「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】

「VCT Pacific」の韓国語放送でキャスターを担当されているキムスヒョンさんにお会いする機会があり、色々とお話を伺ってきましたのでそのときの模様をお届けします。

VALORANT インタビュー・コラム
「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】
「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】
  • 「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】
  • 「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】
  • 「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】
  • 「日本のVALORANT人気はすごい、チームとファンの関係も羨ましい」―韓国女性キャスター・キムスヒョンさんに聞いたZETA、DFMの印象や急成長する韓国『VALORANT』の今【VCT Pacific インタビュー】

今回、筆者はVALORANTのアジア大会「VCT Pacific Stage1」の取材で韓国を訪れているのですが、韓国語放送でキャスターを担当されているキムスヒョンさんにたまたま別件でお会いできる機会がありました。しかもインタビューまでさせていただけるとのことで色々とお話を伺ってきましたので、そのときの模様を早速お届けしたいと思います。

◆韓国は国際大会でぶつかり続けていた壁を乗り越えた

――今回はインタビューに応じていただきありがとうございます。早速ですが、VALORANT eスポーツのどんな点に魅力を感じていて、なぜVALORANTキャスターになったのかについて聞かせていただけますか。

キムスヒョン:日本の皆さん、はじめまして。「VCT Pacific」でキャスターとして活動しているキムスヒョンと申します。VALORANTは単純なシューティングゲームではなく、各エージェントがスキルを持っていることに魅力を感じています。また、チームワークが重要なゲームであり、シーズンごとに変わっていく戦術を知るのも面白いですね。瞬発力も必要で緊迫感あふれるスポーツだと感じていて、私自身もとても楽しくお仕事させていただいています。

私がキャスターになった理由は、VALORANTが世界的に人気を博しているのを見て、自分も共に歩んでいきたいと思ったからですね。

――その世界的な人気種目であるVALORANTで、韓国チームが急成長を遂げている印象があります。昔から韓国はRTS・MOBA優勢でFPSはそれほどでもなかった印象もあるだけに、いまの韓国のVALORANTの実力をどうご覧になっていますか。

キムスヒョン:おっしゃる通り韓国はRTS・MOBAで実力を発揮していますが、それは韓国がそういったジャンルのゲームをする文化だったからだと思います。以前はFPSが好きな人が少なかったんですが、OverwatchやPUBGが登場してから徐々にFPSを楽しむ文化が拡散し、FPSもメイン種目になる流れがやってきました。今のVALORANTで花開いたのは、ユーザー数が増えて良い選手を発掘する機会が増えたからだと思います。

戦略面で言うと、例えばDRX。VALORANTの黎明期から素晴らしい戦略を見せるチームだという評価を受けながら成長を遂げ、そこへさらに選手たちのフィジカルまでついてきました。昨年はGen.G、今年はT1が国際大会で優勝を果たしたのを見ると、これまで国際大会でぶつかり続けていた壁を、ひとつ乗り越えたのではないかと感じています。

――では今度は、韓国での人気についてお伺いしたいです。韓国ではLeague of Legends(LoL)eスポーツが不動の地位を築いていると思いますが、VALORANT eスポーツはどれくらい人気があるのでしょうか。「Masters Bangkok」で韓国語放送の同接が過去最高を記録したそうですが、以前と比べて人気は上がっていますか。

キムスヒョン:正直LoLと比較すると、まだまだ道のりは遠いですね。ですが、VALORANT自体の人気で見ると、韓国で大会が初めて開催されたころは視聴者数が数百人しかいなかったんです。いまは1万人を軽く超えていますから、当時と比べたらものすごい成長を遂げたと思います。「Masters Bangkok」ではT1が優勝したことでLoLのT1ファンたちも注目するようになり、VALORANTが面白いと感じてもらえたようです。ただ、LoLほどの人気を得るにはFaker選手のようなスーパースターが必要だと感じています。シーンをけん引するような選手を発掘し育てていくことができれば、さらに人気種目になれると思います。

