
- League of Legends
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綿密に練られた作戦や瞬時の判断による高度な駆け引きが展開される『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の魅力を分かりやすい言葉で視聴者に伝える解説者。今回は競技シーンやストリーマー大会まで幅広いシーンで解説者として活躍し、『TFT』シーンでは実況も務めるキャスターのRecruit(@recruit_09)さんのロングインタビューをお届けします。
解説者としての知識の源やキャスターとしてのスタイル、名コンビ「イエリク」が世に受け入れられるまでの歩みや、解説者として「やりたいこと」まで、意外と知られていないRecruitさんのアレコレを聞きました。
――Recruitさんはどのような経緯で『LoL』と出会ったのでしょうか。
Recruit:一緒にゲームをしている友人グループがまるごと『LoL』に移行する流れになって「じゃあ俺も」という感じでしたね。当時は、SkypeにRTS(リアルタイムストラテジー)系のゲームを遊ぶ20~30人くらいのコミュニティがあって、そこで「LoLっていう面白いゲームがあるらしいぞ!」となっていたんですよ。
最初は結構舐めてましたね。それまで遊んでいたRTSはいくつものユニットを同時に操作・管理しないといけないので、それと比較して「え、このLoLって1体しか操作しなくて良いの?そんなに簡単なの?」と思ったんですが、実際にやってみたらめっちゃ下手でした(笑)。
――確かにそう表現すると簡単そうに聞こえますね(笑)。
Recruit:そうなんですよ。でもめちゃくちゃ難しいのでその1体だけを全然動かせなくて挫折したのを覚えてますね。エイトロックスが出た頃だったと思います。
――誰もが通る道をRecruitさんも経験されたと。
Recruit:ただ、一緒に始めた初心者組の中ではちょっとできる方かなという手応えもあったんですよ。なので続けたら上手くなれるのかもと思って1~2か月プレイしてランクに行ってみたら、ブロンズに配属されたんです。
――まだアイアンランクが無く、ブロンズが一番下のランクだった頃ですね。
Recruit:振り分け戦も全然勝てなかったので当然だし、最初は誰でもそうなのかな……と思っていたら、一緒に始めた人たちはみんなシルバースタートだったんです。しかも、そこからどれだけ頑張ってもブロンズから上がれなくて、1ヶ月スタックして「ちょっと上手い方だと思ってたけど、勘違いしてただけで俺は才能無いんだ」と思って、そこで1回引退しました。
――はっきりとした挫折ですね。
Recruit:そうでしたね。その後、日本語でプレイできる別のMOBAタイトルに出会いました。当時の『LoL』はまだ日本語化されていなくて、プレイするのも情報を集めるのも英語だと大変だったのも挫折の一因だったんですが、そのゲームは日本語で遊べてキャラも可愛い感じで、挫折後の自分にはちょうどいいカジュアルさだったんです。それからは半年から1年ぐらい、そのMOBAを遊んでいましたね。
ただ、その間も『LoL』の動画はちょこちょこ見ていて、それこそWorldsなどの大会も観戦はしていたんです。しばらく経ったある日友達に『LoL』へ誘われ、「引退したんだけどな……」と思いつつもちょっとやってみたら、MOBAの操作に慣れていたり別のゲームのキャラに例えることでチャンピオンの特性が理解できたりして、以前よりも遥かに上手くできたんですよ。
――“MOBA経験”の賜物ですね。
Recruit:ですね。遊んでいたタイトルが“ミクロ寄り”と言いますか、細かな操作や反射神経勝負になる要素が多かったのもあってハンドスキルが磨かれていたので、『LoL』に復帰してみても「俺、対面の人より上手いぞ」と感じられたんですよ。
そこですごく面白くなりましたし、ランクもどんどん上がるのが嬉しくて完全に『LoL』に戻りました。1ヶ月くらいでゴールドに行って、その後もプラチナ、ダイヤへとトントン拍子に上がれました。
――レーンや使用チャンピオンは覚えていますか?
