しゃるるさんに聞いた“思いやりポスト”の真意―「『LoL』はバンピックから面白い」【直撃インタビュー】

Xのポストをきっかけに大きな話題を集めた『LoL』の“思いやり”。このポストの真意についてしゃるるさんに直接お話をお聞きしました。

League of Legends インタビュー・コラム
しゃるるさんに聞いた“思いやりポスト”の真意―「『LoL』はバンピックから面白い」【直撃インタビュー】
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「もっとバンピックフェーズで思いやりの心を持とう」

2月9日、ストリーマーのしゃるるさんが『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』のランクにおけるバンピックについての意見をXに投稿し、大きな話題を呼びました。共感する声もあれば、ピックの自由を主張する意見、どちらでもなく「思いやり」をミーム的に扱う人もいて、ピックについての議論が活発になる数日間となりました。

ピックへの考え方はさまざまですが『LoL』のバンピックについて知る機会はあまりなく、初中級者プレイヤー、観戦勢の方の中には「何が大事なのか」が難しいという感覚の方も少なくないのでは。

そこで今回はしゃるるさんに直撃インタビューを実施。バンピックやチームゲームのポイントや魅力を聞いてみました。

◆身近な目標になる大会と、腕を磨くランク

――今回は「思いやり」投稿をきっかけに、ピックやチームゲームについての考えを聞いてみたいと思っています。

しゃるる:よろしくお願いします。

――かなり大きな反響がありましたよね。

しゃるる:そうですね。例えば友達と5人でノーマルをやろうとなったら、フロントがいないから誰かがタンクをやったり、APが足りないからメイジをやるというように、誰しも構成を考えますよね。それがランクになると急になくなっちゃうよなと思って、あの投稿はそこを問いたいなという気持ちもありました。

インタビューにご協力いただいたしゃるるさん(写真は2024年の「Riot Games ONE」にて撮影)

――しゃるるさんは自ら大会に出場することもあれば、主催者として「しゃるる杯」を開催するなど、特にチームで一丸となっての『LoL』を重視されているように思います。

しゃるる:『LoL』は対人戦のゲームである以上、やっぱり「誰かに勝ちたい」気持ちがありますよね。そこで多くの人が持つ目標って、やっぱり「ランクを上げること」だと思いますし、それで強くなっていると自分で満足できるんだと思います。

ただ、ランクは途方もない道のりなので、苦しくなってくることがあると思うんですよ。ランク上げに固執していたのに、ある日突然「こんなに大変な思いをしてランク上げて何になるんだろう」って感じてしまう経験は僕もあります。

――『LoL』は特にソロでランクを回すことが多いですから、気持ち的にも大変ですよね。

しゃるる:ランクは途方もないので目標が定めづらいのですが、大会の場合は「このチームに勝ちたい」と目標が明確になるんです。そこに向かってチーム全員で熱量を持って頑張る経験はすごく面白いことで、僕も過去にそういったコミュニティイベントに参加させていただき「すごく良かった」と感じました。なので、そういう場を自分から提供したいなっていう気持ちが、大会をやるにあたってのひとつの原動力ですね。

「知り合いの配信者に勝ちたい」とか、あるいは「大会のためにこのチャンピオン練習しよう」とか。そういう気持ちが起きるとeスポーツとしての『LoL』の本当に楽しいところが見えてくるんじゃないかなって思います。

――過去のしゃるる杯を見ていると、ランクでは伸び悩んでいてもすごく良いパフォーマンスを発揮する方がいたり、本番に向けて急激に伸びる方もいたりと、面白いですよね。

しゃるる:そういう人って特定のチャンピオンを練習してきていたり、ちゃんと準備しているケースが多い気がします。とは言っても、めちゃくちゃ突出した個があれば大会でも大活躍できて、チームも勝てますよね。そして、そういう強い存在になるための場がランクなのかなとも思います。

超強い人を生む環境であるためという意味でも、ランクは誰もが「やりたいことをやる」で変な試合ばっかりになっちゃったらダメじゃないですか。そのためにも1人1人の意識改善、別にプロになるためとかじゃなくて、純粋に『LoL』はチームでやるゲームなんだからピックからちゃんと考えよう、みたいな考えが自分にはあるんですよね。

