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「勝つのが当然という雰囲気がつらかった」たぬき忍者 × Qoo ×mittiii が語る「ST」の本当の強さ―王座を掴んだその裏側、選手たちの頑張りを語る【League The k4sen】

「Sorcery Tiara(ST)」のたぬき忍者さん、Qooさん、mittiiiさんにインタビューを敢行。連勝の裏にあった努力やNEXTを教えることの楽しさや苦労など、様々なことを語っていただきました。

オクドス熊田

オクドス熊田

6月より始まった『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』のリーグ「League The k4sen(LTK)」。その決勝トーナメントである「LTK Season: Spirit Blossom Beyond Playoffs」が、2025年8月26日(火)、27日(水)に幕張メッセにて開催されました。

FISTBUMPでは、激闘の末、見事優勝を飾った「Sorcery Tiara(ST)」のたぬき忍者さん、Qooさん、mittiiiさんにインタビューを敢行。連勝の裏にあった努力やNEXTを教えることの楽しさや苦労など、様々なことを語っていただきました。




長所を磨き上げて手にした“試合中の修正力”

――まずコーチ陣には、この3ヵ月を振り返って、チームが最も成長したと感じる点をお聞きしたいです。

たぬき忍者:これはチームが最初から持っていた長所ではあるのですが……やっぱり、“試合中の修正力”ですかね。チーム内では、ずっと「今回はあれをやったから次はこうやって戦おう」みたいな、どう戦うかの話し合いをしてるんですよ。そのおかげで、シーズンの後半には序盤負けてても後半に盛り返すことが多くて。そこがチームのすごくいい部分だし、試合をくり返すたびに鍛えられていった、成長したところでもあります。

――チームの持つ強みがどんどん磨かれていったと。Qooコーチはどうでしょうか。

Qoo:トナカイトさんのコールですね。最初は何もわからないまま、まったく喋れなかったんですけど、リーグ戦の終盤では自分から「こういうことをしよう」、「敵が動いてこないからあれをしないか」という言葉がどんどん出るようになっていて。これは明確に成長した部分だと思います。

――おふたりともコールや修正力など、試合中の動きをすごく重視されているんですね。もっとチャンピオンプールなどの話が出てくるかなとも。

Qoo:もちろんそういった部分も大事なんですが、『LoL』ってなによりも基礎が大事なんです。試合中の場面に応じた細かい対応力は、チャンピオンの習熟度というよりは基礎の実力が出る箇所かなと。……これは実体験ですが、基礎ができなかったり、身につくのが遅かったりすると、最高レートまで上げるのは相当苦労します。

だからこそ、この期間でできるのは「やべえな」っていうのが正直な感想です(笑)。なんでこんな成長が早いのかわかんないですよね。

たぬき忍者:ね……なんでこんな早くできるのか。

Qoo:俺らめっちゃ牛歩だったのに。

――では、mittiiiさんからは、選手として成長したポイントなどをお聞きしてもよろしいですか?

mittiii:成長って言われると難しいんですけど……ひとつ挙げるならマクロでしょうか。最初は戦術的な動きを考えるのって、脳のリソースをすごく持っていかれてたんですよね。でもそれが試合数を重ねるごとに慣れてきて、短い時間でも正解の動きができるようになっていったんです。そのおかげでレーニングも強気でできるようになりました。

……あと、ソロランクも頑張ってるんですけど、レートはめっちゃ落ちました。

一同:(笑)

――ソロランクはまた別もの、ということですね。

mittiii:本当に違うと思います。「LTK」のCOREにいるTOPの中ではいちばんレートが低いんで、「嫌だな」と思って頑張ったんですが……思うように上がらず苦労してます。

――ちなみにLTKの練習を通して、『LoL』が自分の中に染み込んでくるような感覚はありましたか?

mittiii:そうですね。毎回フィードバックはもらっていたので、それがどんどん身についていったって感じです。

――頭に残ってるフィードバックはあったりしますか?

mittiii:「これ!」っていうのはないですが、どのチャンピオンを使っていても、どの対面が来ても動きが違うので、そういった状況によって変動のある部分をたくさん教えてもらいました。「このチャンピオンを使っているときはこう動く」みたいな、マクロに必要なパーツが大量にあって、それで自分の中にある知識を埋めていったような印象ですね。

――たぬき忍者さんとしても、そういう知識を埋めるような意図をもってコーチングを進めていったのでしょうか。

たぬき忍者:「この場面はこうしないと損失がでかいな」とか、ゲームを見ながら気づいたところを教えていった感じですね。僕ももともとチームゲームの経験があるわけではないので。自分が勉強しながら気づいたところを伝えていったと言いますか。NEXTにはコーチ経験の豊富なQooさんもいたので、自分の考えが正しいのか聞きにいったりもしていました。

――Qooさんがコーチのコーチ、のような。

たぬき忍者:といっても「コーチとしてどうするべきか」みたいな話を聞いたわけじゃなくて、場面場面で「これであってるんだろうか」みたいなことをいっぱい聞きました。

Qoo:「このピースをはめたいな。でもこれで形はあってるのかな」みたいな。そういう相談が多かったです。ほぼ正解は導けてるんだけど、少しだけ背中を押してほしいといいますか。

たぬき忍者:自分が考えただけなので、「あってるのかなぁ」って。

「勝つのが当然」の重圧と、ゼロから教えることの難しさ

――「LTK」は長期のリーグでしたが、期間中に楽しかったことや苦しかったことなど、思い出深い出来事はありますか?