Recruit:引退前はエイトロックスやトリンダメア、ガングプランクなどトップを押すばかりのチャンピオンで復帰後にシェン。その後シェンにリワークが入ったのもあり、実装されたばかりのゾーイを使いたくてMIDもプレイしましたね。
最終的にダイヤまで到達したのはSUPに転向してからでしたね。ノーチラスやカルマ、スレッシュなどサポート全般のチャンピオンを広く使っていたんですが、そもそもSUPをやろうとしたきっかけが「リソースを貰えなくてダメージも出ないロールで最大限やれたらかっこよくね?」みたいな、逆張り精神からでした(笑)。

――すっかりディープな楽しみ方へと進んでいきましたね。挫折からの復帰を果たしたRecruitさんの目線で『LoL』の魅力はどんな部分にあると感じますか?
Recruit:「毎ゲーム同じ展開がないこと」ですかね。自分は元々性格的にちょっと飽き性と言いますか、他の趣味も1~2か月くらいガッとハマったら飽きて別のものに行っちゃう、というタイプなんですよ。
ただ、『LoL』は毎回レベル1からスタートして全く新しいゲームになるので、マンネリ化を感じなかったですね。ロールを色々と変えても全く別の楽しみ方ができますし、チャンピオンごとでも楽しみ方が違うのが魅力的だなと思います。
――長くプレイしている人ほど実感している魅力ですね。ちなみに『LoL』プレイヤーの中でも他ジャンルも大好きなゲーマーと、意外と『LoL』以外のタイトルはそこまで遊ばないという方と2タイプあるように思うのですが、Recruitさんはどちらでしょうか。
Recruit:他のゲームもカジュアルには遊んでいますけれど、あんまりこだわりはないですね。昔からゲームはコミュニケーションツール的な感覚があって、友達とならなんでも遊べますし、『LoL』で一緒に遊んだ後に「なんか別のゲームも遊ぼうよ」というのも良いですよね。
――なるほど。Recruitさんをはじめキャスターの皆さんは『LoL』のイメージが強いですが、他にも色々なゲームを楽しまれているのかなと気になっていました。
Recruit:自分の配信が『LoL』ばかりなのは需要も考えてなんですが、競技シーンの観戦配信でも中身はかなり雑談メインで、実はコメントとずっと会話しています(笑)。やっぱり根本には「人と話したい」みたいな意識があるんでしょうね。
――もうひとつパーソナルな部分で聞きたいことがありまして、Recruitさんはサモナーネームが「カラオケ住んでる」でしたよね。それほどまでにカラオケがお好きなんでしょうか。
Recruit:めっちゃ好きですね。それこそ大学生時代とかは週2、3回通っていたくらいで、夜のフリータイムで入店して朝の閉店時間まで歌っていたことも結構ありました。キャスターを始めてからはさすがに頻度は減りましたけど、それでも多い時は週1で、少なくとも月1では行ってますね。

――それはかなりの熱量ですね。ご自身で飽き性と表現するRecruitさんの中でも『LoL』とカラオケは2大コンテンツと言えそうですね。
Recruit:そうですね。あとは結構変遷があって、小学生の頃はカードゲームが好きでしたし、大人になってからはお酒や音楽、最近は映画にもハマりましたし、ファッションも見始めて、途中でVTuberにハマったりもしました。
――だからこそ10年以上にわたって続いている『LoL』が際立ちますね。
Recruit:いやー、そうなんですよ。なんでこんな気性なのに『LoL』だけここまでハマっているのか未だに不思議なんですよね(笑)。
――現在はその『LoL』キャスターとして主に解説を担当されていますが、プレイヤーとして『LoL』に夢中になったところからキャスターになっていくにあたってはそのような過程があったのでしょうか。
Recruit:これも自分の性格的なところからなんですが、『LoL』がめっちゃ面白いなと思い始めてからは周りの人にも「このゲーム面白いよ!」と伝えたくて、コミュニティの中でおすすめしたり「こうした方が良いよ」と情報を教えたりと布教活動のようなことをしていたんです。
その当時はLJLもスタートしていて2年目に入ったころで、本格的に観戦するようになったんですが、実況解説のアイレボことeyesさん(@eyes1015)とRevolさん(@krevol)のおふたりがめちゃくちゃ試合を面白く伝えていて「俺もこうなりたい!」と感じたのがきっかけでしたね。
実況解説のおかげでプロ選手たちのプレイも一際かっこよく見えて、それを自分でも伝えたいなと思ったんです。
――やはり「アイレボ」のおふたりの存在は大きいですね。そこから実際に解説に辿り着くまではどのような道のりだったのでしょうか。