――そうしてチームゲームらしい試合が増えるとプレイの楽しみ方も変わるでしょうし、その先には競技シーンに繋がる要素もあるかもしれません。

しゃるる:僕の投稿にはいろんな意見が集まって「ピック論争」も巻き起こりましたが、あの後から「気持ちいいゲームができました」というDMもチラホラ届いていて、皆さんの意識が少しでもバンピックに向くきっかけになっていたらとは思いますね。

◆知る機会が少ない「バンピックの考え方」

――とは言え『LoL』のバンピックは覚える要素も多く複雑で、誰かに教わらないと流れやポイントがわかりにくい面もあります。ですので、改めてパンピックのポイントをお聞きしたいです。

しゃるる:わかりました。ここではまず大前提が2つあって、ひとつは「まだ数体しか使えるチャンピオンがない」という初心者さんは今回は例外です。合わせるピックも難しいので相手に取られないよう最初にピックすることをおすすめします。

そしてもうひとつは「みんな試合に勝ちたいよね?」という前提です。

――それはもちろんです。

しゃるる:であれば、まずはOP(オーバーパワー)チャンピオンの扱い方です。このゲームには環境によって「明らかに強い(OP)チャンピオン」が存在するので、そのチャンピオンは「使うかBANするか」を考えてください。

ランクはドラフトでチャンピオンを選ぶので、一番最初のピックでは強いチャンピオンを取りたいです。基本は先出ししても影響の少ないADCかJGが早いピック順に出るべきなんですが、その環境で強いチャンピオンを自分が扱えて、なおかつBANされていないなら、僕は一番上に行って問答無用でピックしますね。

「OPチャンピオン」の判断には統計サイトなどが参考になる(画像はOP.GGより)

――まずは「OPチャンピオンを取るか、BANするか」なんですね

しゃるる:これはシンプルに「勝つために一番強い動き」ですね。OPとされているチャンピオンは、先出ししても圧倒的に苦手なカウンターが存在しないからOPなんです。当然ながら勝率が高いチャンピオンがいるチームの方がデータ上は勝ちやすくなりますから、使わないなら相手に取られないようBANしましょう。

――続いて優先度が高いのはどういうピックだと思いますか?

しゃるる:次に早く取りたいのは、やっぱりADCやJGですよね。ADCはスモルダーのような特徴的なチャンピオンでない限り、ADCだけをピックした段階ではBOTレーンの勝敗には大きく影響しません。ちなみに、もしスモルダーがやりたいなら、先にピックした方が良いですね。

――スモルダーは超後半型のチャンピオンなので、先に取ることで味方は「じゃあ序盤に強いキャラにしようかな」という判断ができますよね。

しゃるる:そうです。これはロールとか強い時間帯に関係なく「やりたいピックが決まっている」なら、やっぱり1~3番目の早い段階でピックした方が良いですね。やろうと思っていたチャンピオンを相手に取られてしまって、もう味方に頑張ってもらうしかないピックなっちゃった...なんてことは誰しも経験があるんじゃないでしょうか。

何より「やりたいチャンピオンが選べている」時点で、もうモチベーションが高くなるじゃないですか。もちろん勝敗には操作の上手さなど色んな要素が関係しますけど、気持ちの入り方も大事だと思うんですよ。 やりたいチャンピオンや得意なチャンピオンの時ってパフォーマンスが上がりますから、心に決めたチャンピオンがいるならさっさと先にピックしちゃいましょう。

――先出しでも構わず出しましょうと。

しゃるる:このゲームって「カウンターチャンプを相手に上手くレーンをやり切る」のも面白さのひとつなんですよ。自分がやりたいチャンピオン先出ししてカウンターを出されても、上手く耐えてゲームする技術が磨かれていきます。高いレートでも、固定のチャンピオンしか使わない“OTP”の人たちって、大体は一番上でピックしていますよね。

――早いピックは「OP」「ピックが決まっている人」「ADC」「JG」の優先度が高いと。では続いて後半のピックです。

しゃるる:Xのポストでも「サポートは下の方がいい」という話をしたと思うんですが、それ以上に4番目と5番目のピックはこのゲームにおいて責任が重大です。正直に言って、そこで何をピックするかでゲームの勝敗が決まると言っても過言じゃないと思っています。

