全戦全勝。まさに「圧倒的」という言葉が相応しい強さを見せつけ、日本地域の『LoL』公式大会「LJL」の第1スプリット「Forge」をREJECTが制覇しました。
アジア地域の新リーグ「LCP」設立に伴い、今季から新たなフォーマットとなってスタートしたLJLは「Forge」「Storm」「Ignite」の3スプリット制を導入。オープン予選となったことで出場チームの陣容も様変わりしましたが、そこに新たに吹き込んだ新風がREJECTでした。
今回は、1月の『LoL』部門設立の電撃発表からわずか2か月という短期間で瞬く間に国内LoLシーンのトップへと躍り出た日本を代表するプロゲーミングチーム「REJECT」から、『LoL』部門のチームメンバーと特徴を紹介します。
◆実績ある若手とベテランが融合したメンバー
TOP:Kinatu
近年は「福岡ソフトバンクホークス ゲーミング(SHG)」や「Sengoku Gaming」で活躍していたKinatu選手。若くしてFPSタイトルでプロとして活躍し、18歳から『LoL』に転向しての「Rascal Jester」での鮮烈なデビューが記憶に残っている方も多いのでは。
タンクを求められることも多いTOPですが、メタを問わずファイターをピックすることが多く、エイトロックスやナーで集団戦での活躍ができる選手。冬シーズンはどのTOPレーナーもレーンスワップへの対応が求められていましたが、スワップのないメタで一層パワーを発揮できるタイプなのではないでしょうか。
昨年末にはKRサーバーでのランクにも挑戦し、高い勝率を維持したまま一気にチャレンジャーへと到達と、国内では敵なしと言える実績の持ち主。ちなみに『LoL』の統計や仕様にもめちゃくちゃ詳しい知識の泉なので、普段使いできるデータや小ネタを紹介してくれるSNSにも注目です。
JG:Forest
昨年のSHGでの活躍も記憶に新しいForest。笑顔が素敵な愛され系のキャラクターですが、韓国の「T1」の下部組織出身とあってニダリーなども使いこなすフィジカルの高さが特徴で、難しいダイブやエンゲージを個人技で成功させてしまうシーンも数多く見られるJGです。
2024年シーズンは初めての海外地域挑戦ということもあり周囲と動きが揃わない場面も散見されましたが、インタビューやチームから公開される動画を見ていても2年目とは思えないほどに日本語での会話がスムーズになっている姿が確認できます。
昨年はWorldsの舞台も経験し、さらに高水準なプレーへと進化中。Forest選手のアグレッシブさにチーム全体で連動できる状態がREJECTにとっての完成形と言えるかもしれません。
MID:Recap
サブ選手時代の2017年から2023年までLJLでMIDとして活躍してきた、「りきゃさん」の愛称でも親しまれるRecap選手。1年のブランク明けでの参戦となりましたが、スキルの高い韓国人選手がひしめくレーンで長年スタメンを張ってきた実力が健在であることを証明してくれました。
柔軟なドラフトに対応できる幅広いピックプールも魅力ですが、何より劣勢の試合でも絶対に大崩れしない安定感が大きな武器。ライズやアジール、ビクターなどのメイジを渡せばしっかり仕事をしてくれる職人タイプと言えるでしょう。
コーチングや個人配信ではその穏やかな人柄がよく伺えますが、チームメイトには意外と鋭いコメントをするところもあるという情報が各所から伝え聞かれています。
BOT:Samver
今季のREJECTで唯一の“LJL初参戦”となるのがADCを務めるSamver選手。前所属は韓国1部LCKの「OK BRION」で、2024年は1部でレギュラーを張っていました。今年24歳を迎えるシーズンで、キャリアも豊富な“即戦力”としてキャリーラインを担います。
過去のデータではヴァルスやMF、ジンなどオーソドックスなマークスマンがピックの中心でしたが、LJL Forgeの「DetonatioN FocusMe Academy」戦ではサミーラをピックして15キルの大立ち回り。オールイン構成も採用できるとなればチームとしても戦略の幅が広がること間違いなしでしょう。
圧巻だったのは準決勝の「Burning Core Toyama」戦で見せたジンのパフォーマンス。Wスキルを視界外でも次々と命中させてキルを獲得したかと思えば、35分近いゲームを0デスで終えており、その溢れるキャリー力を見せつけてくれました。