Recruit:俺は「今が楽しければ良い」精神で生きていて将来設計も立てないタイプなんですが、解説になるに当たっては結構ちゃんとした計画を立てました。というのも、当時はeスポーツキャスターで生活が出来ている人と言えばアイレボのおふたりや岸(大河)さん、OooDaさんと数人くらいで、自分がなれる確約も生活できる保証も全くないのに、なぜか「俺はなれる」という根拠のない自信があったんです(笑)。
親に「それは本当に仕事になるの」と聞かれても根拠のない説得をして怒られたり、『LoL』に没頭しすぎて大学の単位も全然取れなかったりしたんですが、それくらい謎の自信を持って解説を始めました。
――ものすごいエピソードですね(笑)。一体どのようなプランだったのでしょうか。
Recruit:まずはRevolさんという先駆者がいる訳ですから、Revolさんがどういった経緯でキャスターになったのかをちゃんと調べて、アナリストとしてチームゲームに関わった経験があることと、ブログを通して情報発信をしていたことがeyesさんの目に留まって解説者になったという経歴を知ったんです。
「これは俺も辿らなきゃ」ということで、まずは自分でプロのドラフト戦略に関する考察ブログを書いて情報発信に努めて、それをアピールポイントとしてLJL CS(※)に出場するチームに応募してアナリストのような経験を積ませてもらいました。そして、今度はその実績を基にコミュニティ大会や大学生リーグの解説者になれるよう動いていきました。
※LJLへのフランチャイズ制導入以前に実施されていた、入れ替え戦に臨むチームを決めるための予選大会
――ものすごく計画的ですね。
Recruit:きっかけは衝動的ではあったんですけど、ちゃんとプランは立ててましたね。お世話になっていたチーム関係者の方が大学生リーグの運営さんと仲が良くて、「(解説がやりたいなら)大学生リーグで実況をやってる人と組んでみない?感触が良かったらそのままのコンビで大学生リーグに出よう」と紹介してもらったのが、Jaeger(@Jaeger0446)でした。

――そこで出会いがあったんですね。
Recruit:そうなんですよ。なので一番最初にペアとして組んだのがJaegerで、考えたらもう10年くらいの付き合いになるのかな。
――そのJaegerさんのインタビューではおふたりの実況解説がLJL担当者の目に留まりデビューに至るというお話もしていただきました。
Recruit:そうですね。あの記事に書いてあった通りです。いろんなコミュニティ大会の実況解説をやりましたが、最終的にLogicool G Cupが1番大きかったのかな。
――なんと言いますか、当初の思惑通りですね。
Recruit:その当時eyesさんも「コミュニティで活動していない人は起用できない」と仰っていて、確かに実績も知名度もない人を急にポンと解説者として出演させても当然受け入れられないですよね。なので最低でも2~3年は活動していく必要があると覚悟していたんですが、ちょうど丸2年終わりの時に声がかかりました。本当に運が良かったことが1番の要因だなとも思いますね(笑)。
――新しいキャスターを迎える側のタイミングもありますから、決断が早かったのも良かったと言えますね。
Recruit:本当に(計画が)うまくいってなかったら俺の人生は今どうなってたんだろうなって思いますよ。今振り返ると、どう考えてもちゃんと大学に行って勉強しておくべきだったと感じます(笑)。
――それでも『LoL』の勉強と行動の甲斐はありましたね。
Recruit:そうですね。当時は本当におかしな生活をしていて、当時の4大リーグ(※)の試合を見た上でLJLも見て、余裕があればLCKの2部までチェックしていたので、「起きて『LoL』の試合だけを見て寝る」みたいな状態でした。
痩せているので「ちゃんとご飯食べてますか」とよく聞かれるのですが、当時は起きても朝食は当然食べないで試合を見るんですよ。数時間経って「そろそろ腹が減ったな」と限界を迎えたら買っておいた弁当などをレンジでチンするんですけど、その待ち時間が暇なのでまた試合を見るんです。すると、気付いたら4~5時間経っているんですよ。
※LCK(韓国)、LPL(中国)、LEC(欧州)、LCS(北米)のトップティア4地域のリーグのこと
――弁当の存在と空腹を忘れてしまうんですね。
Recruit:そうなんです。それで「やべ、チンしてたんだった」と思い出すと冷めきった弁当が待っていて、もう1回チンし直しますよね。その待ち時間でまた弁当のことを忘れて、その後ようやく食べるみたいな“1日1食”がざらにありましたね。健康に良くないですし、LJLのメイクさんにもドン引きされていました(笑)。
――完全に『LoL』“全振り”ですね。
Recruit:でも、ちゃんと大学に通っていたらこの生活はできないでしょうから、解説できるほどの知識は身に着かなかっただろうなとも思いますね。

――既に壮絶なエピソードを聞いた後なのですが、いざLJLで解説者としてやっていくにあたって今思うと大変だったことや苦労したことはありますか?