◆国際大会3位になった当時のZETAは「少年漫画の主人公」

――日本のチームはZETA DIVISION(ZETA)が一時期に比べると苦戦している部分もありますが、DetonatioN FocusMe(DFM)がPaper Rex(PRX)に勝利するなど可能性も見せています。日本のチームのレベルや印象はいかがですか。

キムスヒョン:日本のチームは絶対に勝たねばならないという真剣な姿勢が見てとれると感じています。また、フィジカルの強い選手が多く、試合中に自分たちの判断で雰囲気を変えることも上手いですね。ZETAはものすごく高いところまで行っていまは少し苦戦していますが、再び上がってきているところなのかなと。DFMは連敗の沼に陥ってはいたものの、もともとMeiy選手のフィジカルが韓国ファンの間で深く印象に残っていて、基礎力のあるチームだと見られていました。「VCT Pacific」を通じて戦略的な部分が伸びれば、さらに競争力を持てるようになるだろうと期待されています。

――では、韓国での日本チームの人気度はどのぐらいなのでしょうか。先ほどMeiy選手のお話も出ましたが、日本チームの中で特に人気の選手はいたりしますか。

キムスヒョン:ZETAは、国際大会で3位になったおかげで認知度が高いです。実は当時ZETAについて「少年漫画の主人公」だと我々キャスター陣が放送で言い続けていたんですよ。我々が応援していたDRXがまるで少年漫画の悪役のような立場になってはしまうのですが(笑)、ZETAが感動的なストーリーを築き上げていくのを見て韓国のVALORANTファンもZETAを応援していました。DRXに勝ったんだからもっと勝ち上がってくれ!みたいな。

人気でいくと、もう引退してしまいましたがLaz選手の人気が高かったですね。彼のリーダーシップは本当に素晴らしく、チームが上手くやってもやれなくてもポーカーフェイスで激励する姿が印象的でした。それとDep選手の爆発力あるプレイがとても男らしく、外見も含めて韓国人が好きな男性像のような感じでかっこいいと言われています。

DFMは連敗中でも、Meiy選手だけは平均バトルスコア(ACS)がずっと高かったんです。それでMeiy選手の存在感が大きく、前回の「VCT Pacific Kikioff」でもDFMは今年何かやってくれるんじゃないかという感じで見られていました。それに、韓国人は韓国人選手がいるチームに当然興味を持ちますよね。akame選手とJinboong選手が合流して、Meiy選手とともに戦力が底上げされるんじゃないか、と注目されています。

――日本リーグの「VALORANT Challengers Japan」は視聴されていますか。もし視聴されているなら、どのように見ているか教えてください。

キムスヒョン:有望株がいると聞いたら見るようにしているので、もちろん見たことはあります。実は日本語に興味があって、全然できないんですけど聞いていて何となくこんな意味かなとか想像してみたり(笑)。日本はVALORANTの人気がすごいじゃないですか。だから韓国の視聴者は、日本チームが敗退すると同接数の心配をすることもあるほど日本での人気を実感しています。

――「VCT Pacific」でも日本からの観客が多いですよね。

キムスヒョン:日本から観に来てくださる方が多くて本当に驚きました。一番すごいなと思ったのが、DFMが初めて勝利した日ですね。観客席で日本のファンの皆さんが泣いているのを見て、本当に熱狂的なファンがたくさんいるんだなと思いました。

◆ストーリーを楽しませるのもキャスターの役割

――eスポーツの女性キャスターは男性に比べると少ないと思いますが、女性キャスターならではの難しい点や気をつけていることがあれば教えてください。

キムスヒョン:最初は女性であるというだけで注目され、先入観でゲームを本当に理解できているのかという目で見られるのが大変でしたね。加えて女性の声は男性より高いので、視聴者の皆さんにうるさいと感じさせてしまう可能性があるという心配がありました。幸いなことに私の声は低めなので、オファーをくださったプロデューサーさんにも長時間の放送に耐えられる声だと判断していただけたようです。また、放送時には両側に男性解説陣がいて、彼らがすごく低い声を出すんですよ。なので私も普段よりさらに低めに喋るようにしています。

