遂にベールを脱いだコンソール版『VALORANT(ヴァロラント)』。“PC版『VALORANT』と同じ感覚”を目指して開発された本作ですが、それを実現するためには様々な課題をクリアする必要がありました。
一体どのような課題と向き合い、今回の発表までたどり着けたのか……その裏話について、コンソール版『VALORANT』の開発を率いたエグゼクティブ・プロデューサー「Andy Ho」氏へのインタビューを通してお届けしましょう。
◆重視したのは“PC版同様の自然な操作感”
――コンソール向けに開発するにあたって、その過程で苦労した点や面白かった話を教えてください。
Andy:実に多くのエピソードがありますが、Riot Games全体としては、MicrosoftやSIEといったファーストパーティとの関係構築、インフラストラクチャーの開発など、コンソール版開発のために多くのことを行ってきました。 『VALORANT』開発チームとしては、ゲームの操作感……特にコントローラーでの操作感をPC版のように再現することに苦労しましたね。
コンソール版でもPC版同様の自然な操作感を実現するには、カメラ感度、エイムの仕組み、コントローラー入力、特にデッドゾーンやプレイヤーの好みに合わせた要素を考慮する必要がありました。 広範囲のスキャンと精密なエイムの両方のニーズに応える機能も導入しました。
――確かにコンソール版をプレイしてみて、PC版『VALORANT』のように違和感なくプレイできました。
Andy:そうですか!そう感じてもらえたのは素晴らしいですね。
――最も苦労されたというコントローラー操作ですが、具体的にどのようなことに注意しながら調整を行ったのでしょうか?
Andy:プレイヤーがどのようにカメラを操作するかという点は、コンソール版開発における根本的な課題の一つでした。90度の角度を確認したり、アビリティを使用したり、フラッシュから目を背けたりと、ゲームをプレイしていると広範囲に素早く視点移動しなければならない場面があります。その一方で、一瞬でエイムを調整してヘッドショットを決めるなど、ピクセル単位の精密操作を求められる場面もあります。
マウスの場合は、大きなマウスパッドさえあれば大胆な操作と精密な操作の両立が可能です。 しかし、コントローラーの場合はスティックの移動距離と速度だけが操作の指標となります。 デッドゾーンやコントローラーの個体差、プレイヤーの好みなど、たくさんの要素を考慮する必要がありました。 そこで、広範囲のスキャンと精密なエイムの両方に対応できるように導入したのが“フォーカスモード”です。 また、プレイヤーによって好みが異なるため様々なエイム曲線を設定できるようにしています。
――PC版では設定、感度などをユーザーそれぞれが好みや使用デバイスに合わせて調整します。対して、コンソール版ではプレイヤーが同じコントローラーを使用するので、そういう部分の調整はPC版よりもスムーズだったりするのでしょうか?
Andy:スムーズかどうかは一概には言えません。おっしゃるようにPC版ではキーボードの配置は人それぞれですが、最終的には全てのキーを自由に割り当てることができます。 対してコントローラーはプレイヤーの手の中でどのように感じるかを考えなければなりません。 デフォルト設定を綿密に検討する一方で、プレイヤーそれぞれの好みに合わせてカスタマイズできる余地も残す必要もあります。
Andy:つまり入力項目が少ないが故に、ボタン配置一つとっても慎重に検討する必要があるんです。機種も人によって異なりますし、コントローラーの方がやりやすいということは無いと思います。
◆最初からPCとCSのクロスプレイは想定していなかった
――アカウント共有は可能であるものの、PC版とのクロスプレイはできないと伺っています。最初からそのような方針だったのでしょうか?
Andy:はい、それはかなり早い段階で決まりました。 もちろん、コンソール機であるXboxとPlayStationのプレイヤー同士は対戦できますが、どちらのプラットフォームでも最高のゲーム体験を提供したいと考えています。 そのため、常に同じ土俵にいるプレイヤーとの対戦にこだわりたいのです。
――クロスプレイ可能なXboxとPSのプレイヤーは、同じボイスチャットで会話できるのでしょうか?
Andy:その通りです。ゲーム中は、マッチに参加している全員がボイスチャットを共有できます。
――コンソール版のアップデートはPC版と今後同じペースで、 新エピソードも同時に始まるのでしょうか?
Andy:アップデートはPC版と同じタイミングで行っていきたいと考えています。
――なるほど。 では、コンソール版限定のエージェントやコンテンツなどの実装は想定していないと?