Recruit:『LoL』の勉強自体は大好きでやっていることだったので大変とは思わなかったんですが、それ以外の部分は大変なことしかなかったですね。
自分は人との会話がすごく好きで、このインタビューも楽しいです。当時もゲームしながら友達とワイワイ話すことも多かったんですが、そんな気軽な場合とは違って、解説者としての丁寧な話し方や視聴者に伝わりやすい喋り方が全く分からなかったんですよ。それはめちゃくちゃ難しくて、苦労しましたね。一般常識についても、大会を運営してくださる方との連絡やRiot Gamesの方とのやり取りは、今思うと結構失礼なことをやっちゃってたんだろうなと。
――公の場に出るにあたっての大変さがあったんですね。
Recruit:なにより1番大変だったのは、やっぱりLJL1年目ですね。学生リーグやコミュニティ大会は視聴者数も1000人規模と多くなかったですし、友達が見てくれていることも多かったので批判的な意見も全くなく、とんとん拍子に進んでいたこともあって「受け入れられているな」と、ちょっと調子に乗っているような部分もあったんです。
対してLJLはと言えば、当時は1番勢いがあったと言える時期で、ビッグマッチになると3~4万人が見ていたんです。そこに名前も知らない2人が急に出てきたような印象だったと思いますし、システムも「奇数試合目はアイレボ、偶数試合目はイエリク」というように、交互に担当する仕組みだったんですよ。
めちゃくちゃ完成度の高いアイレボの実況解説の後で、ぽっと出の何喋ってるのか分からないようなクオリティのイエリクが出てくる。しかもプロリーグで喋るには学生リーグ以上に「プロにしかない知識」が必要になって来るんですが、当時の自分はまだ知識が足りなかったんです。
――かなり研究に時間を費やしていても、実際に担当しないと見えてこないこともあるんですね。
Recruit:知識も足りず喋り方もおぼつかない俺が出てきて、次にアイレボのすごい実況解説が出てくるというのが交互にあるもんですから、余計に悪目立ちしちゃってめちゃくちゃ批判されたのを覚えています。今振り返ってみると小規模な大会で「上手くいってる」風な雰囲気で出てきたのに見てみたら何も足りていなかったので、当然のことでした。
さらにそこから悪循環に陥ったのが、目の前に完成度の高いアイレボというお手本があるので、当然参考にするんですが、どうしてもモノマネになってしまうんですよ。喋りの完成度自体は回数を重ねて上がってはいくんですけどクオリティは高くなくて、「アイレボ」→「アイレボのモノマネ」→「アイレボ」→「アイレボのモノマネ」という順番で出てくるもんだから「じゃあもう全部アイレボで良いじゃん」ってなっちゃったんですよね。
――迷走した時期があったんですね。
Recruit:何が正解なのかが分からなくて、めちゃくちゃ試行錯誤でしたね。
――そこから脱した、手応えを掴んだきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
Recruit:アイレボのおふたりやプロデューサーさんとも定期的に話し合ってはいたんですが、1年目の終わり頃に完全に自分を見失ってしまって、「俺らもう何やってもうまくいかないんですけど、どうすれば良いですかね」とeyesさんにガチ相談したことがありました。
その時に言われたのが「自分たちの色を出さないといけない」「君らは何がやりたいの」ということでした。解説者として何がやりたいのかを考えないといけないし、自分たちのオリジナルの良さがないと今後何にもならないと。学生時代にも定期的に言われていたことではあったんですけど、当時はウケが良かったので失礼な話ですが「別にこのままで良いじゃん」と話半分だったんですよ。
この危機に瀕してeyesさんの言葉がグッと刺さって、そこから「自分がやりたいことはなんだろう」「自分たちの強みはどこだろう」と1度現状を整理して、2年目から自分たちが受け入れられるために必要なことをプランニングをしたんですよ。
――そこでも先を見据えての行動を起こしたんですね。