――単純に「見えているピックのカウンターを選びましょう」では良くないと。

しゃるる:そう、4番目と5番目はカウンターピックで遊ぶ場所じゃないんですよ。ここではチーム構成をまとめるピックが求められるんです。

そうなると、どうしても練度が低いチャンピオンを出さないといけなくなる可能性もあります。不慣れなチャンピオンだとちょっと微妙な結果になったりするから苦手な気持ちはわかりますが、だからと言って後半のピックで得意なチャンピオンを優先したら「なんか変な構成出来上がっちゃった」みたいなことになるんですよ。

もちろん「変な構成」だからって勝てないことはないですよ。ただ、勝ち方が難しくなるですよ。たまに「変な構成で難しい勝ち方をするのも楽しくない?」みたいな逆境魂がすごい人も見かけるんですけど、流石にやりやすい構成で勝ちたい人が多いと思います。

――後半はチームの勝ち方に影響を与えるピックなんですね。

しゃるる:例えば、1から4番目までに集団戦を重視したチャンピオンたちがピックされたとします。そこで5番目のTOPは相手のピックも見えているので「これ、フィオラなら対面に勝てる!」とフィオラをピックしてしまうと、集団戦をしたい4人&スプリットプッシュしたい1人の構成になりますよね。

ここでスプリットしたい人がレーンに勝てば作戦は成立しますけど、同じレート付近でマッチングしている以上、必ず勝てるとは限りません。かと言って集団戦での挽回に向いているチャンピオンでもないので、まったく存在感がなくて……ということが起こってしまうんです。

――構成が上手くまとまらないと、そうなってしまうと。

しゃるる:そうなんです。ただ、柔軟なピックって本当に難しいですから、ランクではありがちな展開です。もしスプリットをしたいということなら、先の順番でピックして意思表示すれば、味方もそれに合わせられるんです。

――そうした意思統一でCCやエンゲージ手段、APとADのバランスなどが整っている状態がピックが「締まっている」状態なんですね。

しゃるる:ちなみにこれは例外的な話ですが、韓国サーバーでは構成よりも「とにかくカウンターをピックしよう」みたいな人が多かった印象です。レーンではちゃめちゃに有利を取りにいって、完全に殴り合いのゲームにしてしまうケースもありましたね。ただ、そこまでカウンターを取ってボコボコに出来ることって、特に日本サ-バーの試合ではそうそうないと感じます。それならやっぱり構成を上手くまとめたいですよね。

――ついでに「見せピック」についても質問したいです。後半のピック順の時に「これを出そうかな、でも相手によるかな」くらいの時、チャンピオンを見せるかいつも迷うんですが、しゃるるさんの感覚ではどうして欲しいですか?

しゃるる:あー、それは変えるぐらいなら見せない方がいいと思いますね。それで先日、僕もピックで事故ってしまったんですよ。

――確かに、急にピックが変わるなら見せピックが逆効果になってしまう可能性もありますよね。

しゃるる:何のために見せるかって話ですよね。味方がそれも含めてピック考えてくれているはずなのに、アサシンが来たからメイジやめます、は正直ちょっと頼りなく感じちゃいます(笑)。

ちょっと苦手なチャンプが先に見えても、そういう対面との経験も大事ですから、打ち負かす気持ちでやれば良いと思いますね。

◆『LoL』の“考える面白さ”をもっとたくさんの人に

――こう聞くと最後のピックは責任感が重たく感じますが「全体を見て良いピックを探し出す」という面白さはありますよね。

しゃるる:そうですね。バンピックって、かなり面白いんですよ。これは大会でチームを組んで戦ってみるとすごく体験できる魅力で、自分も過去にコミュニティ大会でお世話になって育ってきたんです。

正直、ひとりでランクをずっとやっていてもこういう考え方ってなかなか身に着かないんですよね。それこそ、自分も昔は「思いやり」なんてひとつも持ち合わせてなかったですよ(笑)。なんとなく「タンクやった方がいいんだろうな~」と思ってSUPタンク専門でやっていましたからね。

そこからうまくレートが上がらなくなってジャングルを始めたんですが、やっぱりレーナーってダメージを出したい人が多いじゃないですか。そこで上手くタンクで補佐してあげたらレートが上がりやすいなと気付きはじめていた感じでした。

――本当に「何を出すと構成が良くなるか」は正解が難しいですし、自然とそれに気付ける人はいないだろうと思えるくらいに複雑ですよね。だからこそ「今は何が足りないんだろう」という考え方は大事ですし、個人的にはその考えで見るとプロシーンのバンピックも面白く観られる気がします。