たぬき忍者:楽しかったことで言えば……面白いように勝っていくんですよね、COREのチームが。

――快進撃でした。

たぬき忍者:正直コーチって、試合前に全部を伝えられるわけじゃないじゃないですか。でも元々のセンスで、試合中に問題が発生してもどうにか対処してきっちり勝っていくんですよ。「すごいな君ら」と。ちょっと爽快で楽しかったですね。

……で、つらかったことで言うなら、そうやって勝ちすぎたせいで、「勝つのが当然みたいな雰囲気」になっちゃったことですね。でもこれって当然のことじゃなくて、チーム全体が頑張ってるからなので……「当然とは思ってほしくないな」とか考えてしまって。

――プレイオフのステージ上でもコメントされていましたね。

たぬき忍者:チームメンバー全員が、すごくソロランクを回してるんですよ。多分試合数で言うなら、「LTK」全体を見ても上位になると思うんです。それぐらい個人個人が頑張ったうえでの結果なので、ちゃんと努力していることを伝えたかったんですよね。

――ありがとうございます。Qooさんは印象に残っていることはありますか?

Qoo:吸収がとにかく早くて、教えていて楽しかったですね。“できない”が“できる”になるのって成長の幅がすごいんですよ。プロは「できるけど、もうちょっとやらなきゃ」みたいな部分をコツコツ積み重ねていくので、それと比べると成長度合いが全然違っていて……。自分ではもう絶対に起こりえないことなので、すごく見ていて楽しかったですし、面白かったです。

でも正直、悔しいこともすっごい多くて(笑)

Qoo:STのNEXTは、大会が始まったときのレートがすごく低かったんですよ。それこそトナカイトさんはアイアンで、シルバーやゴールドを対面しなきゃいけない状況でしたから。そういうレートの差をひっくり返すだけのことを教えてあげなきゃいけないっていうのはけっこう苦しかったです。

それと、教え方もかなり工夫が必要でした。高レートの人に教えるやり方じゃ伝わらず、「わからないよ」って言われてしまうので、ニュアンスを変えなきゃいけない。反応を見て、それもまた違うとなればまた変えて……これは苦しいというより難しいって感じですかね。最初のころなんかは特に「これでも伝わらないのか」というつらさがありました。

――これまで経験されてきたやり方とは別物というか。

Qoo:そうですね。これまでに得た知識を噛み砕いて砕いて砕いて……「ここまで砕けば大丈夫でしょ」って思ってもNEXTのメンバーにはまだまだ足りない、みたいな。

――NEXTならではの喜びもあれば、苦労もあったと……。選手視点で、mittiiiさんはどうでしょうか?

mittiii:ゲームをやっててつらいってことがないので……『LoL』が本当に好きで、楽しいことしかなかったですね。スクリムも楽しみでしたし、上手くなっていくのも楽しかったです。僕の考えで言えば、『LoL』を5人でできるだけでも楽しいのに、それがチームとしての活動で、勝てば喜んでくれる人がいる、みたいな。楽しい要素しかなかったですね。

……あ、でも1個だけありました。

――なんでしょう?

mittiii:ソロランクが……面白くなくなっちゃって。

一同:(笑)

3ヵ月間、努力してきたからこその感動がある

――「LTK」は、競技シーンに近い長期の企画です。どういったところに本企画の魅力があると感じましたか?

mittiii:ほかの大会みたいに即席ではなく、同じチームとして活動する期間が長い分、よりチームっぽさがありますよね。だからこそ生まれる感動はあるんじゃないかと思います。

たぬき忍者:長期間見ていて、その集大成で思わず泣いてしまったというのはありますね。

Qoo:みんな似たような感じだとは思うんですけど、長く見ていたからこそウルっとくるものはあります。3ヵ月っていったら相当な期間だと思うので、最初にできないと思われていたことが急にできるようになったときとか、そういうことがあると涙腺にきちゃいますね。

――最後に、これからも続いていくLTKに期待することや希望などはありますか?

たぬき忍者:教えるのも楽しいんですけど、自分でプレイするほうが楽しいタイプではあるので……機会があれば選手として出てみたいです。

というかちょっとおかしな話ではあるんですよ! チームゲーム経験のない人間がチームゲーム経験者に教えるみたいな感じになってるので……! だからこそ「俺もそっちでやりたいな」って思いました。

Qoo:僕は教えることが本業という感じでずっとやってきているので、関わっていくならコーチ側になるのかなと。NEXT、COREのどちらでも教えてあげられるとは思うんですけど……やっぱり教える側としては、成長の幅が大きいと感動もあるし手ごたえもあるんですよね。

COREの人たちはいろいろなことを知っているので、コーチングしながらも一緒に歩んでいく感じなんです。NEXTは自分が先頭に立って、ついてきてもらうような感じ。その“ついてきてもらう感覚”って、プロだとなかなか味わえないものではあるので、やっぱり面白いんです。なので次関わるにしても、やっぱりNEXTがいいなって思いますね。

mittiii:自分は関わるとしたらさすがに選手しかないと思うので、その中で言えば……もっといろいろなレーンをやってみたいですね。僕はADCメインで、今回TOPレーンを戦略的に立ち回ることの楽しさとか、面白さを知ることができたので、次はまた別のことをやってみたいです。そうすればもっと『LoL』が面白くなるだろうなと、そう思います。

――ありがとうございました!

<執筆:オクドス熊田/編集・撮影:松田和真/取材協力:えごいすと>

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