Recruit:自分は「選手が今何を思ってプレイしているのか」「選手の良さを伝えていく」ことをすごくやりたかったというのと、『LoL』の面白さをカジュアルな層にも刺さるようシンプルに伝えたいという想いがあったんです。なので、まだ『LoL』を始めたばかりや未プレイの人、あるいは『LoL』はプレイしていても競技シーンは見たことがない人向けに方向転換をしたというのがひとつの変化でした。
あとは「今後の展開はこうなる」「ドラフトは次にこれが来る」という“未来予測”の解説はRevolさんがすごく得意で、バンバン当てていくことがありますよね。対して自分はあえてそういった展開予測を最小限にした上で、より「今のプレイはこういう理由で起こった」「現状こうなっているから、選手はこう考えて動いていると思う」という選手マターの内容に切り替えて差別化を図ったんです。
――なるほど。そう聞くとすごくロジカルですね。
Recruit:これは俺だけの話なんですけど、Jaegerとの実況と解説のスタイルについても変えました。eyesさんとRevolさんは「Revolさん、ここはどういうことですか?」「こういう理由なんですよeyesさん」という掛け合いのスタイルじゃないですか。これはものすごく面白い掛け合いになる一方で、実況が会話の流れを先導してやっていかなければいけないので、リソースがとんでもなく割かれるんです。
Jaegerもそれをやろうと思えばできるんですが、彼の一番の強みはシャウトキャスト、特に集団戦の実況ですよね。スキルを全部叫んでいくスタイルは学生リーグの段階から変わらずで、集団戦の実況については当時からeyesさんよりも上手いとすら思っていたので、世間に受け入れられるためには「まずJaegerのシャウトキャストをメインの武器に据えた方が良い」と考えたんです。
そのためにはJaegerのリソースを使わせる掛け合いのスタイルをやるのではなく、会話の流れ作りは俺の方で全部巻き取って話を俺が進めて、Jaegerには空いた時間で状況説明をしてもらう。そして集団戦の実況になった時には、Jaegerの映える実況を邪魔しないよう、リアクションは絶対取らないとも決めていました。
――そこまで徹底して作り上げられたスタイルとは知りませんでした。
Recruit:Jaegerの実況を引き立たせるためにしたことでしたが、自然と掛け合いスタイルとは差別化・オリジナル化ができましたし、ちょうど2年目か3年目のタイミングでSNS上で「Jaeger側の実況がやばすぎる」とバズったんですよ。
――遂に武器が刺さった訳ですね。
Recruit:「うちのJaegerの最高な実況がようやくみんなに伝わったぞ」って感じで、そこからは「Jaegerの実況良いじゃん」という見方とセットで俺も受け入れられるようになっていった感覚がありました。
このプランニングは2年目の最初にJaegerと1対1で話す機会があったのでちゃんと「状況整理だけやってもらったら、あとの話は全部こっちでやるから」とちゃんと共有してスタイルを確定させました。流石に「実況が神だから」とは面と向かっては恥ずかしいので言いませんでしたが(笑)。そこから時間をかけて洗練されていった感じですかね。
――確かにJaegerさんの実況は話題になりますが、その背景にはRecruitさんのプロデュースもあったということですね。
Recruit:プロデュースというと大げさですけど、Jaegerの実況がすごかったから認知されたので、本当にすげぇやつだなと常日頃から思っていますし、邪魔をしないようにしています。
――とはいえ、やはりふたり揃ってイエリクですし、私は話を振られた時のRecruitさんの「あー」「おーん!」というリアクションも好きです。試合に入り込んでいるのが伝わってくると言いますか。
Recruit:そうですね(笑)。やっぱりJaegerのテンションがあがると俺もつられて「うーん!」とか言うことはよくあります。

――ではLJLデビューから2、3年目で遂に手ごたえをつかんでからこれまででは、ご自身の変化は感じていますか?