そして本当に重要なのは専門性、ゲームに対する理解度が最終的には評価の対象になると思うので、一生懸命勉強しています。そもそもVALORANTが好きで始めたことですし、韓国でサービスが開始されたときも私はベータのときから一日中PCの前に座ってプレイしていました。それぐらい大好きなゲームなので、その思いを証明するためにも毎回頑張って準備しています。

逆に女性ならではという意味で私がもっとできるのではないかと考えているのが、感性的な部分です。感情面でさらに視聴者の皆さんを試合にのめり込ませることができればと考えて、緊張感を与える表現や声のトーンを工夫しています。eスポーツには単純にゲームを楽しむだけでなくストーリーがあるので、それをどれだけ楽しませることができるかというのもキャスターの役割だと思っています。

――日本のVALORANTのキャスター陣は選手に負けず劣らず非常に人気がありますが、知っている日本のキャスターはいますか。

キムスヒョン:あまり詳しくはないのですが、印象的なのはOooDaさんですね。彼の放送は結構見た記憶があります。長年キャスターをされていますし、ユーモアのある方というイメージもあって。韓国人は面白いものを見るのが好きですからね(笑)。それと今回のインタビューの前に日本にも女性キャスターがいると聞いて調べたんですが、見つけられなかったので気になっています。

――谷藤博美さんですね。彼女もアナウンサー出身で、VALORANTの女性大会「Game Changers」を中心に活動されています。

キムスヒョン:そうなんですね。ちょっと探して見てみたいと思います。実を言うと中国の放送も女性キャスターがどんな感じでやっているのか気になって、結構モニタリングしているんですよ。とはいえ中国の場合は女性らしい声のトーンで喋っているのを見ると、文化の違いを感じますね。それ以外の海外の女性キャスターも見ていて、いまはヨーロッパのPansyさんをロールモデルにしています。言語が違うので何とも言えない部分はあるものの、彼女の中継スタイルはすごく聞きやすくて、且つ、感情的にこみ上げてくるような最高の長所を兼ね備えているんです。

――興味深いお話を色々とありがとうございました。最後に、日本のVALORANTファンに向けて何かメッセージをお願いします。

キムスヒョン:日本のVALORANTファンの皆さん、とくに韓国まで来て選手を応援してくださっている皆さん、現地で熱狂的な反応を見せてくださっているおかげで同じ場所にいること自体が楽しく感じられています。日本のチームもどんどん実力を上げてきていますし、2025年を起点としてさらに強いところを見せてくれると思いますので「VCT Pacific」に多くの関心を寄せてもらえたら嬉しいです。

個人的に日本の応援スタイルを羨ましく思っています。応援しているチームが上手くいかなくても、批判するより激励して応援し続けている姿が印象的で、我々も学ぶべき点だなと思っています。それと私の夫が日本に留学経験があって、大阪にある大学を卒業しました。彼と出会ったときに日本語を話す姿が素敵だなと思いましたし、私も日本語を勉強したい気持ちもあります。J-POPも好きで日本に親近感を持っているので、VALORANTでも日本のチームが韓国チームとともに成長していってくれたらいいなと思っています。

《スイニャン》

FISTBUMPのメールマガジンでは、FISTBUMPに掲載されるニュースの中から、厳選した記事をお届けします!ライアットの注目ニュースを見逃さないようにしましょう!

スイニャン

スイニャン

韓国在住時にeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warのプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後、2009年ごろからさまざまなWEBメディアで取材・執筆活動を開始。2017年からはLeague of Legendsの国内プロリーグ「LJL」の公式日韓通訳に抜擢され、現在も複数タイトルで韓国人選手の通訳・翻訳活動を行なっている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。