示していたんでしょうか。
Biju:最初は、これまで培ってきた勝負勘などが押さえつけられてしまっているような印象を受けていたようです。正直少し揉めました(笑)。最終的にはオーナーが「まずは性格から直していかないと、協調性のあるプレイはできないよ」という助言をmillionさんにしていましたね。
――ここでも加藤純一さんの提言があったんですね。
Biju:的確なアドバイスをしてくれます。『VALORANT』のランクは低いはずなんですけど(笑)
――Advance Stageのサンセットではクローヴ、フェニックス、セージなど尖った構成で実況のふり~ださんは「不死鳥構成」などと表現していたほか、バインドではレイナをピックするなど、ややオフメタな構成がみられました。Advance Stageのために用意した構成なんですか?
Biju:違います。初見殺しのためではありません。ateさんが次のメタは“撃ち合い”と考えていて、そのうえで自分たちに合ったエージェントをピックしているんです。例えばバインドのBロングでは、自らスモークを炊いて抜いたり、コンタクトで取りに行ったり、身体で勝負をしていきました。
――なるほど、次のメタは“ガンファイトメタ”であると。
Biju:そのようにateが言ってました(笑)。ヴァイパーやスカイなど、アビリティーがどんどん弱くなっているので、アビリティーが足りないところも出てきます。セージやクローヴなどで人数を増やしつつ、積極的に撃ち合ってエリアを取りに行くんです。スクリムでの手応えも十分でした。
――次のメタを先取りしているんですね。
Biju:そのつもりです(笑)
◆「僕はロスター変更のときに最初に名前が挙がる」
――本放送の試合後インタビューではBiju選手とReita選手で朝の5時まで話しをしていたというエピソードが飛び出していましたが、どんなお話しをされていたんですか?
Biju:Absolは17歳で大舞台で戦うすごい若手で、Reitaさんは深い経験があって、Tonboさんとmillionさんもプロチームの経験があるなかで、僕はロスター変更となったら最初に名前が挙がる人間だと覚悟しています。言うなればポッと出の人間ですから。
――いつからそのようなことを考えていたんですか?
Biju:Split 1のときからそうでした。オープン予選でRIDDLEに一度負けたとき、次も負けてしまったら自分から辞めようと思っていました。今回も似たようなもので、Main Stageに行けなかったら、なにかしらの変更が入ると感じていたんで、そういう不安を「これ負けたらどうなっちゃうんだろう、もしかしたら無職になっちゃうかもね?」と、Reitaさんに相談していました。
――大きなプレッシャーを感じていたんですね。
Biju:勝手にプレッシャーを感じちゃってます(笑)
――では、Split 2の目標を教えてください。
Biju:やるからには日本一を目指します。ただ、まずはオフライン(ベスト3)の舞台を目指しています。あとはTonboさんとmillionさん、自分を含め結成メンバーのひとりとして、Reitaさんや期待の新星Absolがいて、そしてオーナーが加藤純一で、こんな良い条件が揃っているチームは他にありません。今まで以上に、このメンバーで勝ちたいという気持ちが強くあります。
――最後に、一人の『VALORANT』競技者としての目標を教えてください。
Biju:僕は元々セミプロで、実績の無い状態でのスタートでした。それでもこうやってMain Stageに出て、綺麗に撮影してもらって、ここまで来ることができました。ある意味、視聴者やファンの方に近い存在だと思っています。多分「Bijuより俺の方が強いぜ」と思いやすくて、目標にしやすいんじゃないでしょうか。みんなの目標やお手本になれるような存在になっていきたいです。
“加藤純一”というオーナーのもとで戦えることについて語るBiju選手の目は爛々と輝き、million選手との衝突などチーム内での問題すらも楽しんでいるような、ムラッシュゲーミングでいることに喜びを感じさせる印象を抱きました。配信試合、Main Stageと徐々にステップアップをしているムラッシュゲーミングは、今大会でオフラインの舞台を目指します。
VALORANT Challengers 2024 Split 2 Main Stageは5月20日(月)より開幕。ムラッシュゲーミングの初戦は同日の第三試合、NORTHEPTIONと戦います。