Recruit:めっちゃありますね。認知されるようになった自分たちのスタイルを洗練しながら4~5年目くらいまで続けていたんですが、そこで「The k4sen」が始まったんですよ。
それまでもストリーマーさんのイベント自体はちょくちょくありましたが、やはり「The k4sen」をきっかけに大きなイベントが増えて、そこから「この『LoL』の面白さをどうすれば全く知らない人に伝えられるだろう」と思い始めたんです。
興味がない人になんとなくでも「このゲーム面白そうだな」と伝えたいと思って、最初は『VALORANT』に例えてみるなど色々と試行錯誤したんですが、やっぱりストリーマーさんの大会で一番刺さるのは「うちの推しが活躍してる!」と分かる瞬間で、すごくテンションが上がるんですよ。
これは自分自身が色んなVTuberさんやストリーマーさんの視聴者でもあるから分かる実体験で、推しがチームメイトから「ナイス!」って褒められてたら嬉しいじゃないですか。そう考えると、ゲームの内容で伝えるのももちろん大事ですが、それより「その人がどうフィーチャーされるか」をすごく意識し始めたんです。これって、俺の一番やりたいことでもあったんです。
――「解説者としてやりたいこと」を考えて辿り着いたカジュアルな層にも魅力を伝えることと、“選手マターの解説”ですね。
Recruit:そことちょうど噛み合って、ストリーマーさんの界隈で流行っているネタなどを取り入れた「The k4sen」向けのスタイルへと応用していけるようになったと思います。
印象に残っているシーンでは2025年の「VSPO! SHOWDOWN」の『LoL』BO3の最終戦で、もう全員がめちゃくちゃ上手くやった集団戦があったんですよ。なので誰を特にピックアップするかすごく難しかったんですが、TOPの一ノ瀬うるはさんのアーゴットがEスキルでBOTの白波らむねさんをピールしたところを「先輩の背中がめちゃくちゃ大きかった」と取り上げたんです。
後からSNSでも「あのシーンはアツかったな」「うるはさんのアーゴット良かったな」と盛り上がってくれている反響を目にしたので、大会の文脈に沿ってストーリーを拾っていくことの重要性は痛感しましたね。
――確かに競技シーンとはまた一味違った解説も魅力ですね。ストリーマー大会と言えば、2025年は「League The k4sen(LTK)」も担当されましたが、本当に全チームの情報を仕入れているのが伝わってきて驚きました。
Recruit:そうですね。LTKって4チーム×2ディヴィジョンで計8チームあって、それぞれにストーリーがあるんですよ。インターバル中にずっと喋れたこともあって、8チームがここまでどういう練習をしてきたか、どういう思いで対戦席に座っているかということは喋ろうと思っていて、チームごとに話せた情報の濃度の差はあったかも知れませんが、自分の信念に沿った解説が出来たかなと思います。
――見ている人にも伝わっていたと思います。
Recruit:それがキャスターのSyouryuくんからもすごくウケが良くて、年末に「キャスター飲み会」という配信をやった時に「選手のストーリーを考えるとリクさんのあの文言が良くて、僕も試合の前向上を用意しようと思ったんです!」という話をしてくれて、ストーリーを意識しているところを拾ってくれていたんだっていう嬉しさもありましたね。
――Syouryuさんの対戦開始時の口上はこんなところにきっかけがあったんですね。それにしてもLTKは練習配信も膨大だったので、5大リーグを全部見ていた頃と同じくらいに時間が必要だったのではないでしょうか。
Recruit:これはストリーマーさんやVTuberさんの文化に救われたなと思います。というのも、自分でアーカイブも見るんですがLJLやLCPもあってなかなかすべてはチェックできない中で、「切り抜き」がアップされているじゃないですか。重要なシーンをピックアップしてくれているので、パッと情報を拾えて本当に有り難かったですし、すごい文化だなと。
――LTK解説の裏には切り抜き動画アリ、だったんですね(笑)。
Recruit:「ありがとうございます」って思いながら見ていました。
――ストリーマー大会もそうですし、競技シーンでも1日でかなりの試合数を続けて担当されることもありますが、試合に向けて何か資料のようなものを準備されることはあるのでしょうか。
Recruit:昔は作ってましたけど、今はもう頭の中に入れちゃっている情報から応用が効くので基本的には作らないですね。例えば新パッチになって「このチャンピオンの勝率はどれぐらい動いたか」みたいな情報は、必要になりそうな数チャンピオンを事前にチェックして覚えておいて、もしチャンスがあれば「新パッチでアーリの勝率は2ポイントほどあがりましたね」と喋るようなイメージです。
――そうだったんですね。ドラフトでは特にバンピックの候補がすらすらと出てくるので何か資料があるのかと思っていました。ちなみに、競技シーンのドラフト解説は非常に難しい要素ではあると思いますが、やっぱり候補で挙げたチャンピオンが出てくると気持ちいいものですか?