Andy:ええ、ありません。 どのプラットフォームでプレイしているプレイヤーにも、“同じ『VALORANT』をプレイしている”と感じてほしいからです。
――また、コンソール版は独自のランクシステムが設けられますが、PCとCS両方でレディアントへ到達するようなプレイヤーは現れると思いますか?
Andy:もちろんです。 社内にはすでに高いレベルに到達している元プロプレイヤー達もいます。ゲームセンスや『VALORANT』の熟練度はプラットフォームを超えて引き継がれます。 元プロの彼らにとって必要なのはコントローラーでどのように操作するかを理解するだけのようです。
――コンソール版が登場したことで『VALORANT』全体の開発ペースへの影響はありますか?
Andy:全体的な開発ペースに悪影響が及ぶようなことはありません。 開発チームを拡大し、コンソール版の開発と並行対応できる体制を整えているので維持できると思います。 実際に両方のプラットフォームで同時にリリースしても、それぞれ最高のゲーム体験を提供できるように多くの開発作業を行ってきました。
◆気になるコンバーター対策、CS限定の施策は?
――次に「Riot Vanguard*」について訊かせてください。デモプレイ前のプレゼンテーションでは、コンソール向けにソフトウェアを調整したとおっしゃっていましたが、やはりコンバーター対策でしょうか?
Andy:おっしゃる通りで、コンソール版でもチート対策は万全です。 詳細についてはここではお話しできませんが、チート行為を最小限に抑え、マウスやキーボードの不正使用を防止することを目的としています。
*Riot Gamesが独自にチューンを施したゲームセキュリティソフト。Riot Gamesが手掛けるオンラインタイトルでは、チート使用などの不正ユーザーをこちらのソフトウェアで検知する。
――eスポーツにまつわる施策も非常に気になります。 将来的に、コンソール版限定のイベントを開催する予定はありますか?
Andy:現時点では、eスポーツに関する具体的な計画はありません。 まずはコミュニティイベントから始めて、その反応を見ていきたいと考えています。 一方で、コンソール版を中心にプレイするプレイヤーにも、PC版と同じようにVALORANT Champions Tourを観戦し、それらで活躍しているプロゲーマー達と同じゲームをプレイしていることを感じてほしいと思っており、そのためにゲーム内容を可能な限りPC版に近づける必要があります。
◆任天堂次世代機への対応は?
――日本ではコンソールタイトルの人気が非常に高いので、PC版よりもコンソール版の方が人気が出る可能性もゼロではなさそうですよね……!
Andy:その可能性は十分にあると思います。 PC版『VALORANT』が日本で好評を博していることを私たちは非常に嬉しく思っているので、 コンソール版がどのように受け入れられるか楽しみにしています。
日本はコンソールゲームが盛んな国です。 昨年、VCT Masters Tokyoで日本を訪れましたが、東京は世界で最も好きな都市の一つです。 もしコンソール版が人気になれば積極的に日本をサポートしていきたいですし、そうなることを期待しています。
――日本で人気を博しているコンソール機として、Switchへの対応についてはいかがでしょうか?先日に任天堂が次世代機の告知を発表したばかりですが……これを聞くのは早すぎましたかね?(笑)
Andy:そうですね。でも、Switchの次世代機は気になりますよね(笑)。現行のSwitch向けにリリースする予定はありませんが、将来的には検討する可能性はあります。
――6月14日から始まるリミテッドベータでは、どのようなデータ取得を重視していますか?
Andy:ゲームが正常に動作することを確認するためのあらゆるデータですね。 パフォーマンスが良好であることを確認する必要があります。もちろんプレイヤーからのフィードバックも重要です。ゲームの操作感、ゲームのあらゆる要素に対する感想を収集するほか、『VALORANT』らしさを感じてもらっているかという点もチェックしますね。
新しいゲームをリリースする際には、予期せぬ問題が発生することが往々にしてあります。クラッシュやラグを予防しながら、パフォーマンスが極端に低下しないようにプレイヤーからのフィードバックを参考にしてゲームを改善しなければなりません。
――最後に、コンソール版『VALORANT』を待ち望んでいる日本のファンにメッセージをお願いします。
Andy:日頃から『VALORANT』をプレイしてくれている日本のプレイヤーの皆さん、本当にありがとうございます。 そしてこれから『VALORANT』を始める皆さんを心より歓迎します。
私たちは日本のコンソールゲーム市場に『VALORANT』を投入できることに非常に興奮しています。 近いうちに皆さんとお会いできるのを楽しみにしていますので、まずはリミテッドベータへの参加をお待ちしています。
コンソール版『VALORANT』リミテッドベータテスト
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