SUP:Raina
SUPを務めるのはベテランのRaina選手。ゴリゴリのキャリータイプのKR選手からデビューしたての若手までBOTデュオを組んできた経験を持ち、2024年はBCTでコーチとしても活動していました。
選手専任に復帰した今季はレナータ・グラスクで試合を動かすシーンも多く見られますが、やはり持ち味はタンクチャンピオンでのイニシエート。中でもレルの扱いは随一で、LJLファンの方は「Rainaと言えばレル。レルと言えばRaina」というイメージを持っている方も多いのでは。
実は「REJECTには社員として入社予定だった」という背景もSNSで明かしていたRaina選手ですが、コーチ経験者らしい視点でもチームの組み立てに貢献しており、躍進には欠かせない存在でしょう。
FISTBUMPでは優勝時のインタビューも公開しています。
◆コーチ陣も強力な布陣!
ゼネラルマネージャー:HW4NG
ゼネラルマネージャーを務めるのはHW4NG氏。2015年に「DetonatioN FocusMe(DFM)」に加入。その後も「Rascal Jester」や「7th Heaven」での選手活動を経て、2019年からは「V3 Esports」のコーチとして活動してきた、まさに「LJLの歴史を見続けてきた」と言える大ベテランです。
配信上ではSamver選手らの通訳係を務めるなどコミュニケーションのサポートもこなしている姿が見られますが、何よりも期待がかかるのは現在も活躍中の選手たちを輩出してきたその育成手腕。これからREJECTがより強固なチームとなるためには、HW4NG氏による有望な日本人プレイヤーの発掘・育成が欠かせなくなっていくでしょう。
ヘッドコーチ:Vical
2013年に韓国で指導者キャリアをスタートさせると、中国、トルコやラテンアメリカなどさまざまな地域で活動してきた敏腕コーチ。昨年はSHGを率いてチームをWorlds出場へと導くなど「LJLでは1度も下位になったことがない」という恐ろしいほどの実績を持つコーチで、筆者もロスター発表時にはコーチの名前を見て「REJECT、ガチだな!」と感じたものです。
ドラフト段階から狙いが明確なバンピックを行うコーチで、最新のメタに選手の得意ピックや相手のウィークポイントを上手く織り交ぜていく柔軟性が魅力。Kinatu、Forest、Recapは過去にVicalコーチの下でプレイした経験もあり、始動後すぐに高い完成度でのゲーム運びを実現できる要因となっていたのではないでしょうか。
コーチ:TANA
複数の韓国チームで活躍したのち、LJLに参加し「FENNEL」と「V3 Esports」でTOPレーンを務めたTANA氏が今季からコーチに。試合への影響力が大きいJGやMIDに韓国籍選手を据えるLJLチームが多い中で「TOPからキャリーする」という難しいミッションを求められ、それを実現してみせた試合の数々は今も印象に残っています。
昨年までもSHG Evi選手の国際戦に向けた1vs1練習の相手を務めるなど、マッチアップ理解の高さが際立っており、Kinatu選手をはじめレーナーにとって非常に心強いコーチになるはず。初来日の時点で日本語が堪能だったスペックの高さで、年齢的にもコミュニケーション的にも選手とコーチ陣の橋渡し役にもなれる存在です。
◆LCP進出へ、内容も求められる戦いが続く
メンバーもコーチングスタッフも、まさに「今年のLJLを制する」ために組み上げられたと言える陣容のREJECT。今季は「LCP出場権獲得」を大きな目標に掲げており、LJL Forgeの無敗優勝で順調な船出となりました。

LCPへの出場権を獲得するためにはLJLで優勝して「LCP昇格/降格トーナメント」への進出が必須条件。そこでVCS(ベトナム)、PCS(環太平洋地域)、OCE(オセアニア)、上記以外の地域からの「ワイルドカード枠」のチームと共に、LCP下位チームを含めた対戦を勝ち切らなければなりません。

その試金石とも言えるのが、現在REJECTがLJLに並行して参加中の「Asia Masters 2025」。同リーグはアジア各国のTier2リーグのチームが参加しており、いずれライバルとなるであろう「Deep Cross Gaming」や「Frank Esports」も出場。REJECTはLCK「Hanwha Life Esports」のアカデミーチーム相手に白星を挙げるなど奮戦を繰り広げました。
世界を目指すためには国内では圧倒的な内容が求められますが、3月13日には長年LJLを牽引してきた「Sengoku Gaming」も強力なロスターでの参戦を発表。3月22日からオープン予選が開幕し、4月から本戦を迎える「LJL Storm」ではREJECT包囲網の様相を呈することも予想されますが、このまま快進撃が続くのか、注目です!