しゃるる:本当に難しい要素ですよね。「締まった構成になるバンピックが良い」のは理解できるけど、バンピックについてどう勉強したら良いのか、自分が何をピックすれば良いのかわからないということも多いと思います。僕の目線では「今チームにタンクが足りないな」「CCが薄いな」ってわかるようになったら、『LoL』の理解度が一人前になった証拠じゃないかなと。

「強いチャンピオンは先に取り、後半で構成をまとめる」というバンピックのセオリーはプロシーンでも共通

――「あ、これってガリオが合うんじゃない?」みたいな気付きがある時は楽しいです。

しゃるる:MIDはガリオが正解に見えてくるケースが多いですよね(笑)。加えてフレックスピックの面白さもあって、パッとポッピーがピックされてもTOPかSUPかJGかで惑わされますし、相手が読み違えたら先出しでも有利になることがありますよね。

――話せば話すほど難しさと面白さが両方見えてきますね。

しゃるる:そう、難しいんですよね。誤解のないように言っておきたいんですが、こういう話題をするとルールを押し付けられたように感じて反発する人の気持ちもわかりますし、僕自身「こうすべきだろ」と押し付けるつもりはありません。

最近は特に自由に楽しむことを優先したいスタンスの人も増えてきた印象があって、それはそれで良いと思うんです。ただ「勝つ」という目的はみんな同じなので、チームでやるゲームだという意識でピックできる人が増えたら良いなとも思っています。

――自分で参加するだけでなく、しっかりバンピックがある配信者大会を見るのも経験値になるのではないでしょうか。個人的には“義務マルファイト”の強さを思い知った記憶もあります。

しゃるる:特にTOPのピックはそうかもしれませんね。

――『LoL』は時に「相手の嫌がることをするのが強い」と言いますが、それで言えば「まとまった構成と対戦する」のはかなり嫌なことですよね。

しゃるる:嫌ですね~。相手の構成が締まってるのにこっちはめちゃくちゃな構成だと「どうして俺たちはこうなっちまったんだよ」って思いながらゲームしています(笑)。良い構成が相手だと「このまま長くやっても勝てないな」ってモチベも下がり、精神的にもきついですよね。

――良い構成で勝った試合や、逆に相手の構成が良くて勝てなかった試合を自分の経験値にしていけるのが理想かもしれません。

しゃるる:もちろんすべての試合とはいかないと思いますが、合わせる意思を感じる試合が増えれば良いなと思いますし、そういう試合は最後まで諦めずプレイするメンタルにもなりやすいんじゃないでしょうか。もちろん「構成を締めるために得意じゃないチャンピオンを出して負けた」ということも起こると思いますが、それが上達の第一歩なんですよ。

例えば、どうしてもピックが最後になるとタンクを必要とされることが増えますよね。そこである人は「俺あんまりタンクやってこなかったし、ちょっとノーマルでタンク練習するか」となるかもしれませんし、ある人は「タンクは苦手だから上の方でさっとピックできるカウンターが少ないチャンピオンを練習しよう」となるかもしれません。

――もしかしたらレーンごと変更するきっかけになるかもしれませんね。

しゃるる:確かに「俺、この考えが出来るなら向いてるレーンここじゃないかも」って発見もあるかもですね。本当にこのゲームは考えるのが楽しいので、皆にもっと考えて欲しいです。既にいっぱい考えてくれている人もいるので、そういう人たちの気持ちを無為にしたくはないんですよ。

――バンピックの時間があれだけ長いのは考える必要がある証拠ですよね。

しゃるる:そうですね。いろんな対人ゲームがありますけど、自分が『LoL』が一番面白いなと思ったのは「たくさん考えるから」なんですよ。ピック段階でもゲーム中も、観戦していても考えることがいっぱいあって、めっちゃ面白いです。

――基本の解説からディープなお話まで聞けて面白かったです。インタビューありがとうございました!

しゃるる:こちらこそ、ありがとうございました。

《ハル飯田》

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ハル飯田

1993年、大阪府生まれ。一旦は地元で公務員になったものの、ゲームが好きすぎて気付いたらフリーライターに。他メディアではeスポーツ選手や競技シーンの魅力を発信することに注力したり大会でキャスターを務めたりもするのだが、インサイド&ゲムスパではもっぱら好きなゲームについて語ることで安らかな気持ちになっている。

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