Recruit:あれはね……めちゃくちゃ気持ちいいですね(笑)。普段なかなか言えないんですが、今でも覚えている気持ちよかったドラフト解説があって、「Worlds 2022」でDRXのBerylがSUPアッシュを突然ピックした試合があるんですが、それまで1回もピックされていなかったのに当てたんですよね。
レナータ・グラスクが当時めちゃくちゃ強かったんですが、ソロキューでカウンターとして研究されていたピックだったんです。それで「出るかもな……」と思って発言したら本当に出てきて、気持ちよかったですね。
――BO5のGame4で唐突にピックされていて相当予想外だったと思われますので、その気持ちよさも納得です(笑)。Recruitさんがこれまでに解説を担当した試合で他に印象に残っているものがあれば教えてください。
Recruit:めちゃくちゃ色々ありすぎたのでどれかというのは難しいですね……。DFMがベスト16に進出した試合は殿堂入りとしましょうか。今思い浮かぶのは「T1」が「MAD Lions」を相手に16分台で終わらせたゲームですかね。
実はT1は「MSI 2019」で「Invictus Gaming」相手に15分台で敗れた過去があるんですが、今度は高速で試合を終わらせる側に回ったというストーリーも含めて強烈に印象に残っています。
――プロシーンでは20分以内で終わることすら珍しいですから、本当に稀なシーンですね。
Recruit:あとは先程のDRX対EDGの試合で、Deft選手のエズリアルがネクサスを折りかけたタイミングでインヒビターが上がったシーンも、(Jaegerと)ふたりで叫んだのをよく覚えていますね。「Worlds 2022」は、優勝したDRXの試合はどれも衝撃的すぎました。
あとは自分が解説した試合ではないですが、Aria選手がFaker選手からソロキルしたシーンは、インパクトが強すぎてまだ頭に光景が残ってますね。
――今後もそんな印象に残るシーンに出会えることが楽しみです。そして、今後Recruitさんが「やってみたいこと」があれば教えてください。
Recruit:そうですね……最初の頃は「いったんJaegerに有名になってもらおう」でやって来たんですが、最近は俺単体の良さも押し出そうと、ちょっとずつ自我や個性を出すようにしています。実況解説の中ではもちろん、普段の活動や見た目も含めて色々とトライしてみているので、まずはそれが1つですね。

じゃあそれをどこへ行きつかせたいかと言えば、結局「おもろいこと」をしたいんですよ。実況解説だけでなくエンターテイメント的にもそうで、過去にもプロ選手と一緒に「『LoL』に関するお題で正解を決めよう」みたいな動画企画もやりました。その時はちゃんと作りすぎて継続ができなかったんですが、なんとか続けられる範囲のクオリティを担保して「おもろいこと」をやっていけたらなぁ~~とは思っています。
界隈を盛り上げる企画もそうですし、自分個人を見てくれている人がいるなら何か面白いことを提供したいと思っていますので、『LoL』に限らず「おもろそうだったらなんでもやります」が、今後のやりたいことですかね。
――色んな「おもろい」場面で活躍するRecruitさんに期待しています。今回はありがとうございました。
Recruit:かなり喋っちゃいました(笑)。ありがとうございました!
<取材・執筆:ハル飯田/編集・撮影:松田和真>